もう少し話を整理してテーマをはっきりさせたほうがいいんじゃないの
瀬々敬久監督と黒島結菜さんの名前が目に入りポチッとした映画です。瀬々敬久監督は3年ほど前の「春に散る」以来になります。「ヘヴンズストーリー」以降わりと観ている監督ですが、これといって記憶に残っている映画がないんですね(ゴメン…)。
この「未来」はどうなんでしょう。

ネタバレあらすじ
この映画も残らなさそうです(ゴメン…)。
そもそも黒島結菜さんの映画じゃないです。どちらかといえば佐伯章子(山崎七海)を軸にした話です。実際、篠宮真唯子(黒島結菜)よりも章子のシーンのほうが圧倒的に多いです。
内容は日本の社会派と言われる小説や映画に多いタイプの話で、いじめ、虐待、ネグレクト、暴力、性虐待、性搾取、強要、小児性愛、自殺、誹謗中傷、ありとあらゆる社会問題が突っ込まれています。
原作は言うまでもなく湊かなえさんの『未来』です。発行は2018年です。
原作を知りませんので映画のという話ですが、これだけあれこれ突っ込めば当然それぞれの描写は浅くなります。いじめも1、2シーン描いていじめがありましたですし、暴力にしても虐待にしても性虐待や性搾取にしてもワンシーン描いてそれが常時あるかのように見せているだけです。
ごちゃごちゃ、ぴょんぴょん
時系列がぴょんぴょん飛びます。ですのでわかりにくい話です。それに時系列の辻褄が合っていないような気がします。整理しますとこういう話です。
3つの物語があります。軸となっているのは、中学生の章子(山崎七海)の物語です。この物語は、章子の父親良太(松坂桃李)が病床にある時点から章子がドリームランドへ行くラストシーンまでの一連です。少なくとも1、2年の期間がないと説明はつかないです。母親は文乃(北川景子)です。
ここに教師の真唯子(黒島結菜)が絡んできます。真唯子の物語は過去の話であり、恋人と思われる勇輝(坂東龍汰)を交えて何ヶ所かで挿入されます。数年前かもっと古い話かと思います。
そして3つ目は章子の父良太の若き頃(細田佳央太)と母文乃の若き頃である真珠(近藤華)の物語です。高校時代ですから20年くらい前になるのでしょうか。
これら3つの物語がぐちゃぐちゃに描かれてわけがわからなくなっています(笑)。ですので、そもそものテーマである(と思われる…)「未来」というものもわけがわからなくなっています(ゴメン…)。
章子の物語
中学生の章子(山崎七海)の父親良太(松坂桃李)が病床にあります。母親文乃(北川景子)は躁鬱の傾向があるようです。良太が亡くなり、文乃は鬱状態のままになります。章子に20年後の私から手紙が届きます。半信半疑ながら章子は未来の自分へ手紙を日記のように書き始めます。
章子は学校でいじめにあっています。使用済みナプキンを机の上に置かれたり、臭いと言われたりしています。亜里沙(野澤しおり)が救ってくれて二人は親しくなります。
文乃が働き始め、シェフの誠司(玉置玲央)と知り合い、誠司がフレンチレストランを始めた頃から一緒に暮らし始めます。しかし、レストランはうまくいかず、やけっぱちになった誠司は暴力を振るうようになります。恫喝などは何度もありますが、章子への暴力シーンはワンシーンだけです。
誠司は亜里沙の父親とつるんで人材派遣業を始めます。亜里沙には幼い弟がいます。父親はネグレクトです。誠司たちの人材派遣業は実質、性搾取業になり、文乃まで売春を強要されます。亜里沙の弟が飛び降り自殺します。誠司たちによって小児性愛者にもとに送り込まれていたのです。
章子と亜里沙は共に父親を殺そうと決め、決行した後にドリームランド行きのバスに乗る約束をします。
その日、章子はある方法により誠司を殺害し、家を燃やしてしまおうと手紙の束に火をつけます。そこへ文乃が戻ってきます。文乃は火を消し、ここは私に任せて逃げなさいと言います。
この後文乃は登場しませんがどうなったんでしょう。章子についてはラストシーンへ。
真唯子の物語
真唯子(黒島結菜)の物語です。
真唯子は章子の担任です。シーンとしてはありませんが、おそらく章子がいじめられていることに気づいたのでしょう、章子の家庭訪問に訪れるシーンがあります。その時、倒れそうになった文乃を真唯子が支えて抱きしめます。それを見ていた生徒が後日授業中に真唯子と章子を揶揄し、周りの生徒たちも囃し立てます。真唯子はその生徒に黙れ!という勢いで口元を押さえます。
真唯子は親たちから責められ、その際に過去に学費を稼ぐために出演したカラオケのイメージ映像(ちょっと男女の絡みがあるだけ…)を持ち出されて辞めることになります(そんなことありですかね…)。
この後、真唯子の過去の物語が説明されるのですが、その前に重要なことなのにうまく整理がつかないことをひとつ書いておきます。真唯子が章子の父良太の病床を訪ねるシーンがあり、そこで良太から自分が死んだら章子に手紙を書いてほしいと頼まれます。これがいつのことだかよくわからないんですね。まあ、問題となった家庭訪問の前にも家を訪ねて父親のことを聞いているということなんでしょう。
