グザヴィエ・ドランの転換点となるか グザヴィエ・ドラン監督にとって、母親との関係は永遠のテーマなんでしょう。デビュー作の「マイ・マザー(英題:I Killed My Mother)」に始まり、「Mommy/マミー」というそのものスバリのタイトルもありますし、その他ほとんどの作品に母親の影がちらついています。ジョン・F・ドノヴァンの死と生 / 監督:グザヴィ...
ジュディ・ガーランドの最後のロンドン公演を描く 名前はよく耳にするのに、具体的にはどんな人かも、顔さえも知らない有名人というのが結構います。ジュディ・ガーランドさんもそうで、「オズの魔法使い」のドロシーの人ということとライザ・ミネリのお母さんということくらいしか思い浮かびません。そのジュディ・ガーランドさんの亡くなる直前の半年くらいを描いた映画です。演じたレニー・...
五体投地のシーンが少ないのは残念、基本は親子ものでした チベット仏教の巡礼といえば「五体投地」です。「ラサへの歩き方 祈りの2400km」で知りました。無茶苦茶いい映画でした。もう一度見たいです。これもそういう映画かなと思いましたがちょっと違っていました。巡礼の約束 / 監督:ソンタルジャ物語の背景や契機となるのはラサへの巡礼ですが、映画のテーマは親...
コメディタッチのダンス&音楽映画でありながら背景はシリアス 映画関係のサイトを見たりしていますと、わりとよく「サニー 永遠の仲間たち」の文字を目にします。見てはいないのですが、そのカン・ヒョンチョル監督の映画ということで興味を持った「スウィング・キッズ」、タイトルやビジュアルからも音楽&ダンス映画だと思われ、おそらくハズレはないでしょう。スウィング・キッズ ...
人は記憶を失えば他者と世界を共有できない、しかし… つい3ヶ月ほど前に「わたしは光をにぎっている」を見たばかりの中川龍太郎監督の「静かな雨」です。原作ものは初めてとありますのでおそらくオファーがあったのでしょう。静かな雨 (文春文庫)作者:宮下 奈都出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2019/06/06メディア: 文庫 映画を見て...
ヒトラーが吹っ飛ぶ寓話的なヒューマンドラマ ナチスを題材にしてコメディ映画を撮るとすれば、それがいいことかどうかは別にしますとヒトラーを茶化すことが一番に思いつきそうですし、そんな映画があったようにも思います。しかし、この「ジョジョ・ラビット」は、そうしたシニカルな手法をとらず、主人公に10歳の少年をおいて寓話的なヒューマンドラマに仕上げています。原作があるよう...
ベトナムの活力を感じる映画 こういう映画が作られるということはその国に活力があるということでしょう。予告編をみていましたら「1969年 サイゴン、アオザイ屋の娘ニュイはサイゴンいちのファッションリーダー!」などと始まります。え!? 1969年? ベトナム戦争は…? と、一瞬声を失くしてしまうような語りに、これはいったいどういうこと? 是非とも見に行かなくてはとい...
笑いと差別は紙一重…かな? 一作目の「ゾンビランド」の成功の後、かなり早い段階から続編の話が出ていたように思いますが、やっと「ゾンビランド ダブルタップ」登場です。ゾンビ好きというわけではありませんが、こういうただひたすら理屈を超えた展開のおバカ映画は大好きです(笑)。言わずもがなですが、何かを語るような映画ではありませんので、以下、感想程度です。ダブルタップは...
この閉ざされた世界から抜け出す先もまた国境に閉ざされた町 「象は静かに座っている」上映時間234分ですからほぼ4時間の映画です。監督のフー・ボーさんは、この映画がベルリン国際映画祭のフォーラム部門でプレミア上映された昨年2018年2月16日から遡ることおよそ4ヶ月前の2017年10月12日に自ら命を断っています。その理由をウィキペディアは「his death w...
マッサージパーラーの受付嬢は何の夢を見たか? 何、このやる気(売る気)のない邦題!? と逆に興味を持った映画です。え? じゃあ成功してるじゃない(笑)。「The Receptionist」引用した画像の真ん中の女性がその「受付」の仕事をしているということで、何の店かと言いますと、マッサージパーラー、その実、性風俗店ということです。ザ・レセプショニスト /...
