三宅唱監督のうまさと、上白石萌音さん松村北斗さんの俳優力… 三宅唱監督の映画は過去に「Playback」「きみの鳥はうたえる」「ケイコ 目を澄ませて」と3本見ていますが、どれもあまりいいことは書いておらず、「ケイコ 目を澄ませて」にいたっては、いい映画と言いながらもったいないもったいないと書いています(ゴメン…)。しかし、この「夜明けのすべて」はい...
差別、偏見、欺瞞が渦巻く17分、「福田村事件」にはない現実感 「4ヶ月、3週と2日」「汚れなき祈り」「エリザのために」のクリスティアン・ムンジウ監督、2022年の最新作です。ムンジウ監督はこの映画の前にはジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ(ダルデンヌ兄弟)監督やミシェル・フランコ監督とともに「母の聖戦」のプロデューサーに名を連ねています。...
菊地凛子さんの苦労の跡が見える…(涙) 菊池凛子さん主演の映画を初めて見ます(多分…)。過去の出演作を見てみますと何作かは見ていますが、ほとんど記憶がありません。話題になったということもあり、どうしても記憶は「バベル」までさかのぼってしまいます。監督は熊切和嘉さん、こちらもしばらく見ていないようで「武曲 MUKOKU」以来です。...
佐藤泰志さんは、こんな男女は書きません! 佐藤泰志さんの小説はかなり映画化されています。「海炭市叙景」に始まり「そこのみにて光輝く」「オーバー・フェンス」「きみの鳥はうたえる」「草の響き」ときて、この「夜、鳥たちが啼く」で6本目です。「書くことの重さ」というドキュメンタリー映画もあります。夜、鳥たちが啼く / 監督:城定秀夫...
タイトルとメインビジュアルはいいのだが… 公式サイトのメインビジュアルや宣伝コピーではかなり期待値は高かったのですが、んー、どうでしょう…。監督、脚本は「福岡を拠点に映像制作を行(公式サイト)」っている萱野孝幸さんという32歳の方です。夜を越える旅 / 監督:萱野孝幸予想はつきます「予測不能」と宣伝されていますが、予想...
松井玲奈さんがすばらしい、安川有果監督のセンスがいい 監督の安川有果さんは映画はもちろんのこと名前も初めて目にし、主演の松井玲奈さんも映画で見るのは初めて、原作の島本理生さんも一冊も読んだことがなく、脚本の城定秀夫さんは名前を知る程度、かろうじて中島歩さんの「いとみち」のとてもよい印象に頼って見た「よだかの片想い」、映像センスよし、松井玲奈さんよし、演出よ...
目立たない方が良い映画という悲しい世界 タイトル通りの映画です。1927年に映画がトーキーとなってから現在までの映画音響の歩みと Sound department の現場ではどんなことが行われているかの触りを紹介している映画です。ようこそ映画音響の世界へ /監督:ミッジ・コスティン映画制作の上で評価される部門と言いますと、まず監督と俳優、そして脚本、美...
父と息子の軋轢と邂逅ではなく男たちの諦観の物語 189分、およそ3時間の映画です。前作の「雪の轍」が196分ですので、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督にはこの長さがないと語りきれないということなんでしょう。前作では人の業のようなものを延々語ったものの、最後は割と簡単に人と人がわかり会えるような結末で終えていましたが、この映画はどうなんでしょう?読まれなかった小...
筒井真理子さんよりも市川実日子さんの「よこがお」が見えてしまう 世界で認められた監督に対して失礼であることも、一観客からの余計なことであることも承知で言いますが、深田晃司監督は初心に帰るべきじゃないかと思います。よこがお / 監督:深田晃司丁寧に作られていることは認めますが、全く面白くありません。ネタが火サス的であることはまあいいとしても、なにをやろう...
鮮烈デビューの新人監督に厳しいことを書いてしまった(ペコリ) 「是枝裕和・西川美和監督が立ち上げた制作者集団「分福」が満を持して送り出す新人監督、広瀬奈々子」さんのデビュー作です。なんてこと書かなくても、多くの人がこの映画に興味を持たれたのはおそらくこのコピーからでしょう。夜明け / 監督:広瀬奈々子「分福」とはなにかの説明が公式サイトにありました。制...
