ネタはロスジェネ世代の男の恋愛妄想か? 見始めは(DVDです)、謎解き学園ものみたいな物語かなあと思った映画です。そんなジャンルはないとは思いますが…。階段島という島に閉じ込められた高校生たちの話です。ただ、島の人口は2,000人とか言っていましたので、マジな物語であれば大人たちも物語に参加してこなくてはいけないのですが、登場人物は高校生だけです。...
閉じた円環、つくりもの過ぎて多くは伝わってこない 2019年の東京国際映画祭で最優秀女優賞と観客賞を受賞しています。最優秀女優賞って誰が? と思いましたら、マリオン役のナディア・テレスキウィッツさんでした。主だった女性の俳優は3人ですが、特別目立っていたわけではありませんのでいろいろなにかあるのでしょう。サスペンスのジャンルかと思いますが、英題の「Only T...
アイダの苦しみを共有できるのなら世界は… 日本での公開は3作目になるヤスミラ・ジュバニッチ監督、2006年の「サラエボの花」はベルリン映画祭で金熊賞を受賞しています。1990年代始めのボスニア・ヘルツェゴビナ紛争下で起きた悲劇的な過去を乗り越えようとする母娘を描いていました。この映画「アイダよ、何処へ?」も同じくボスニア・ヘルツェゴビナ紛争下の話ですが、まさしくそ...
娘の死のせいか、色濃く漂う破滅欲求 「What is youth? A dream. What is love? The dream’s content.」キェルケゴールの言葉から始まります。直訳では「若者とは何ですか?夢。愛とは何ですか?夢の内容」となりますが、映画を見た印象からすれば、「若さとは何だ? 夢さ。愛とは何だ? 夢を見ていただけさ」といったニュアンス...
ラテン系ヒップホップのMV的ミュージカル映画 2008年にトニー賞の作品賞、楽曲賞、振付賞、編曲賞を受賞しているブロードウェイ・ミュージカルの映画化です。たまにはミュージカルでもと軽い気持ちで見に行きますと疲れるかもしれません(笑)。イン・ザ・ハイツ / 監督:ジョン・M・チュウ楽しめるのは音楽のみネタバレあらすじニューヨークの大停電ウスナ...
小川紗良監督への期待と小川未祐さんへの驚き 小川紗良監督、現在25歳、ウィキペディアで経歴を見る限り、どういう経緯でこの映画を撮ることになったんだろうと不思議でしたが、インタビュー記事を読みますと、自主制作の延長線のような感じで広がっていったようです。主演の小川未祐さんともう一度一緒に映画をつくりたいから始まり、最初は短編をイメージしていたけれども構想がふくらん...
俳優たちの本音のぶつかりあいがなく緊張感がない 昨年(2020年)末の「生きちゃった」から今年に入ってついひと月前の「茜色に焼かれる」、そしてこの「アジアの天使」と続けざまに石井裕也監督の映画を見ています。たまたま公開が重なったということなんでしょうが、映画の内容や出来からすると、何を撮り急いでいるんだろう、焦りでもあるのかしらと思ってしまいます。アジアの...
すべてにおいて過不足なく完璧! 横浜聡子監督、2016年の「俳優 亀岡拓次」以来です。長編ではその前が2008年の「ウルトラミラクルラブストーリー」ですから、なかなか撮りたいものの環境が整わないということなのか、もっと撮って欲しい監督のひとりです。で、「いとみち」、完璧でした。あらゆる点において過不足なく完璧でした。いとみち / 監督:横浜聡子駒井...
感傷的な内容をさらりと描いて好印象、ロベール・ゲディギャン監督 ロベール・ゲディギャン監督が「フランスのケン・ローチ」と言われているとの宣伝コピーがありましたので、疑り深い私は(笑)海外のサイトを調べてみました。すみません、確かにそうしたニュアンスで語られている批評がたくさんありました。海辺の家族たち / 監督:ロベール・ゲディギャンずいぶん演劇的...
子育ては母親の仕事か?あたかもそう言っているかのような… 椰月美智子さんという作家の同名の原作があります。知らない作家さんですが、児童文学でたくさん賞をとっているようです。ただ、この「明日の食卓」は母親の話ですので大人向けの作品です。下の画像にあるように菅野美穂さん、高畑充希さん、尾野真千子さんの三人が同じ「石橋ゆう」という名の10歳の息子を持つ母親を演じています...