カトリーヌ・ドヌーブとジュリエット・ビノシュであればこその映画 是枝裕和監督のパルムドール受賞後第一作です。引用の画像を見てのとおり、俳優はカトリーヌ・ドヌーブ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークという国際的スター、そして、IMDbを見た限りおもだったスタッフに日本人は入っていないようです。もともと是枝監督は台詞を大切にする監督だと思いますが、さらにこ...
ホアキン・フェニックスの代表作となるか? 多分なる。 今年2019年ベネチア国際映画祭の金獅子賞受賞作品です。とにかく、ホアキン・フェニックスがすごい! につきる映画です。ほぼ一人芝居です。ジョーカー / 監督:トッド・フィリップスこの映画のために24キロ減量したと言われていますが、掛け値なしのその通りで誰だかわからないくらいです。その姿を見せる画...
冷血さは静かに伝搬する 少なくとも完成された映画ではありませんが、それでも傑作を生み出す可能性があるのか、あるいはそもそも力不足なのか、判断に悩むコリー・フィンリー監督、その初(長編)監督作品です。サラブレッド / 監督:コリー・フィンリーコリー・フィンリー監督は、この「サラブレッド」が公開された2017年で28歳ですので、現在30歳くらいだと思いま...
ジョージアの神話的、かつ寓話的な美しい映画 とにかく美しく、神話的で、それでいてといいますか、それだからこそですが、現代文明批判といいますか、環境破壊への批判的メッセージが感じられる映画です。ジョージアのザザ・ハルヴァシ監督の2017年の作品、その年の東京国際で上映されたようです。聖なる泉の少女 / 監督:ザザ・ハルヴァシこの映画の主演、ナーメを演じ...
ヴィム・ヴェンダース監督の最新作はラブサスペンスか? ヴィム・ヴェンダース監督、73歳、まだまだ精力的です。1,2年に1本の割合で撮っている印象です。前作の「アランフェスの麗しき日々」では言葉の洪水でついていくのが大変でしたが、この「世界の崖ての鼓動」は、しばらく前から流れていた予告編を見て、ん? ヴィム・ヴェンダース監督? と、何となくベタな恋愛ものの印象でちょ...
「僕を産んだ罪」で両親を訴える子どもの絶望 ゼインという、実名と同じ役名の12,3歳の少年を演じているゼイン・アル=ラフィーアくん、下の画像の少年ですが、彼の演技があっての映画です。俳優ではなく、シリア難民で、現在は家族とともにノルウェイで暮らしているそうです。存在のない子供たち / 監督:ナディーン・ラバキーこの映画で描かれる貧困や児童婚はあってはな...
ロバート・レッドフォード、82歳、最後の出演作 ロバート・レッドフォードさん、82歳、俳優として最後の映画になるようです。さらば愛しきアウトロー / 監督:デヴィッド・ロウリー「明日に向って撃て!」からちょうど50年、下積みの時代が10年ほどあるようですのでおよそ60年、ハリウッドの第一線で俳優として活躍し、さらに監督、製作という立場でも一定の評価を受け...
新聞記者というより内閣情報調査室の官僚たちという映画 政治ネタを映画にするのは難しいですね。圧力があるからということではなく、リアリティを求めれば地味だと言われたり、エンターテイメントに走ればわかっていないと言われたり、まあ、映画の題材には向いていない、特に日本ではということだと思います。新聞記者 / 監督:藤井道人この映画も、これだけ現実を模して、...
実はレオは”さよなら”しておらず、退屈と失望の真っ只中 「グザヴィエ・ドランにつづく新鋭×東京ジェムストーン賞受賞の未来を担う女優」の宣伝コピーにつられたとしても、裏切られることも後悔することもありません。新鋭とはセバスチャン・ピロット監督、未来を担う女優とはカレル・トレンブレイさんです。さよなら、退屈なレオニー / 監督:セバスチャン・ピロットただ...
ミキ・デザキ監督のビデオ論文のような映画 こうした映画にネタバレというものがあるとは思いませんが、以下、この映画の結論について書いていますので、気になる方はご注意ください。主戦場 / 監督:ミキ・テザキこれは映画というよりもビデオ論文みたいなものです。だからダメという意味ではなく、ミキ・デザキ監督の論文を読んだ(映像作品で見た)という感覚の映画という...