たからくんは、演技(非日常)と非演技(日常)のボーダーライン上にいるようだ 予告編の冒頭に引用されている谷川俊太郎さんのコメント人間ももともとはけものと同じ生きものだった。言葉がないと、意味の仮面がはがれて、いのちのナマの姿が見えてくる。が、この映画のある一面をとらえていると思います。それは、逆にいえば、この映画が、大人になることとは世界を言葉によって意味...
単なる復讐物語にしかみえない。 ファティ・アキン監督の映画は、 「愛より強く」以来、「トラブゾン狂騒曲」というドキュメンタリーをのぞいてすべて見ていますが、本人がトルコ移民二世のドイツ人ということからでしょう、トルコ系としてのアイデンティティに関わる物語がほとんどで、描かれる社会もトルコ系の俳優を使ったトルコ系コミュニティが中心でした。それが前々作の「消えた声が、...
We shall never surrender. 我々は決して降伏しない Never! Never! チャーチルと聞きますと、私は、チャーチル、ルーズベルト、スターリンの3人が座って居並ぶ「ヤルタ会談」の写真がすぐに浮かびます。あれは第二次大戦も末期、1945年の2月、いわゆる戦勝国が戦後処理を話し合った会談ですが、この映画は、イギリスにとってそんな希望的未来な...
キルギス発。言葉を得て文明をもった人類の永遠の矛盾 キルギスの映画です。予告編を見た時に以前なにか見たことが…、と漠然とした記憶が蘇っていたまま調べもせず見に行ったのですが、主演のアクタン・アリム・クバトさんを見て思い出しました。「明りを灯す人」でした。同じく監督、主演の映画です。読み返してみましたら、楽しめる映画だと言いつつも内容についてはそっけないことを書...
トランスジェンダーであるレイの決断ではなく、母親マギーの決断 女の子として育てられたラモーナは4歳の頃から性別に違和感を持ち、自分は男の子であると自認し、名前もレイと名乗っています。そして、16歳にして性別移行を決断しホルモン療法を受けようとします。しかし、未成年ですので親の同意が必要、その顛末を描いた映画です。最近では LGBT という言葉をよく目にしますが、広...
フランス語が理解できることが必須の映画だと思います 公式サイトに「盟友ペーター・ハントケの戯曲を映画化、『ベルリン・天使の詩』以来となる二人の5本目のコラボレーション。」とあるヴィム・ヴェンダース監督の最新作です。最近の作品としては、かなりドラマくさい「誰のせいでもない」がほぼ1年前、そして、オムニバスに参加した「もしも建物が話せたら」、3Dの「Pina/ピナ・バ...
レダ・カテブの演奏シーンはすごい! 2018年です。昨年何本の映画を見たか数えてみましたらおよそ120本でした。127記事書いていますがDVDも何作品か入っていますからそれくらいだろうと思います。そのうち「おすすめ映画」にピックアップしたのはわずかに9本でした。「永遠のジャンゴ」ジャズ・ギタリスト ジャンゴ・ラインハルトさんの実話ベースの映画とのことです。ヴァイ...
なかなか一筋縄ではいかないけれど、見終われば何かが見えるかも フランス文学の古典は結構読みましたが、モーパッサンの「女の一生」を読んだかどうかは忘れてしまっています。読んでいれば、映画が思い出させてくれるでしょう。ステファヌ・ブリゼ監督の映画は、「母の身終い」と「ティエリー・トグルドーの憂鬱」を見ているだけですが、それらの印象から思うに、こうした古典を映画化する...
ホドロフスキー監督の自伝であり「リアリティのダンス」の続編 「リアリティのダンス」の続編と言っていいと思います。ホドロフスキー監督の自伝的映画で、「リアリティのダンス」は少年期の話でしたが、この「エンドレス・ポエトリー」は、その後の青年期の話になります。「リアリティのダンス」に比べれば、かなり具象的で、家族や社会との関連が明確な分、わかりやすくなっています。カ...
ボスニアの炭鉱、地下300メートルで働く坑夫たち 「鉱」あらがね、って読むんですね。ボスニア・ヘルツェゴビナの炭鉱地中深く300メートルの坑道にカメラを持ち込んで撮ったドキュメンタリーです。2015年の山形国際ドキュメンタリー映画祭でアジア千波万波部門特別賞を受賞しているそうです。監督の小田香さん、まだ30歳ですか。「2013年、映画監督のタル・ベーラが陣頭指揮...
