そんなには褒めないよ。映画評

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SMOKE デジタルリマスター版

煙草の煙が目にしみる。あの時代、その涙は哀愁だったが、今は怒り…

2017/01/08

1995年のベルリンで銀熊、審査員特別賞を受賞した「SMOKE スモーク」のデジタルリマスター版によるリバイバル上映です。

当時、結構ヒットしたようですが記憶にありませんので見ていないようです。

製作に日本が入っているのは、井関惺(さとる)さんというプロデューサーが原作者のポール・オースターさんの大ファンで、資金集めに来ていたウェイン・ワン監督と意気投合(ちょっと違うかも)したということらしく、その後のアメリカのパートナー探しも井関さんが尽力しているようです。(プロデューサー・井関惺インタビュー)

監督:ウェイン・ワン

1990年ブルックリンー。 14年間毎日同じ時間に同じ場所で写真を撮り続けるタバコ屋の店主、オーギー。 最愛の妻を事故で亡くして以来書けなくなった作家、ポール。 18年前にオーギーを裏切り昔の男と結婚した恋人、ルビー。 強盗が落とした大金を拾ったために命を狙われる黒人少年、ラシード。 それぞれの人生が織りなす糸のように絡み合い、そして感動のクライマックスへと向かっていく……。(公式サイト)

全編、煙草の煙が漂っています。もうこういう映画は撮れないでしょう、けむくって(笑)。煙草が効果的な小道具として使われる映画や演劇は結構多かったのですが、もうそういう時代も終わりました。

ただ、この映画は、舞台は煙草(をあつかう雑貨)屋ではありますが、煙草が小道具として活用されているわけではなく、いろいろな人間が出入りする場としての意味合いのようです。

途中、1.ポール、2.ラシード、3.ルビー、4.サイラス、5.オーギーと、タイトルのようにテロップが入りますが、特別、シーンとして分かれているわけではなく、この五人が主な登場人物の物語ということです。

オーギーはブルックリンでたばこ屋を営んでおり、ポールはそこに出入りする近くに住む作家、ラシードはたまたまポールが車にひかれそうになったところを救う若者で、自分を捨てた父親を近くで見たという話を聞きつけて家出をしています。サイラスがその父親、ルビーは昔オーギーと付き合っていた女性で、二人の間の娘が薬漬けになっているので助けてくれとオーギーの前に現れます。

それぞれにそれぞれのドラマがあるのですが、特別どれかに深入りすることもなく、どこか現実を達観したところがあり、まあ何とかなるさみたいな感じです。

実際、ラシードが強盗からパクった5,000ドルがからんで、ポールが怪我をしたり、オーギーが闇で仕入れたキューバ産の葉巻をパーにしたり、結局そのお金はルビーの手に渡ったりといろいろあるのですが、皆そのお金に執着したりはしません。皆極めて現実的ではあるけれど、執着しないという感じでしょうか。

そうしたところが受ける理由なんでしょう。いわゆるオフビートという感じです。

「嘘」というのも、ある種この映画のキーワードになっているようです。ラシードは、悪意はなくとも何が本当で何が嘘か分からないような話をしますし、ルビーがオーギーとの間の子供だという話も本当のところは分からずじまいですし、ラストにオーギーがポールに語る、そもそもの原作であるらしい「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」もオーギーが老婆をその息子だと偽る話です。さらに、オーギーの語るその話自体もそれが事実かどうかを曖昧にして終えています。

ただ、その「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」は、エンディングとして、トム・ウェイツの Innocent When You をバックにモノクロ映像で語られた通りに演じられます。

と、とても味のあるいい映画でした。

で、最後に、ふと感じたことをひとこと。

こうしたオフビートなアメリカ映画って、何とも男くさいですね。

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