石井裕也監督、覚醒す!と思いきや… 石井裕也監督、覚醒す!これまでの石井監督の印象は、映画としてうまくまとめる能力は高いけれども、今の時代や社会にあまり直接的なコミットメントをしない印象でしたが、この映画はちょっと違っていました。たまたまの1本なのか、なにかが変わっていく初めの1本なのか?茜色に焼かれる / 監督:石井裕也世の中は理不尽なことばか...
ベトナム人技能実習生のある現実、なのだが… 映画の宣伝コピーに「技能実習生として来日したベトナム人……」とあれば、ほとんどの人は、技能実習生が不法な労働時間や賃金未払いなど過酷な環境で働かされる実態に迫った映画だろうと予想します(しないかな?)。でも、ちょっと違っていました。おそらく藤元明緒監督にしてもそうした予想はわかってのことだと思われますので、それをどう捉え...
映画から10年の今、老犬はいまだ死なず…を願う 今年の2月に見た「羊飼いと風船」のペマ・ツェテン監督、2011年の作品です。その年の東京フィルメックスでグランプリを受賞しています。オールド・ドッグ / 監督:ペマ・ツェテンラストシーンで一気にたちのぼる物語性馬、バイク、走り抜けるトラック息子夫婦の不妊 テレビ放送、チベット人の警官、教師ネ...
実在の人物をセクシュアリティ(だけ)で描くことの功罪 ケイト・ウィンスレットさんが演じている「化石採集者で古生物学者(ウィキペディア)」のメアリー・アニングさんは実在の人物です。ということをこの映画で知りました。男女差別ゆえに歴史に埋もれている女性が再発見されることはいいことだと思います。が、こういう取り上げ方はどうなんだろうとは思います。アンモナイトの目...
わかりやすさを拒否することの意味 三澤拓哉監督ってどんな人かとウィキペディアを見ていましたら1987年生まれとあり、ん? そういえば2、3日前に見た「14歳の栞」のプロデューサーや監督も同年代だったなあと、まったく関係はないのですが妙に気になったわけです。理由は、かたや時代の先端をいく(目指す?)映像クリエイターたち、かたや時代に反旗を翻す(かのような)映画制作者...
女性たちは軽やかに階層社会を超える 「あのこは貴族」とのタイトルから漫画原作のラブコメだろうとスルーしていたのですが、ちらちらと目にする細切れ情報からどうも違うようだと思い直し見てみましたら、ふたりの俳優に現代的な存在感のあるいい映画でした。あのこは貴族 / 監督:岨手由貴子女性たちは軽やかに階層社会を超える想像力を刺激するネタバレあらすじとちょ...
アイドルオタクの真髄を見たかったのに… 松坂桃李主演、今泉力哉監督の青春物語とありましたので見てみるかと、ただハロプロというものも知りませんでしたので(笑)ちょっとだけ調べて、ああ、モー娘。ねなどと軽い気持ちで見に行きましたら…こんな話だったのね。あの頃。 / 監督:今泉力哉アイドルオタクの話でした。あまり弾けない...
幻ではないアイヌを知り、アイヌを知るきっかけにする このところ俳優で持っている映画ばかり見ている気がしています(笑)。この映画ではカントを演じている下倉幹人くん、その澄んだ眼には差別や同化といった対立視点ではない今生きているアイヌの苦悩が反映されています。もちろん幹人くんは俳優ではありませんし、その他ほとんどの出演者がアイヌコミュニティの人々の映画です。ただ...
ホロコーストは収容所だけの出来事ではない 昨年のヴェネツィア映画祭で「少年の置かれた過酷な状況が賛否を呼び、途中退場者が続出。しかし、同時に10分間のスタンディングオベーションを受け」(公式サイト)たと宣伝されている映画です。意味合いとしては、少年が悲惨な目に会い正視に耐えない映画ではあるが評価は高いという意味なんだろうと思います。異端の鳥 / 監督:ヴァ...
圧倒的な太賀、何はなくとも映画は俳優 すごい映画ですね。むちゃくちゃ集中させられます。ただ、映画館にいる間は、です。生きちゃった / 監督:石井祐也それでいいんですが、映画館から出て、あらためて思い返してみますと何の映画だったっけ? という感じがするんです。非難ということではありません。逆です。とにかく俳優、特に仲野太賀さんの圧倒的な熱量と石井裕...