ほの蒼き瞳

クリスチャン・ベール主演のミステリーだが、さすがにこれはひどい!

Netflix の劇場先行上映です。このパターンが多くなってきている印象ですが、これで定着していくんでしょうか。

クリスチャン・ベール主演のミステリーです。若き日のエドガー・アラン・ポーが登場します。ポーを演じているのはハリー・メリング、1本も見ていないのでわかりませんが、ハリー・ポッターに出ている俳優さんだそうです。

ほの蒼き瞳 / 監督:スコット・クーパー

主役は誰だ?

1830年、ニューヨーク州ウェストポイントの陸軍士官学校で士官候補生が心臓をくり抜かれて殺されます。猟奇的殺人ゆえにことが公になることを恐れた校長は引退した元刑事オーガスタス・ランドー(クリスチャン・ベール)に捜査を依頼します。

ランドーが捜査を始めますと、エドガー・アラン・ポー(ハリー・メリング)と名乗る士官候補生が「この事件には詩の匂いがする(違うな、こうじゃなかった…)」と言いながら近づいてきます。

ランドーはポーの協力を得ながら捜査を進めますがなかなか進みません。校長は怒ります。そして第二の事件が起きます。士官候補生が同じように心臓をくり抜かれて殺されます。

ランドーは無理やり解決してしまいます。めでたし、めでたし。

ですが、真犯人は別にいます。ポーが事件の真相を明かし、真犯人に迫ります。

という、どっちが主役? ランドー? ポー? という映画です。

原作ではどうなっているんでしょう? 原作はルイス・ベイヤードというアメリカの作家の2006年発売の『The pale blue eye』です。2010年に『陸軍士官学校の死』のタイトルで日本語訳が出ています。

なぜ『陸軍士官学校の死』なんてタイトルにしたんでしょうね。ミステリーならこの映画のほぼ直訳『ほの蒼き瞳』の方がそれらしいタイトルだと思いますが。

倍速視聴を許可します(笑)

映画はとにかく散漫ですし、ミステリーになっていませんし、映像は暗いですし、この映画なら結末さえ知っていればそれでいいと思います。

結末を知っても別に驚きもしませんが、つまり、エー、そうなの?! というほど映画がうまくつくられていないということですが、一応ミステリーをうたっていますので以下結末に触れていることをお知らせしておきます。

以下、ネタバレです

捜査の依頼を受けたランドーは、早速士官学校を訪れ、第一発見者の士官候補生から話を聞きます。候補生は、動物が罠にはまって苦しんでいる声かと思い駆けつけたら男が首をつっていたと言います。続いて、死体と対面し医師から検死報告を受けます。死体は胸が切り開かれ心臓がくり抜かれています。医師は専門的な知識がなくても可能だと言います。

この映画が散漫に感じられるひとつの理由として映画全体のロケーションがイメージしづらいということがあります。士官学校は雪の積もった森(林?)の中にあります。実際にそのようですのでそれはいいのですが、ランドーの住まいは近いのかとか、馬車や馬がまったく出てきませんので移動はどうしているのかとか、酒場で候補生やランドーが飲んでいるシーンがありますがどこにあるのかとか、離れた町にあるとしたらどうやって行くのかとか、ランドーが酒場の女性とベッドにいるシーンがありますがどこなのかとか、女性たちが雪の道を裾の広がった豪華なドレスを着て移動していましたが、それも暗い中のシーンもあったりしましたが家は近いのかとか、医師の邸宅のサロンの集い(みたいなもの)やディナーにはどうやって集ったのかとか、とにかくシーンそれぞれがひとつの映画のイメージにまとまっていないです。

話を進めます。すでに書きましたようにランドーにポーが近づいてきます。ただこれも映画的に明確なものがなく、たとえばランドーがポーの意見に感嘆するとかがあるわけでもなく、ただなんとなく協力者であるのかないのかわからないままに進みます。ポーの位置づけが明確になっていないということです。

捜査のキーとなることがひとつだけあります。死体が文字の書かれた紙の断片を握っていたのです。ランドーはポーにその解明を依頼します。流れからしますと、なぜ? と思います。自分でやればいいんじゃないのということです。

ポーが、これは女性がどこどこに来てねと被害者にあてたものだと解明します。これも、あれこれ語っていましたがなるほどと思えるようなことではありませんでした。ひょっとして字幕が悪い? かも知れません。

これ以降、捜査は進展しているのかいないのかはっきりしないまま終盤に突入します。

第2の殺人が起きます。同じように心臓がくり抜かれており、さらに去勢されているとかいないとかの字幕がありましたが、これはよくわかりません。

で、いきなり解決編です。犯人は医師の家族でした。なんだかよくわかりませんが、娘が癲癇発作のある疾患を持っており、それを鎮めるために母親と兄が娘とともに魔術的な行為をしていたということです。説明不能です。

書いていませんが、ポーはその娘にかなり真剣な好意を持っており、あれこれあって、最後はポーがその犠牲になりそうなところにランドーが乗り込んで、混乱の内にろうそくの火が燃え移り、娘も兄も母親も死んでしまいます。

で、一見落着となり、ラスト、大どんでん返しとなります。

真相はこうだ!

ポーがランドーを訪ねてその真相を解き明かします。

ポーは死体が握っていた紙の文字がランドーの筆跡の特徴と同じというところからランドーが犯人だと推理します。まあそうだとしてもそれだけじゃ無理だとは思いますので、おそらく原作では何かいろいろあるのでしょう。

とにかくこういうことです。ランドーには年頃の娘がいました。ランドーは映画の当初から娘が駆け落ちしてしまったと嘆いています。しかしそうではありませんでした。娘は士官学校の舞踏会に出掛け、その帰りに3人の士官候補生にレイプされ、崖から飛び降りて自殺してしまいます。ランドーはその士官候補生に復讐します。ひとり目を襲い、殴打して他の男の名前を聞き出し、ロープで木に吊り上げ自殺に見せかけます。

医師の家族の魔術的な行為も事実です。死体を見つけて心臓をくり抜いたということらしいです。でもつじつまはあいません。ランドーが男を殴打して木に吊り上げているときに第一発見者が駆けつけていますので、当然すぐに他の者も駆けつけるわけですから、その間にたまたま死体を見つけ心臓をくり抜くなどということは不可能です。

ふたつ目の殺人もランドーの仕業です。その心臓をくり抜いたのどうこうは曖昧になっていたと思います。さらに3人目は逃亡したということになっており、ランドーはもうその男を追う気力も体力もないと言っていました。

オイ、オイ…。