フラッグ・デイ 父を想う日

ショーン・ペン父娘息子共演のファミリー映画

ショーン・ペン監督主演、そして実の娘のディラン・ペン主演、さらに息子のホッパー・ペン共演で、映画の中の関係もそのままというファミリー映画です。

フラッグ・デイ 父を想う日 / 監督:ショーン・ペン

でたらめな父親

原作があります。ジェニファー・ヴォーゲルさんというジャーナリストの『Flim-Flam Man: A True Family History』という2004年発売の自伝本です。flimflam は「でたらめ、ペテン」といった意味ですので、映画のような内容であれば『でたらめな男』である父親の回顧録の趣きということでしょう。

そのでたらめな父親ジョン・ヴォーゲルをショーン・ペンさんが演じ、実の娘であるディラン・ペンさんが娘のジェニファー・ヴォーゲルを演じています。

ジョン・ヴォーゲル、本当にでたらめな男です(笑)。

1992年、ジェニファーが警察に呼ばれ、父親が勾留中に逃亡したと告げられます。容疑は通貨偽造罪(偽札づくり)です。警官は 2,000 万ドルが偽造された(流通は500ドルだったか…)と言っていました。ジェニファーは偽札を手に取り「Beautiful…」とつぶやいています。

このシーンでは明らかにされませんが、このシーンの続きがラストシーンとなっており、父親は追跡され追い詰められて拳銃で自殺していました。

ファーストシーンとラストシーン以外は回想シーンです。ですのでカメラワークや編集でいろいろ手を加えています。画を荒くしたり、スクリーンサイズを変えたり、アルバム風にしたり、どアップを使ったりとかなりエキセントリックです。

かなり鬱陶しいのですが、まあ父親の人生がエキセントリックそのものですのでそれに合わせたのでしょう。

ショーン・ペンの人生観

正直なところ、映画はおもしろくありません。

実際、映画の中のジョン・ヴォーゲルは大ボラ吹きですし、借金をしていい顔はするものの妻やふたりの子どもを残して別の女と逃げ出しします。寂しくなれば娘を自分のもとに呼びます。強盗をして逮捕され10年あまり(かな?)の服役もします。挙げ句の果てに偽札づくりで逮捕され逃亡の果てに自殺します。

この人物、ジョン・ヴォーゲルをただ回想しても第三者的にはおもしろいわけがありません。それでも、娘ジェニファーにとってはいい父親だったという映画です。ですので内容もキャスティングもファミリー映画だということです。

ウィキペディアによれば、すでに2012年ごろにショーン・ペンさんはこの原作に興味を持ち、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督と会いたがっているとの記事が上がっています。

すでに10年前からなんらかの企画が立ち上がっていたということらしく、ショーン・ペンは父親をやりたかったということのようです。で、結局、監督が決まらず監督としてのオファーを受けて引き受けたと語っています。ショーン・ペンさん初めての監督兼出演の映画です。

で、思うのは(完全な想像です)、ショーン・ペンさんはこうした破滅的でエキセントリックな生き方になんらかのシンパシーを感じているのではないかという感じがします。

弱さを隠さない父親

この映画のジョン・ヴォーゲルに俗にいうカッコいいところはありません。特徴的なヘアスタイルからしてそうですが、情けなさが先にたつように造形されています。娘ジェニファーに対しても自分の弱さを隠そうとはしません。

子どもたちが幼い頃にはただただ楽しませようとする父親であり、まずくなればすぐに逃げ出します。成長したジェニファーと相対する表情は常に悲しげです。

おそらくショーン・ペンさんはこの映画でカッコよくない父親を見せたかったのでしょう。