星の教室

過剰さもなくシンプルで見やすいヒューマンドラマ

昨日、当サイトに上げたばかりの中川龍太郎監督「走れ、絶望に追いつかれない速さで」の中にも書きました「星の教室」を早速観てきました。

星の教室 / 監督:中川龍太郎

ネタバレあらすじ

夜間中学校

中川龍太郎監督ということで観ることを決めており、映画.com の解説も頭の数行を読んだだけでポチッとしていますので、内容もよく知らずに観て、ああこういう話だったのねと思った映画です。

中学時代のいじめにより不登校になってしまい、そのまま20歳になった女性が迷いや不安を抱えながらも夜間中学に入学し、年齢や国籍も違う仲間と出会い、少しずつ成長して生きる自信を取り戻していくという極めてオーソドックスなヒューマンドラマです。

多分、中川龍太郎監督がオファーを受けたということだと思います。過剰なところや泣かせようとするところもなくとても見やすい映画でした。

夜間高校というのはよく耳にしますが夜間中学というものもあるんですね。ググってみましたら Gemini が文部科学省のサイトを勧めていましたのでクリックしてみました。いきなりこの映画のキービジュアルがどーんと出てきます。映画のエンドロールには文部科学省選定と出てはいましたがタイアップだったんですね。

その文部科学省のサイトには、現在夜間中学は全国に69校あり、「文部科学省では、夜間中学が少なくとも各都道府県・指定都市に1校は設置されるよう、その設置を促進しています(夜間中学の設置促進・充実について)」との記載があります。

さやか、中学で不登校となる

中学で不登校になってしまった潤間さやか(桜田ひより)と両親(仙道敦子、萩原聖人)の関係を縦軸に、そこに夜間中学で出会う人々の様々なエピソードが絡んでくるというつくりになっています。

中学生のさやかが部屋から出てこず両親がどうしていいか分からず困っています。学校へ行かせようとするも扉を締めて閉じこもってしまいます。

6、7年後の2001年です。20歳になったさやかはレンタルビデオ店でアルバイトをしています。店長(原田泰造)が客のひとりと山田洋次監督の「学校」の話で盛り上がっています。

店長が夜間中学の話で面白いんだよと教えてくれ、さらに夜間中学は近くの河堀中学校にもあるんだよと言っています。さやかは中学中退という引け目からかアルバイトも点々としており、今も店長から、本部から履歴書を出すように言われていてと気を使いながらも言われています。

その日から河堀中学校が気になるさやかです。ある日のこと、校庭を覗いていたさやかが帰宅する中学生から身を隠そうとして慌てた際に夜間に通う蕗子(浅野温子)にぶつかってしまいます。蕗子はアイタタと言い、肩をかしてと有無を言わせずさやかを校舎に連れていき江口先生(真木よう子)に会わせます。さやかがよく学校内を覗いていたことを見ており、決断できない気持ちを察してくれたのです。

ということでさやかの夜間中学での生活が始まります。生徒は多彩です。入学を助けてくれた蕗子さんは中国残留孤児(公式サイトからで映画ではそうは言っていなかったと思う…)、一緒に中学2年に編入されたベトナム出身のスアン(ナターシャ)、グレて暴力沙汰のすえ今は料亭で修業中の健児(小林虎之介)、韓国料理店を営む(これも映画ではわからない…)正子(中尾ミエ)、戦後の混乱の中で十分な教育を受けられなかった遠見(山本學)らです。

さやか、夜間中学で学ぶ

映画は小さなことの積み重ねでつくられていますのであまり記憶していませんがとても自然にさやかの変化が描かれています。

やや大きめのエピソードとしては、長らく書けていない漫画家の用瀬裕(小泉孝太郎)が次作のためにリサーチをしたいと夜間中学にやってきます。脇ネタとしてはレンタルビデオ店の店長がこの漫画家の大ファンであることなども絡めながら、夜間中学では恒例の昼間中学との交流会を開催するということになり、それぞれ作文を発表することになります。さやかにはいじめられていた記憶がフラッシュバックし(映像もあり…)中学生の前での発表どころではありません。それを漫画家の用瀬裕が自分の体験なども話してさやかの後押しをします。

さやかの作文の発表は触りだけの描写でした。原作にないのか、あえて泣かせどころを避けたのかわかりませんが、もう少し入れたほうがよかったとは思います。

時代設定を2001年としていることにも意味があります。両親への気持ちも変化してきたさやかを遠見(山本學)が緩んだ靴紐は締め直せばいいとのたとえ話で諭します。学校行事の遠足のことを両親に告げようと口を開いたさやかに、テレビを見ていた両親はこれを見てとアメリカ同時多発テロ事件のニュースを指さします。さやかは両親を遠足に誘うタイミングを逃してしまいます。

この展開、原作(髙田郁)のものなかのか、脚本(松井香奈、角川春樹)のものなのか、あるいは中川龍太郎監督のものなのか、ちょっとばかり印象に残った展開です。

その911については、戦争体験のない若い健児(小林虎之助)の無神経な発言に対して、遠見(山本學)が怒りだすシーンがあり、それに呼応するように戦争体験を持つ正子(中尾ミエ)などが当時の苦しい思いを語るシーンがあります。

後日、教師のひとりが下着泥棒で逮捕されて教師も生徒も皆動揺するシーンや、ある日遠見(山本學)が亡くなったとの知らせが入るシーンなどがあり、そしてさやかが両親に知らせようとして知らせられなかった動物園への遠足の日になります。

結局、両親に一緒に来てと伝えられなかったさやかですが、レンタルビデオ店の店長が両親に伝えてくれており、サプライズでさやかの前に両親が現れます。母親はさやかが好きだという五目ちらしを作ってきています。涙を流しながらうまいというさやかです。

ひとつ重要なことを忘れていました。この展開になる前に、両親に対してさやかが爆発するシーンがありました。さやかは母親に、お母さんはいつも私のためだと言って私のことを決めつけるけれどそれはみんな自分のためだ、お父さんは仕事が忙しいと言いいつも逃げていたと涙を流しながら本音をぶつけます。

これがあったからこの結末ということです。忘れちゃいけないですね(笑)。

感想:さやか、夜間中学の教師となる

夜間中学の卒業の日、さやかは自分に夢ができた、大学まで進み、夜間中学の教師になると言います。江口先生(真木よう子)が涙を流しています。

そして、10年後くらいでしょうか、さやかが夜間中学の教壇に立つ姿で終わります。黒板には「生きることは学ぶこと、一番大きな学びは人との出会い」(違っているかも…)と書かれています。

最初に書きましたように、過剰さもなく、泣かせようとすることのないとても見やすい映画でした。