人にはまやかしに頼りたいときもある 「北白川派」という「京都造形芸術大学と映画学科が一丸となり、その全機能を駆使しながら、プロと学生が協働で一年をかけ一本の映画を完成させ、劇場公開を目指すプロジェクト」で製作された映画です。ちょうど2年前に「嵐電」という鈴木卓爾監督の映画を見ていますが、それも同じプロジェクトでした。渋くっていい映画でした。のさりの島 / ...
ホン・サンス監督の自虐的懺悔映画か? 私には2017年の「それから」以来のホン・サンス監督です。特別注目しているわけではありませんが、名前をみれば見てみようかと思う監督です。公式サイトに、主演のキム・ミニさんが「監督の公私のパートナー」とありましたので、そうなんだとググってみましたら、数年前からプライベートでもパートナーの関係にあるようです。それを知りますと、映画...
ノマドファンタジーへの誘い 間もなく発表になる今年のアカデミー賞に作品賞、監督賞、主演女優賞など6部門でノミネートされています。先日見た「ミナリ」も同じように6部門でノミネートされていることとあわせて考えますとなんとも興味深いです。どちらもアメリカのルーツに関わるような内容なのにどちらも監督がアジア系であり、そしてどちらも映画の基調がノスタルジックです。ノ...
改憲誘導を意図すれど俳優は踊らず 宮沢りえさんと浅野忠信さん主演の映画でしたので見に行ったんですが、映画のつくりはともかく、内容(主張?)にやや胡散臭さが感じられ、これは一体どういう映画なんだろう?と調べてみましたら…日本独立 / 監督:伊藤俊也改憲誘導映画か?ネタバレあらすじとちょいツッコミ日本国憲法成立の過程戦艦大和ノ最期 映画の質は低...
人は結局利己的にしか動かない… 「人生はシネマティック!」「17歳の肖像」「幸せになるためのイタリア語講座」のロネ・シェルフィグ監督、2019年の映画です。その年のベルリン映画祭のオープニングで上映されています。映画の傾向としては「幸せになるためのイタリア語講座」に近いものがあります。ニューヨーク 親切なロシア料理店 / 監督:ロネ・シェルフィグ人は...
仲野太賀と吉岡里帆、の良さを出せない脚本 「是枝裕和が惚れ込んだ新たな才能!」という宣伝コピーがついています。確かに企画に是枝裕和さんの名前もありましたし、分福が企画協力となっていたと思います。で、その才能が佐藤快磨監督ということです…泣く子はいねぇが / 監督:佐藤快磨…が、私にはまったくリズムがあわなかったです。なぜそこで次のシーンへ行く? な...
(DVD)香取慎吾と脚本加藤正人と白石和彌監督がぴったりあった映画 これは劇場で見るべきでした。映画自体がよくできているということもありますが、全体的に画が暗いので家のモニターでは伝わってくるものが半減します。それに、香取慎吾さん、いいですね。映画では始めて見ました。凪待ち / 監督:白石和彌ギャンブル依存症の男が立ち直るまで、まあそう単純でもないん...
(DVD)ビジュアルだけではドラマは生まれない ついつい蜷川実花ワールド! と言いたくなってしまいますが、ちょっと変わってきている感じがします。というより、俳優、特に宮沢りえさんと二階堂ふみさんによるものかも知れません。集中させられるシーンがいくつかあります。人間失格 太宰治と3人の女たち / 監督:蜷川実花「さくらん」と「ヘルタースケルター」しか見...
食欲、性欲、そして世界は続くの輪廻観 キム・ギドク監督の「人間の時間」です。結構多作の監督ですが、前回見たのは3年前の「The NET 網に囚われた男」です。それにこの映画もちょうど2年前の2018年2月にベルリンでプレミア上映された映画です。IMDbにもこの映画以降これといったものがリストアップされていません。さすがにネタ切れ気味なのか、あるいは女性俳優への暴行...
歴史ものに、悪いやつもいるし、いいやつもいるってのはダメ! 19世紀のタスマニアを舞台にした、アイルランド人の女性の復讐物語が軸になった映画で、そこにイギリス対アイルランド、そして先住民アボリジニの虐殺をからめた、しかしながら映画の出来としてはあまり良くはなく美しくもありません。ただ、2018年のヴェネツィアで審査員特別賞を受賞しています。ナイチンゲール ...
