シンプルな情熱

セックスシーンと愛、恋、情愛の忘我100分は耐えられるかアニー・エルノー著『シンプルな情熱 Passion Simple』の映画化です。

「フランス現代文学の頂点 アニー・エルノー原作、年下男性との愛と性の実体験を赤裸々に綴り衝撃を呼んだベストセラー小説(公式サイト)」とのことです。

シンプルな情熱
シンプルな情熱 / 監督:ダニエル・アービッド

映画よりも小説を読むべき

アニー・エルノーさん、知らない作家さんです。ウィキペディアによれば、現在80歳、この『シンプルな情熱』は1991年発表の小説です。

オートフィクション」の作家と言われており、ほとんど自伝的な小説とのことです。完全なる自伝ではないけれども、これに近いことがあったということでしょう。

で、何があったかと言いますと、あるフランス女性がロシア人男性と親しくなり離れがたくなったけれどもその男性には妻がいる上にロシアに帰ってしまい、しかし思いは募るばかりでその男性のことしか考えれられなくなり、いっとき日常生活まで破綻しますが、何ヶ月後かに再び男性が会いたいと言ってくるも、それを最後にそうした過去からきっぱりと決別するという話です。

およそ100分、セックスシーンと女性の忘我状態を見る映画です。

もし興味があるのならば映画を見るよりも小説を読むべきでしょう。これは想像することに面白さがある話であり、それを固定化された映像で見せられても、正直うんざりするだけです。

映画の出来云々まで気持ちがいきません。女性の気持ちもわかりますし、結末もわかりますので、早く終わってくださいと思いながら見るしかありません。

ネタバレあらすじとちょいツッコミ

あらすじもなにも、パリの大学で教鞭をとるエレーヌ(レティシア・ドッシュ)がロシア大使館に務めるアレクサンドル(セルゲイ・ポルーニン)を待ち焦がれる姿とやっと来てくれたと身体を重ねる姿が100分続く映画です。

この映画、エレーヌ以外の人物は実体があるようなないような存在感です。アレクサンドルでさえほとんどなにも語りませんし、ただセックスマシーンのように裸を見せ身体を動かしているだけです。

ほかにはエレーヌの友人がアレクサンドルはいずれロシアへ帰るのよとか、あれこれエレーヌに忠告するようなシーンがありますが映画的にはほとんど意味はありません。そんなこと、エレーヌの耳にはまったく入りません。そりゃそうでしょう、愛、恋、情愛とはそういうものです(笑)。

息子のポールは出演シーンは多いのですが、エレーヌは私の宝物と言いながら息子のことなどそっちのけでアレクサンドルしか目に入っていません。

これ、エレーヌを非難しているわけではありません。そのように映画が描かれているということです。

元夫の登場シーンが1シーンあります。アレクサンドルがロシアに帰り、アレクサンドル以外見えなくなっているエレーヌは息子のことなど目にも入らなくなっており、元夫が駆けつけて息子を連れていくというシーンです。

アレクサンドルが去った後に精神科医に相談するシーンがあります。映画の冒頭はこのシーンだったかもしれません。

これだけですね。後は、くどいようですがセックスシーンとエレーヌがアレクサンドルを待ち焦がれるだけの映画です。

そして最後、何ヶ月か後にアレクサンドルが連絡してきます。それを最後に、「彼は私と世界を結びつけてくれた(こんな感じ)」とモノローグで語り決別します。

ここを映画の表現としてもっと突っ込んでいればより高い次元にいけたんだろうと思います。

これが日本なら失楽園

映画の出来自体は特にどうということもなくうまくできています。

俳優も、エレーヌのレティシア・ドッシュさんはとても良かったです。エレーヌの気持ちがとても伝わってきます。何をしていてもアレクサンドルという状態はよく出ていました。「若い女」を見ている俳優さんです。

アレクサンドルのセルゲイ・ポルーニンさんは「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」を見ていますが、その映画は俳優という扱いではありませんでしたし、この映画でもセックスシーンしかありません。

「去年の9月から何もせず、ある男性を待ち続けた」

多分、小説の書き出しでしょう。冒頭のシーンや精神科医に語るシーンであるとか、2、3度使われています。その後に、映画も見たしスーパーにも行った、でも心は彼から離れなかった(適当につくった(笑))とこんな感じに続きます。

冷めた言い方をすれば男女の情愛とはこういうものです。ありふれた話です。小説はありふれた話でも傑作になり得ます。ただ、映画はそれをそのままやっても小説ほどの面白みは生まれない、そういう映画だと思います。

ちなみに、結末は文化の違いにより結果は大きく異なります。日本であれば「失楽園」か阿部定でしょう。

若い女(字幕版)

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  • レティシア・ドッシュ

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