ボンジュール、アン

アメリカ人にはこれが典型的なフランス人なのかな?

監督のエレノア・コッポラさんは、その名前のとおりフランシス・フォード・コッポラさんの妻、そしてソフィア・コッポラさんのお母さんになります。

映画界でのという意味ではその存在を知りませんでしたが、「地獄の黙示録」の制作現場の裏側を撮影したドキュメンタリー「ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録」でエミー賞を受賞しているとのことです。

で、現在80歳、自らの体験をもとにした脚本を書き、監督を探していたところ、夫から自分で撮ったらと勧められ、劇映画デビューとなったとのことです。

監督:エレノア・コッポラ

アンは、映画プロデューサーの夫マイケルを支え、自分のことはあとまわしにして生きてきた。そんな中、夫の仕事仲間のフランス人ジャックと、カンヌからパリへと車で向かうことになる。7時間で到着するはずが、ジャックに魅力的なレストランや名所旧跡に案内され小旅行へと変わっていく。美味しい食事にワイン、美しい景色、ジャックとの会話を味わううちにアンが見つけたこの先の人生とは?(公式サイト

率直に言えば、映画としてどうこうというものではありませんが、アメリカ人にはフランス人はこう見えているのかとか、アメリカ人はこういうコンプレックスを持っているのかという意味では面白い映画でした。

アン(ダイアン・レイン)とマイケル(アレック・ボールドウィン)の夫婦がカンヌへ来ています。マイケルは映画のプロデューサーで映画祭のために来ているようです。アンは服飾関係の仕事をしているようで、テキスタイルに詳しく、また趣味で写真を撮っていることがかなり映画的にフィーチャーされていました。カンヌへ来ているのは夫のサポートなのか、カンヌで休暇を過ごす予定だったのか、映画の中でははっきりしませんでした。

いずれにしても、マイケルは仕事でブダペストへ飛ばなくてはならなくなります。プライベートジェットで一緒に飛ぶはずがアンの調子が悪くマイケルはひとりで飛び立ち、アンは夫の友人のフランス人ジャック(アルノー・ヴィアール)とともに車でパリに向かうことになります。

で、映画は、カンヌからパリまでのアンとジャックのロードムービーとなります。

オチとしても何も起きません。

夫マイケルは、電話で「フランス人には気をつけろ」とか「フランス人にとっては相手が結婚しているいないは関係ない(みたいな台詞)」とやや不安(なのでしょう)げに語ります。

ただ、アンとマイケルとの会話の中では、夫マイケルが女優志望の女性たちとあれやこれやあったようなことも語られ、食事中、アンが怒って席を立つシーンもあります。

ジャックは、とにかくサービス精神旺盛で、アメリカ人はこうしたキャラがフランス人の典型と考えているのかとびっくりするくらい、相手のことを考えているのかどうか疑わしいくらいの強引さで星付きレストランでのディナーに誘ったり、アンが望んでもいないのに途中ホテルをとって一泊したり、ガソリンスタンドでいきなり消えて車いっぱいのバラの花を買いにいったりと、正直、こんなやつ嫌だなと思うくらいの、あるいは嫌味でも効かせているのか、はたまたフランスへのコンプレックスなのかと思うくらいの人物に描かれています。

アンは、そうしたことを警戒しつつも、ただ拒絶することが大人としてどうなのかと考えてでもいるのか、あるいは公式サイトなどに書かれているように自分の人生に飽きているのか、そのあたりは映画からは伝わってきませんが、とにかく、ジャックの言うがままに行動を共にしていきます。

で、あれやこれや、まるでご当地映画のような観光地巡りの道中があって、やっとパリに到着、ジャックは、それがフランス人の特質なのか(笑)真剣にアンに愛情を感じるようになっており、一方のアンもジャックに惹かれるところがあるのだけれども決心がつかず最後の一線は越えられなかったという物語です。

多分、エレノア・コッポラ監督、素直にそのままに撮った映画だと思います。

ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録 [Blu-ray]

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『地獄の黙示録』撮影全記録 (小学館文庫)

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