かしこい狗は吠えずに笑う/渡部亮平監督

映画としてはもっと整理すべきだとは思いますが、うまい台詞もたくさんあり、映画監督より脚本家として…

私好みの映画は撮ってくれそうもありませんが(笑)才能は感じられます。自主映画ですのでいろいろな眼が入らないこともあるのでしょう、まだまだ整理し切れていない感じがします。

前半はどこに向かうのかかなりつかみづらいのですが、後半は一気にサスペンスタッチとなり結構見られます。

前半のつかみづらさにはいくつが原因があるのですが、まず冒頭、導入となるいくつかのカットがポンポンポンと(いう印象で)提示されます。不細工さを強調された女性のアップ、犬が逃げてしまう(多分)子供の頃の映像、警官たち、他にもあったかも知れませんが、それらがメインストーリーの中にどう位置づけられるのか、なかなか整理されません。

女性のアップは、その後幾度か使われ、ラストでああそういうことねと分かるのですが、私は、そのカットに熊田美沙(mimpi*β)の語りがかぶっていることもあり、彼女の現在なのかなあとか考えながらも、何か違うなと結構イライラしていました(笑)。結局、その女性は美沙を接見する弁護士(見習い?)なのですが、最初や途中の女性のカットに接見室の仕切りの透明板はありましたか? もしあれば、およそ設定は想像はつくはずですので多分なかったのでしょう。もし、ラストのカットにのみ接見室の仕切りを入れているとしたら、これは「映画のうそ」とはちょっと違ってオチがばれないようにするためのごまかしでしかないですね。(見落としでしたらすみません)

それに、未成年犯罪に成人と同じような弁護士設定や裁判員裁判ってどういうことなんでしょう? 当然そうした裏は取っているでしょうから何かそうしたケースがあるのでしょう。

警官二人のシーンも幾度か挿入されるのですが、あれも何をしようとしているのかよく分かりませんでしたし、犬を逃がしたカットは、美沙のトラウマ?清瀬イズミ(岡村いずみ)のトラウマ?そもそもトラウマカットじゃなかったのかな? 必要だったんですかね?

全体的に、論理的な意味づけを求めすぎて作りが観念的になりすぎているように感じます。上に書いたこともそうですが、美沙がイズミの立場になったとする鏡を割るシーンやエンドロールの後のシーンは典型的です。オチも含め、そんなありきたりのことをしなくても、メインストーリーと俳優二人の存在感で映画はもつでしょう。

ということで、映画としてはもっと整理すべきだとは思いますが、うまい台詞もたくさんあり、映画監督より脚本家としての才能を感じた映画でした。

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