ケナは韓国が嫌いで

少なくとも31歳以上のはずのケナは何ビザでニュージーランドへ入るの?…

タイトルが目を引いた映画で、メインビジュアルからしてもケナが韓国社会のなにかに耐えられなくて脱出するんだろうなあとは想像がつきます。が、さて…。

ケナは韓国が嫌いで / 監督:チャン・ゴンジェ

ワーホリは基本1年、3年は無理だと思うけど…

まったくもってそのとおりの映画で28歳ケナがニュージーランドへ脱出します。

ワーホリって25歳までじゃなかったっけ? と思いましたら30歳までなんですね。あれ? 画像のケナは28歳のケナではなく、一度ニュージーランドへ行き、少なくとも3年以上経って一旦韓国へ戻り、再びどこか、多分ニュージーランドへ向かう姿なんですが、今度は何ビザで入るんでしょう。それにワーホリって1年間じゃないですかね。

まあそんなことより、この映画、編集がムチャクチャで、基本の時間軸としてはケナがニュージーランドへ旅立つところから3年(かどうかはわからないが他に年数がない…)以上ということにはなってはいるのですが、その3年間のシーンと過去のシーンがぐちゃぐちゃに入り乱れているんです。

これ、意図してやっているのであればその意図を知りたいとは思いますが、仮に何らかの意図があるとしてもそれは映画からは伝わってきませんので、結局のところ映画制作レベルが一般公開できるレベルに達していないということだと思います。

また、そうした基本的な映画制作の問題だけではなく、映画の内容にしても、確かにケナが自分の置かれている(あるいは自ら置いている…)状態にうんざりしているそのことは俳優がそうした演技をしていますのでそうなんだろうなあとはわかりますが、じゃあ一体 何にうんざりしているのと考えても映画はそれに答えていません。

ニュージーランドの生活シーンにしても同じことで、そもそもケナの生活環境や友人関係もうまく描かれておらず、結果としてケナが何を見て、何を得たかもよくわからないままに3年間過ぎましたみたいな感じです。

じゃあ約100分間、何を見せられていたの?

一般公開できるレベル?…

わかりません(笑)。

ケナ(コ・アソン)がニュージーランドへ旅立つ空港シーンから始まります。両親と妹(の彼もいたかな…)が見送りに来ています。しばらくケナ本人のナレーションで韓国を脱出する理由が語られます。

で、すでに書いたようにニュージーランドでの生活と脱出以前のあれこれが脈絡なく、それとわかるようにでもなく、いやなんとなくわかるんですけどね、でもわかるからいいだろうってことでは映画じゃないですので…、まあいいか(笑)。

過去のシーンでは、まず家族のシーンが何シーンかあり、でもケナがうんざりするようなシーンなどまったくなく、家族は仲良さそうですし、貧しそうではあってもケナ本人が言っているように卑屈になったり隠そうとしているわけではありません。

通勤に2時間かかると言っていました。それはちょっと嫌ですが、それは自立して近いところに住めばいいわけで、実際母親に食費を出しなさいと言われているわけですからどうこう言えることではありません。

職場のシーンもあり、上司との議論ではケナの正論に対して上司が現実はそうはいかないと諭そうとすることに対して、じゃあ辞めますと脅していました。次のシーンで付き合っている男に上司は部下に辞められれば人事評価が下がるからなんて言っていますので脅しみたいなものでしょう。

その付き合っている男の家族は裕福な家らしく、会食シーンはあるもののうんざりするほどの金持ちのひけらかしなどあるわけでもなく、その男にしてもごく一般的な真面目な男です。

結局、映画にはケナがうんざりするようなことは描かれていないということです。

おそらく韓国の現実社会にはいろいろあるんでしょうが、それがあるものとしてドラマを作ってもダメということで、この描き方なら、過去のシーンなど入れずにナレーションで済ませておき、ニュージーランドシーンでケナが生き生きと変化していくところをみせればいいわけです。

がしかし、そのニュージーランドシーンにしてもよくわからないシーンが多いんです。いろんな人物が出てくるんですがもう少していねいに描かないとダメですし、唐突に地震が起きたとニュース映像を入れて、なんのフォローもなく、次のカットが韓国に戻ったケナのシーンというのはさすがにどうよと言いたくなります。

で、韓国に戻ったケナは誰かの葬儀(かどうかよくわからない…)に出て、相変わらず憂鬱そうなまま再びニュージーランドへ旅立っていきました。

ケナは少なくとも31歳になっているはずです。就労ビザを取れたんですかね。そんなことばかりが気になる映画でした。

そうそう、ニュージーランドにも冬はありますよ(笑)。南の国ってねえ…。