アンジェラ・ユンも宵闇真珠のタイトルもいいんだけどね… この映画、その内容や出来不出来よりも、どういう経緯でこの映画ができたのかの方に興味がいっちゃいますね。公式サイト / ジェニー・シュン、クリストファー・ドイルと言いますのは、まあ、映画の出来自体はよろしくないんですが、クリストファー・ドイルさんが監督としてクレジットされていることやオダギリジョーさ...
ラスト10分のピエールの描き方が見事 この映画、ラストの数シーンが無茶苦茶いいです。その良さというのは、主人公のピエール(ニールス・シュネデール)、下の引用の人物なんですが、彼の心の揺れが映画的に実にリアルなんです。実際にありそうとか現実的という意味ではなく、彼は次どうするんだろう、こうはしないでくれと考えながら見ていると、ああそうするんだ、そうか、そうだよなと...
浅野忠信の役作りしない演技が功を奏して 随分古臭いタイトル付けだなあと目につき、公式サイトを見てみましら、原作が重松清さんの小説で、タイトルも原作通りとのこと、重松清さんは10年くらい前に結構ハマって何作が読みましたが、この作品は知りませんでした。1996年、20年前の作品ですか、中途半端に古いですね(笑)。重松清さんって、少年の話が多いですよね。いじめであった...
歓びのトスカーナではなく、狂気のはての歓び。 「歓びのトスカーナ」ってタイトルに釣られたわけではありませんが(笑)、こんな映画だったんかい!?それにしても、何とも難しいテーマに挑戦したものです。原題の「La pazza gioia」は、直訳すれば「狂気の歓び」というような意味らしく、pazza は「気が狂った, 頭がおかしい」英語では crazy だとすれば、ネ...
実話といいつつ、作られた物語性を強く感じる アンヌ・フォンテーヌ監督、「オーギュスタン 恋々風塵」「ココ・アヴァン・シャネル」「美しい絵の崩壊」「ボヴァリー夫人とパン屋」と聞けば、ああと思い当たるのですが、なぜか一本も見ていません。この「夜明けの祈り」は、マドレーヌ・ポーリアックという女性医師の実話にもとづく物語とのことです。原題の「Les innocentes...
原作の詩集には興味は持つが、映画はダメ 「川の底からこんにちは」ではボロクソに書き、「舟を編む」では褒めまくった(それほどでもない)石井裕也監督の新作です。原作は、最果タヒさんの詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』ということですので、多分、原作というよりも詩に触発されてのオリジナル脚本に近いのではないかと思います。映画のタイトルに「映画 夜空は~」とわざわざ「...
これは単なる「ネスレ・ボイコット」的告発映画でも、勇気あるひとりの男の物語でもない。 この映画、公式サイト(下に引用)の解説などを読みますと、グローバル企業の不正を暴く告発映画のように思われるかもしれませんが、そう簡単な問題ではありません。確かに、「巨大企業の悪」対「それに立ち向かう正義の一個人」という図式は、宣伝上は受けるかもしれませんが、ダニス・タノヴィッチ監...
疲れた体、心?を癒すには良い映画でした 横道世之介 (スペシャル版) [Blu-ray] 出版社/メーカー: バンダイビジュアル 発売日: 2013/08/07 メディア: Blu-ray この商品を含むブログ (14件) を見る原作を読み、期待して見る映画に良かった試しはないというのが通説ですが、さて、この横道世之介はどうでしょう...
酔いがさめたら、うちに帰ろう。 (講談社文庫)作者: 鴨志田穣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/07/15メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 50回この商品を含むブログ (29件) を見る映画を見ようと思っていて、特に理由もなく、先に原作を読んでしまった。本の方は、とても面白かった。簡潔な文章で、ユーモアがあり、それが逆にリアリティを生み出し、同時進行で読んでいる村上春樹に向かっ...