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シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語/カアン・ミュジデジ監督

これはどうも少年と犬の話ではなく馬鹿な大人の話のようだ

2015/11/26

このところ何やかやと話題になるトルコですが、映画で言えば、最近では「雪の轍/ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督」を思い出します。ロケーションはカッパドキアでしたが、内容はトルコっぽさ(よく知りませんが)はあまり感じられず、どちらかと言いますとヨーロッパっぽい視点の映画でした。

それに比べますとこの「シーヴァス」には土着的なトルコが描かれていたように思います_

闘いに敗れ置き去りにされたシーヴァスと、その不屈の強さを信じて、全身全霊を注ぎ込む少年アスラン。射るような澄みきった目を持つ少年は、純白の闘犬と出会い、その凛とした佇まいと神々しいまでの存在感に惹かれ、かけがいのない関係を築き始める…。アナトリア地方の広大なロケーションをバッググラウンドに、これまでに見たことも感じたこともないような、研ぎ澄まされた映像美の中に描かれる少年と闘犬の寓話。(公式サイト)

_が、ただその土着性もはっきりと浮かび上がってきたわけではなく、多分そうではないかと思うだけで、この映画、全体的に何ともとらえどころのない映画でした。

舞台はアナトリアの高原地帯、Sivas 県という地方がありますので多分その辺りだと思いますが、物質的豊かさは感じられない小さな村です。

ただ、実際に映像として出てくるのは、少年アスランの家、学校、周辺(らしい)の高原くらいで、実は村の存在がイメージ出来ないんですね。闘犬のシーンで村長や村人が十数人集まってくるのですが、彼らはどこから集まってきたのか、画として「村」がないだけではなく、その実在感がなく、それぞれロケ地として選んだだけのような印象も受けます。

アスランの父の職業(家業)もよく分かりませんし、兄がいるのですが、兄も一体何をしているのか分かりません。農業? 牧畜? 村の産業が分かりません。

カメラがやたら動き回ります。

ドキュメンタリータッチを狙っているのか、闘犬の荒々しさや少年の快活さを印象付けようとしているのか、やたらハンディで動き回っていました。あの撮影手法はどうなんでしょうね…、結構なアップからの動きも多かったですので、もう少し計算された動きであればともかく、悪く言えばただ荒っぽいだけにも見ます。

邦題が「少年と犬の物語」となっていますので、ある程度はそれも描かれるのかと思っていましたが、全くと言っていいほどなかったです。少年の犬への愛情や犬の信頼感などといったよくある物語も一切ありませんでしたので、多分監督にその意図はないのでしょう。

ところで「白雪姫と七人の小人」の「小人」を「ドワーフ」と訳していたのは差別用語と認定してのことだと思いますが、ちょっと違和感ありすぎでしょう。自主規制するのなら「妖精」とかにすればいいのにと思います。さらに、アスランがタバコを吸うシーンがありましたが、これもぼかしてありましたけど、R 指定すればいいんじゃないでしょうか。そもそも子供に見せる映画じゃないでしょう。

と、まあ、結局よくわからないまま終盤を迎えるのですが、ただひとつかすかに見えてくることがありました。それは、意図してのことかどうかは、これまた分かりませんが、馬鹿な大人たちの姿です。

大人たちはただただ闘犬のためにしか登場しません。それがその地方に伝わる風習的なものなのか、あるいはそこで賭けが行われているのかよく分かりませんが、いずれにしても警察の検問(違法行為?)をかいくぐってまでそんなことにうつつを抜かす大人たちは馬鹿でしょう。

ラストカットの少年とシーヴァスのちょっとばかりの長回しがそう語っています。

ところで、カアン・ミュジデジ監督はトルコ生まれですが、映画はベルリンで学び現在もベルリンで暮らしているそうです。トルコ、ドイツ、映画ときますとファティ・アキン監督ですが、そういえば「愛より強く」「そして、私たちは愛に帰る」に続く三部作完結編云々との記事を読んだ記憶があるのですがどうなったのでしょう? と、調べてみましたらありました。

「THE CUT」ですね。邦題「消えた声が、その名を呼ぶ」で、12月26日公開だそうです。名古屋は1月16日からです。

コードネーム U.N.C.L.E./ガイ・リッチー監督
ヴィヴィアン・マイヤーを探して/ジョン・マルーフ監督チャーリー・シスケル監督
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