プリズナーズ/ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督

ハリウッドでリメイクすれば、きっと面白い映画になるでしょう。え?これハリウッド?

サスペンスものをきらいじゃないのと「セブンを越える」などという宣伝文句にやられて見てしまいました(笑)。

(注)この映画を良かったと思われた方が以下を読むと気分が悪くなりますのでご注意ください。


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見方を誤りました。サスペンスとかセブンとかに惑わされ、ロキ刑事(ジェイク・ギレンホール)の視点で、誘拐事件の謎をどうやって解き明かしていくのかとワクワクしながら見ていたのですが、どうもそうじゃなかったようで、あらためて公式サイト見てみますと、「愛する娘を奪われた時、父が踏み越えた一線とは。」なんてコピーがあったりして、結局、愛する娘を奪われた父親ケラー・ドーヴァー(ヒュー・ジャックマン)が、悪魔に取り憑かれた如く、(精神的に)凶暴化するというお話だったんですね(多分)。

でも、そうだとすると、それはそれで物足りない映画です。たしかに、時々、ケラーに神への祈りの台詞があったりと、こうした映画によくある「神」対「悪魔的なもの」という図式を匂わせていましたが、ケラーに人の道を踏み外している感じはなく、確かに行き過ぎではあっても、この程度の思い込みによる暴力性なんてアメリカ映画ならよくあることでしょう。

それに、あのロキ刑事も含めた警察の無能ぶりというか、やる気の無さでは、ケラーの気持ちも分からなくはないですね。ケラーの妻グレイス・ドーヴァー(マリア・ベロ)に「あなたはこれまで全て事件を解決しているのね」と言わせていましたが、それは無理でしょう(笑)と言いたくなります。だって、本来警察が持っていなくちゃいけないような情報を新聞記事で調べたり、一向に推理を働かせることもなく対応が後手後手にまわったり、無能な上司を説得も無視もできず言いなりで、突如切れたと思ったら容疑者に自殺されてしまうなんてことでは、とてもこの誘拐事件の謎は解き明かせないでしょう。

サスペンスものとしても何とも中途半端で、色々散りばめられてはいますが、映画的にまとめきれていない感じです。神父の話やら、蛇の話やら、迷路やら、面白くできそうな素材はいっぱいあるのに、なんとラストにそれらが一気にぶっちゃけられて、はい終わりみたいな映画でした。サスペンスものであるなら、ぐいぐい引っ張っていくだけの構成力が必要ですし、サイコ系のものにするのなら、もっともっと深い考察力が必要でしょう。

ハリウッドでリメイクすれば、きっと面白い映画になるでしょう。え?これハリウッド?