ボクシングシーンがすごい! 「前篇」を見て面白かったので「後篇」を見ようと上映スケジュールを見てみましたら、何と朝一と夜の2回しかなく、さらに朝は 8:45 から!?とやや怒りながらも、5時起きで公開初日に見てきました。5時起き? って、なにせ出かける前の準備に3時間かかりますので(笑)。何やってんの?と言われそうですが、別に普通に朝ごはん作って、食べて、顔洗った...
60年代ぽさがうまく現代に融合し、適度にリアル、適度に嘘っぽい。 寺山修司を映画化? というよりも、1960年代を映画化?といったほうが正確なんですが、今の時代、最も映画化するのが難しいのではないかと思う時代をやりますか?と、思ったのですが、面白かったです(笑)。時代を2021年に置き換えているのですが、あまり違和感がないのは、新宿という街の持っている空気な...
映画的ドラマ(いわゆるネタ)を排した美しき動きの映画 んー、唸っちゃうような映画でした。悪い意味ではありません。こんな映画撮れるのはおそらくトラン・アン・ユン監督くらいでしょうという意味です。なんて言うんですかね、んー、と唸ってばっかりですが(笑)、まあ、動く静物画とでも言いますか、完全に映画的ドラマを排した美しき動きのある映画です。「青いパパイヤの香り」と「...
ぶつ切れで映画にならず エミール・クストリッツァ監督の新作です。「アンダーグラウンド」は、その濃さ(笑)や斬新さにおいてかなりインパクトがありましたが、なぜかそれ以外の映画は見ていないような記憶で、自分自身ちょっと不思議な感じです。エミール・クストリッツァ監督は、ミュージシャンとしても、俳優としても活躍しているとのこと、この映画では主役で出演しています。さらに相...
展開は1作目とそっくり、違いは創造主まで持ち出して行き詰まっていること 最近はほとんど SFを見なくなっていますが、突然「エイリアン」を見てみようと思いたち、あらためて思い返してみますと1作目は1979年公開だったんですね。およそ 40年前ですよ!それが未だにシリーズものとして作られ続けているというのは、単に時代性だけではなく何か人間存在に関わる本質的なものを持...
(ネタバレしても問題ない)のでよく知って見るべし。シンプルなのに情感豊か。 カテル・キレヴェレ監督、予告編映像ではこの映画が日本初公開と言っていますが、今回配給がついたという意味でしょう。前作の「スザンヌ」がフランス映画祭で上映され、その後単館系で企画上映されています。「スザンヌ/カテル・キレヴェレ監督」フランス映画ウィークこの「あさがくるまえに」は、随分前に予...
(記憶曖昧なネタバレ)スウェーデン産の不思議な母子ものファンタジー ちょっと変わった印象のスウェーデン映画です。物語は、下の引用を読みますと、肉体的ハンディを跳ね返す感動ものや母子ものを思わせますが、確かにそういうところがあるにしても、そのドラマをファンタジーっぽく描いている映画です。リカルドが巨人になった自分を夢想するシーンの印象からというだけではなく、映画の...
綾瀬はるかさんのうまさが光る映画ですかね 原作は、 吉田秋生さんって方の漫画なんですね。そんなことも知らずに、そういえばカンヌのコンペティションに出品されたなあと思い借りてみました。パルムドールが「ディーパンの闘い」の年で、「ティエリー・トグルドーの憂鬱」「五日物語 3つの王国と3人の女」「キャロル」「黒衣の刺客」「山河ノスタルジア」「モン・ロワ 愛を巡るそれぞ...
イザベル・ユペール自身がポスト・フェミニズムと語る、俳優が監督を越えた映画。 自由な女性の映画です。おそらくそれは、ミシェルを演じたのがイザベル・ユペールであったがためにそうなったのであり、あるいは、ポール・バーホーベン(ポール・ヴァーホーベン)監督にとっては(うれしい?)誤算であったのかも知れません。「犯人よりも危険なのは、彼女だった」というコピー、そうし...
人生相談の母親の台詞が本音なら傑作、でもおおむね駄作 マルコ・ベロッキオ監督、77歳、一体どうしてしまったの!?というくらいの駄作です。ここリード部分に結論を書くことはあまりないのですが、この映画、語ることがほとんどありません。と、公式サイトを見てみましたら、原作があるんですね。それも大ベストセラーとあります。それが本当なら、マルコ・ベロッキオ監督が原作を理解し...