ロングウォーク

サバイバル設定を取り除けば青年版「スタンド・バイ・ミー」みたいなもの

ひとりしか生き残れないデスレースなのにむちゃくちゃ熱い友情物語でした。

ロングウォーク / 監督:フランシス・ローレンス

ネタバレあらすじ

マジ、死のウォーキングだった

このプロットがすごいですね。

ルール:時速4.8キロをキープすること/速度が下回ると警告開始/3つの警告で即死/コースから逃げても即死/最後の1人になるまで、歩き続けること(公式サイト)

でも、人は助け合えるのだとホッとする映画でした(笑)。

スティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で発表した、事実上の長編初執筆作「死のロングウォーク」(公式サイト)

の映画化だそうです。

初っ端でびっくりしました。「即死」って本当に撃ち殺されることでした。ウォーキングの参加者は武装した兵士たちが乗る装甲車で囲まれており、ルール違反をしますといきなり小銃で頭を撃ち抜かれます。

という死を覚悟のウォーキングシーンが約100分続きます。

サバイバルなき死の友情もの

これで100分もつのかなと思いますが、結構最後まで見られるんです。

たぶん、映画のポイントが「恐怖」ではなく「友情」だからだと思います。

ウォーキングの最後には400kmくらいになっていたと思いますが、休むことも出来ませんし、おしっこもう◯こも歩きながらします。水や食料は求めれば支給されます。足が釣っても靴紐が緩んでも止まれば警告を受けます。警告はその後1時間ルールを守れば1警告解消されます。

並の人間であれば死を目前にすれば他人を蹴落としてでも生きようとします。いや、そんな経験はありませんので、なんとなく見聞きしたことや映画を見たり本を読んだりしてきっとそうだろうと思っているだけで、本当のところそうした時自分がどうするだろうなんてことはわかりません。それが逆に自分の身勝手さが出るんじゃなかろうかと不安にもなるのですが、とにかく、この映画では他人を蹴落として勝ち残ろうとするやつはひとりもいません。メインで登場する数人はほぼ皆心優しき人物で助け合って前へ進もうとします。

映画はこれを見せたいということだと思います。

この映画からサバイバル設定を取り除けば、青年版「スタンド・バイ・ミー」みたいなものということです。

This is for Ray.

こういう設定であれば結末はほぼ予想がつきます。どっちがそうするかだけです。

どっちのというひとりはレイ(クーパー・ホフマン)です。この映画の設定は近未来らしく、知性が犯罪となる世界であり、レイの父親はレイに様々な知識を教えたために権力の象徴的存在である少佐(マーク・ハミル)にレイの目の前で射殺されています。

このレースの勝者には莫大な賞金と願いがひとつ叶えられる権利が与えられます。レイの願いは少佐に復讐することだともうひとりのピーターに打ち明けます。

ピーター(デヴィッド・ジョンソン)は、レイが脱落しそうになれば助けますし、聖人みたいなやつです。自分は親を知らない孤児であり、賞金で世の中の孤児たちを助けたい(違ったかな…)と言います。

終盤、どっちを残すんだろうなあと考えながら観る映画でもあります。

レイが残って少佐を殺そうとするが逆に撃ち殺されて終わる悲劇パターンかなと考えていましたら、先にピーターが犠牲になろうとしますのでそこで結末はわかります。

止まろうとするピーターをレイが共に進もうと言って肩を抱いて歩き、その後一人で立ち止まり射殺されます。振り返ったピーターは慟哭します。少佐がただ一人の勝者であるピーターに望みは何だと尋ねますとピーターは小銃だと言い、近くにいた兵士の小銃を取り、少佐に向けて発砲し、

This is for Ray.

と叫びます。

この映画が友情ものであることの証しですね。

感想、考察:原作のラストはレイが残るらしい

もうすべて書いてしまいました。

サバイバルものと思って観ますとそんな馬鹿なとなりますが、友情ものと思って観ればなるほどと納得のいく映画です。

この映画に合わせて翻訳版が出版されたようです。

英語版は1979年に発行されています。ただ執筆は1966年から1967年にかけての大学1年のときとのことです。

全体主義体制のアメリカを舞台にしたディストピアホラー小説と紹介されています。原作では100人の若者が時速4マイル(6.4km)で歩くとあります。小走りですね。

え? 原作の勝者はレイですね。

This leaves Ray the uncomprehending winner. He ignores the Major and keeps following the dark figure (whom he believes to be another walker), declaring that there is “still so far to walk” and, hoping to catch up, even finds the strength to run.(ウィキペディア
こうしてレイは何も理解できないまま勝者となる。彼は少佐を無視して暗い人影を追い続け(別のウォーカーだと思い込んでいる)、「まだまだ先は長い」と言い、必死で人影に追いつこうとし、ついには走る力さえ見出す。

原作はディストピアですね。