とにかく、真唯子の過去です。真唯子は母親がネグレクト(じゃないかもしれない…)のため祖母に育てられています。大学時代に祖母が亡くなります。その悲しみと喪失感を同じアパートに住む勇輝(坂東龍汰)が癒やしてくれます。勇輝は映画マニアであり、こういう時はこれを見るといいと言い「東京物語」を見せてくれます。
その後、真唯子は学費のために件のカラオケのイメージ映像に出演します。
このことに関して挿入されている勇輝とのシーンの時期がよくわかりません。勇輝をラブホテル(どこ?と思いましたがそういうことだと思う…)へ連れて行きカラオケ映像を見せます。勇輝が責めるようなことを言うシーンです。
なぜそんなことで責めるの? ということは置いておくとして、教師を辞めることになった後のシーンとすれば、真唯子は地元、勇輝は東京じゃないかと思います。東京時代だとしますとなぜその時話すことにしたのかがわかりません。勇輝は後にドリームランドに就職しますがその時二人は別れていますからね。
まあ、こういうわけのわからない映画ということです。
この後の真唯子についてはラストシーンで。
章子の両親の物語
いきなり章子の父親良太(細田佳央太)の高校時代の物語が始まります。さすがにこれはキャスティングがまず過ぎます。キャスティングディレクターがです。
良太は文乃の高校時代である真珠(近藤華)に一目惚れします。真珠は私に近寄らないほうがいいと言います。真珠の父親総一朗は代議士です。総一朗には息子がいたのですが幼い頃に海で亡くなっており、妻のせいだと責めたようです。その後跡取りが欲しいとつくった子どもが真珠です。女の子であることをさらに責めたのでしょう、母親は追い出されたのか亡くなったのかわかりませんがいなくなっています。
ある時、良太は真珠が父親から性虐待を受けている現場を見ます。良太は真珠に父親を殺して逃げようと言い、真珠は自分が殺した後アリバイ作りのためにどこどこに行っているから良太に火をつけてと提案します。この提案、良太が言わないとおかしいので良太からだったかもしれません。予定通り、良太は総一朗が横たわっていることを確認し家に火をつけます。しかし、真珠は予定の場所にいません。自分も死ぬつもりで家にいると気づいた良太は燃え盛る火の中から真珠を助け出します。
何年か後、その後の経緯が説明されていたかどうかは記憶はありませんが、真珠は売春をしていることになっています。良太(松坂桃李)が真珠(北川景子)を指名し二人は再会します。その後、二人は誰も知らない土地で名前を変えて結婚し、章子をもうけています。
父親殺人は有耶無耶にされていたのか、真珠が服役したのか、そうだとしますと良太は逃げたんですかね。それに姓まで変わっていますがどうやったんでしょう。
それにしてもドラマとはいえこんな無茶苦茶な話をよくつくりますね。
そして、結末
映画のファーストシーンでは真唯子が走っており、それは章子と亜里沙を追いかけていたわけですが、ラストシーンの先見せ(フラッシュフォワードと言うらしい…)でした。
どういう経緯かの説明はありませんがとにかく、真唯子は章子が走ってくるのを見ます。追っかけますが間に合わず、章子と亜里沙はバスに乗ってドリームランドへ行きます。
翌朝のドリームランド、入場しようとする亜里沙に章子が「ドリームランドへ行くのは今じゃない。叫ぼう!」と言い、二人でワーと叫びます。
後日ということになります。真唯子が面会室で待っています。章子が入ってきます。真唯子は章子を抱きしめます。章子も抱きしめ返していたと思います。
章子が受け取った20年後の私からの手紙は真唯子が病床の良太に頼まれて書いた手紙です。
感想:話を説明するだけでは物語は生まれない
という、むちゃくちゃ粗の多いシナリオで撮られた映画でした。
なにがテーマかも判然としません。どうやら「未来」というわけではなさそうです。最後に叫ばせても発散しているだけにしか見えませんし、それに20年後からの手紙も生きていません。ところで、ドリームランドって奈良のドリームランドのことでしょうか。ああ、2006年に閉園していますね。
「不幸の連鎖」を断ち切ることですかね? たしかに文乃と章子の人生がダブらせてあります。そうだとしますと、それを断ち切るのは真唯子の何かということになりますが、その何かがうまく提示されていません。映画全体の中の真唯子のおさまり具合もよくないですね。なぜ章子に肩入れするのかを描いていないからです。
「文章」? これも手紙や良太の残した物語に強さがないうえに現実感がなさすぎます。
シナリオは加藤良太さん、1989年生まれですから37歳くらいの方です。これだけごちゃごちゃしているということは原作にかなり忠実ということだと思います。原作を読んでいないのに言うのもなんですが、映画はテーマがしっかりしていないと見られたものじゃなくなります。原作のテーマを正しく汲み取って、いかに映画的な感動に結びつけられるか取捨選択すべきだと思います。
とにかく、物語を説明するだけの映画はつまらなくなります。これだけの人物を登場させても描かれるシーンが上っ面だけではどの人物も生きてきません。
とまあ、これだけあれこれあら探しのように書く方に問題ありかも知れません(涙)。