イタリア人のイタリア人によるイタリア人のための映画 「カラヴァッジョ展」が大阪で開催中です。昨年2019年の8月から札幌、名古屋と巡回しているようです。また、これとは別の企画なんでしょうか、今年の10月には国立新美術館で「カラヴァッジョ《キリストの埋葬》展(仮称)」も開催されます。そのカラヴァッジョの作品「キリスト降誕」は、シチリア、パレルモのサン・ロレンツォ礼拝...
マッツ・ミケルセンを生かせず単調に終わる これはそもそもの企画が無理なんじゃないでしょうか。登場人物は実質的にひとりです。北極圏のどこかに小型飛行機で不時着した男が救助を求めるが救助のヘリも強風で墜落、やむなく生存者の女性パイロットを連れて自力での生還を試みるという物語で、その女性は負傷して最後まで意識は朦朧で会話はできず、ただただ最後まで男のハアハアという息切れ...
(DVD)篠原涼子ってスゴイね。 面白かったです。DVD鑑賞ながら結構集中して見られました。人の「生」と「死」の境界線という個々の局面では永久に結論のでないテーマがドラマというフィクションの世界にうまく落とし込まれています。まあこれは原作のものでしょうが、映画としては特に篠原涼子さんの演技が素晴らしく、現実感の薄いセットやライティングの中のリアリティある薫子(篠原...
(DVD)サラリーマンから将棋のプロへ 将棋の世界のことなどまったくわかりませんが、こういう映画を見ますと藤井聡太くんは超超天才なんだということがわかります。プロの棋士になるためには、奨励会に入り26歳までに三段リーグ戦で上位ふたりに入らなくてはいけないらしいのですが、この映画の主人公で自伝小説の原作者瀬川晶司さんは、年2回あるリーグ戦に8回のチャンスがあったのに...
音楽とエスプリの効いた会話でみせるアニメーション ふと見た予告編に惹きつけられたアニメーション、本編81分も惹きつけられっぱなしでした。今年2019年のカンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリを受賞したらしく、また、この部門でアニメーションがグランプリを受賞したのは初めてとのことです。失くした体 / 監督:ジェレミー・クラパン切断された手が自分の体を求...
マルガレーテ・フォン・トロッタ監督、ラブコメに挑戦か? 何度も見せられた予告編だけで充分だなあと思っていたのですが、ふと監督名を見ましたら、「ハンナ・アーレント」「生きうつしのプリマ」のマルガレーテ・フォン・トロッタ監督ではありませんか!え、こんな映画撮るの? と半信半疑だったのですが、そういえばこの元妻の方の俳優さん、何かで見た…、ああ、「生きうつしのプリマ」の...
家族ファンタジーもいいけれど、さすがにここまでくると… さすがにこの価値観(家族観)にはついていけないなあという映画です。映画のつくりとしては俳優で持っている感はありますが、さすがにそれも30分くらいまでで、こうしたエンターテイメント系としてはメリハリがなく厳しいです。 長いお別れ / 監督:中野量太「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督の商業映...
人はわかりあえないし、所詮身勝手なもの… 2011年の「最初の人間」以来のジャンニ・アメリオ監督です。寡作の印象の監督ですが、IMDbを見ますとそうでもなさそうで、TVやらドキュメンタリーやらと結構いろいろ撮っているようです。ナポリの隣人 / 監督:ジャンニ・アメリオ最後まで焦点の定まらない映画でした。終わってみれば、ああ、父娘の話だったのねとわか...
ハイドリヒ暗殺計画が題材の二部構成ダイジェスト版映画 2014年の本屋大賞「翻訳小説部門」第1位『HHhH プラハ、1942年』(ローラン・ビネ:著、高橋啓:訳)が原作の歴史もの映画で、原作タイトルの「HHhH」とは、「Himmlers Hirn heiβt Heydrich(ヒムラーの頭脳、すなわちハイドリヒ)」を表す。(図書新聞)とのことです。ナ...
柴崎友香と濱口竜介によって作られた新しい女性像、朝子。 今年のカンヌでは「万引き家族」がパルムドールを受賞しましたが、この「寝ても覚めても」もコンペティション部門に出品されています。こうした映画祭への出品がどのように選定されるのかはわかりませんが、「ある視点」に出していれば何か受賞したかもしれませんね。作り物臭い(ペコリ)「万引き家族」に比べれば、実在感という点で...