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ビューティフル・ボーイ

(ネタバレ)出口の見えない、薬物依存の息子とその父の物語

2019/04/15

監督が「オーバー・ザ・ブルースカイ」のフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲンさんということで、まったく内容も知らず、そういえば予告編では親子喧嘩していたなあといった程度の情報で見に行きましたら、えー、こんな話だったの…という映画でした。

ビューティフル・ボーイ

ビューティフル・ボーイ / 監督:フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン

薬物依存の息子ニック(ティモシー・シャラメ)とその父親デヴィッド(スティーヴ・カレル)の話です。最初から最後まで、一時は薬を断とうとしますが、またすぐに手を出すという繰り返しで、まったく出口の見えない映画です。

父と息子、それぞれが書いた手記をベースにしていますので実話ものということです。

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この2冊ですね。父親がデヴィッド・シェフで、直訳すれば『ビューティフル・ボーイ:息子の薬物依存をめぐる父の旅』、息子のほうがニック・シェフ、タイトルはなんと訳せばいいのか適切な言葉が見つかりませんが、「メタンフェタミン」はいわゆる覚醒剤のことらしいです。

出口が見えないと書きましたのは、実際映画では、ニックに薬物を断てそうな気配もなく終わっていたからなんですが、手記があるということは現実には依存症から脱したということでしょう。

父親のデヴィッドさん、公式サイトに「ジョン・レノンの生前最後のロングインタビューを行ったのは、音楽ライターだったデヴィッドでした」とありましたのでググってみましたら、インタビューが書籍化されおり日本語訳もありました。 

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映画の中でもフリーランスのライター(ジャーナリスト?)と言っていましたし、在宅で仕事をしていましたし、ラスト近くのミーティングらしきシーンの壁に「Rolling Stone」のロゴがありました。

手記や映画のタイトルである「ビューティフル・ボーイ」はジョン・レノンが息子のショーン・レノンのことを歌った曲で、映画の中はデヴィッドが幼少のニックに子守唄として歌っていました。

といった背景の映画なんですが、とにかく、ニックが薬物に手を出す、デヴィッドがやめさせようと手を貸す、しかし再び手を出すの繰り返しですので、共感するとか、感情移入するとかできるような映画ではありません。むしろ、本人の意志でやっているんだから放っておいたらなどと冷たく突き放したくなるような映画です。

最後にスーパーで、アメリカでは◯歳(何歳だったかなあ?)以下の死亡率1位は薬物によるものと出ていましたが、そうした背景がある社会ではまた違った味方ができると思いますが、何であれ薬物のひとつも見たことのない者には、そもそもの薬物に依存する過程が描かれない映画は実感として理解しようがありません。

映画のつくりとしては、時間軸がかなりわかりにくくなっています。もちろんニックが幼い頃のシーンは明らかにわかりますが、ニックが大学に入る入らないという18、19歳の現在の時間軸は、2つか3つかの時間の流れがかなり交錯するように編集されていたように思います。

見ているときは、あれ? とか思いながら見ていましたが、考えてみれば、結局ニックにしてもデヴィッドにしても、行ったり来たりの同じ繰り返しということの表現なのかもしれません。

ちなみにこちらが実際のデヴィッド、ニック父子です。


BEAUTIFUL BOY – David and Nic Sheff Interview

この映画であらためて思い出したフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン監督の「オーバー・ザ・ブルースカイ」、もう一度見たくなりました。考えてみれば、こちらの映画も、どちらかといいますと救いのない映画でした。

フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン監督の生涯のテーマは、一対一の個々が、それぞれに自分自身の葛藤を抱えつつ、果てしない、救いのない争いを繰り返す人間の性のようなものなのかもしれません。

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