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ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣

セルゲイ本人には映画では伝わってこない何かがありそう

2017/07/25

セルゲイ・ポルーニンが突然ロイヤルバレエ団を辞めると言い出したというニュースは記憶しています。

それ以前からあれやこれや問題児と言われていたとも報じられていましたので、その時は、ふ~ん程度にしか関心はなかったのですが、下の引用の写真のダンスが予告編で流れており、へー、すごいね、もったいないなあと思ったわけではあります。

で、映画は…

監督:スティーブン・カンター

ウクライナ出身、19歳で史上最年少の英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルとなったセルゲイ・ポルーニンは、その2年後、人気のピークで電撃退団。そのニュースは国内メディアのみならず、世界中に報道された。<ヌレエフの再来>と謳われる類い稀なる才能と、それを持て余しさまよう心。本人や家族、関係者のインタビューから見えてくる彼の本当の姿とは…?(公式サイト)

映画は、幼い頃からのプライベートフィルムやロイヤルバレエ団での舞台映像、それに本人、両親、そして友人たちのインタビューで構成され、セルゲイ・ポルーニンの半生記が語られます。クライマックスには、上にも書きました「Take Me to Church」の MV が使われています。

半生記といっても、彼、まだ27歳なんですけどね。

まあ、19歳でロイヤルバレエ団のプリンシパルに選ばれ、そのポジションを守っていかなければならないというのも相当なプレッシャーだとは思いますが、ただ、自ら望んだことですし、それを達成したら当然そういうものですからね。

一旦横綱になればもう大関に下がれないのと同じ(か?)で、プリンシパルがソリストやコールドをやる訳にはいかないでしょうから、モチベーションが下がったり、迷いが生まれたら辞めるしかないでしょう。

調べてみましたら、熊川哲也さんだって退団まで5年位ですね。

と、かなり突き放した書き方になっているのは、映画自体、セルゲイ・ポルーニンを知らない人のための入門編のような内容になっているからだと思います。

全体的に突っ込みが浅すぎてセルゲイ・ポルーニンがよく見えてこないのです。

子どもの頃は家庭が貧しかったとか、母親が教育ママ的であったとか、セルゲイのために父親と祖母が外国へ出稼ぎにいっていたとか、さほど同情を誘うように描かれているわけではありませんが、他に描かれている要素がありませんので、あたかもそれが問題児セルゲイの誘因となっているように感じられてしまいます。それでは映画だけではなく描かれている本人自体も薄っぺらくなってしまいます。

突然の退団にもまったく迫れていません。

タトゥやクスリの話もちらっと出てくるだけで、そのまま放りっぱなしです。

これでは、セルゲイ・ポルーニンが単にわがままだっただけにしか見えません。

もちろんこれは映画からから感じられる人物像の話ですから勘違いのないように。映画がダメだと言っているだけです。

途中面白い映像がありました。退団後に、ロシアのテレビのオーディション番組なのか勝ち抜き番組なのかは分かりませんが、あのスーザン・ボイルさんが注目された番組のようなド派手な舞台に審査員というスタイルの番組に登場し、審査員が全員10点とか言っていました。

ちょっと目が点になったんですが、あれ、もう少しどういうことか知りたかったですね。本人が望んだことなのか、テレビ局の仕掛けなのかとか、まあそもそも、あれ何なの?という疑問なんですが…(笑)。

クライマックスに使われている「Take Me to Church」の MV は、2015年に発表されたもので、この映画とは別のデビッド・ラシャペル監督のものなんですね。

MV のメイキングのようなカットもありましたが、MV 制作の段階からこの映画を撮っていたのか、MV のメイキングがあってそれを使ったのかどうなんでしょう?

そもそも、この MV がどういう経緯で制作されたのかも知りたいですね。

そう言えば、本人が友人に振り付けを依頼する海辺のシーンもありました。ということは、その頃からこの映画の撮影を始めていたということ?か、後撮りで演出上入れたかですかね?

ということで、映画はテレビ番組のような内容でした。

そうしたことはおいておいても、セルゲイ・ポルーニンさんってもう少し知りたくなる人物です。素人目に見てもダンサーとしての能力はすごいわけですし、実はバレエの世界にとらわれずいろんなことを自由にやってみたい人のようですし、こうした MV だけではなく、コンテンポラリーで自ら作品を出してほしいと思います。

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