イタリアン・カンフー・アクション・アモーレ映画。
「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」「フリークスアウト」と観てきているガブリエーレ・マイネッティ監督の長編三作目ですので観ないわけにはいきません(笑)。

ネタバレあらすじ
一作目の「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」は日本アニメからの心優しきヒーローもの、二作目の「フリークスアウト」は異形のサーカス団員たちのナチハンターもの、そしてこの「シャオ・メイ ローマ大決戦」はドラゴンレディのカンフーアクションものとやっていることはバラバラに見えてもテイストはどこか一貫しているガブリエーレ・マイネッティ監督です。映画の出来自体にも、長すぎるとか、この手の映画にしては突き抜けていないなどありますが、それでもやっぱり見逃してはいけないと思ってしまいます。
おそらくそれは映画が持つ(べき?…)根源的な面白さを追い求めている感じがするからだと思います。もっともそれを逆説的に言えばベタさとの戦いでもあるわけで、実際やや危なっかしいところも見受けらる映画です(ゴメン…)。
いきなりのカンフーアクションで圧倒し…
1995年、一人っ子政策下の中国です。ユンとメイの姉妹が父親からカンフーを教わっています。妹メイの動きはキレもよく才能がありそうです。役人(郵便屋?…)がやってきます。父親は慌ててメイを隠し部屋に押し込みます。メイは嫌がる素振りを見せています(これ、ちょっとしたオチ的なものへの振り…)。
シーン変わり、どこだかわかんない地下要塞のようなところに車が到着し、荷台から中国人の女たちが降ろされます。売られてきたのです。その中に30代となったメイ(リウ・ヤーシー)がいます。メイは姉のユンを探し求めています。
そして、地下要塞でのカンフーアクション、用心棒たち(ここではなんだかよくわかんないんだけどね…)が次々にメイの前に立ちはだかります。メイは見事なカンフーで圧勝です。

いきなりの見せ場です(笑)。
15分くらいはこの勢いが続いていたんじゃないでしょうか。そこがどこなのかも、その女性がメイであることも何も言っていなかったと思います。リウ・ヤーシーさんのカンフーアクションで一気に引き込もうという作戦なんでしょう。成功していると思います。アクションもいいですし映像処理もうまいです。
メイは地下要塞から一体何階上がるのかというくらいの灯台のような階段を駆け上ります(笑)。するとそこは売春宿、結局ユンは見つかりませんが老婆からユンの居場所を教わります。さらに進みますとレストランの厨房、鍋の湯やら調理器具を使ってのひとしきりのカンフーアクションがあり、さらに進みますとそこは中華レストランであり、オーナーと思しき男ワンと火花バチバチですれ違います。
そして、メイが一歩外に出ますと、そこはローマ エスクイリーノ地区の中華街、メイが出てきた店は「La città proibita(紫禁城)」の看板をあげたチャイニーズレストランで、オーナーのワンは裏では賭博や売春で稼ぐチャイニーズマフィアなのです。なぜユンが売春婦となったのかは最後にメイの口から明かされます。
という、いきなりクライマックスがやってきたかの勢いで映画は始まります。
これが続けばいいんだけど…。
しかし、その実、映画はアモーレ展開で…
メイが向かった先はトラットリア「Da Alfredo」です。その店のオーナーのアルフレードがユンのことを知っているはずだと老婆が教えてくれたのです。その道中、映画は、え、ここ、イタリア? といった街の風景を見せてくれます。

もちろんこれは映画の作り込みですが、ローマのエスクイリーノ地区というのは移民が多く暮らす地域らしく、特に華僑は「イタリアで最大の華僑コミュニティー(20世紀末時点で約2万人)を形成している(ウィキペディア)」とのことです。ただ、現在はトスカーナのプラートが中国系ファストファッションの集積地になり中国系移民が急増しているともありますので最大というわけではないかも知れません。
上にワンのことをチャイニーズマフィアと書きましたが、この映画の背景には街の裏社会を誰が仕切るかという争いも絡んでおり、メイが探しているアルフレードとこの後登場するアンニバレが地元イタリアンマフィア(というほど組織的ではない…)がワンの対抗馬となっています。どれほど意識されているかはわかりませんが、昔ながらの地道なイタリアンマフィアと圧倒的な資金力とネットワークを持つチャイニーズマフィアという構図です。
ただ、それを直接的に描かずに男女間のアモーレで情緒的に描くところは実にイタリア的で(笑)、ガブリエーレ・マイネッティ監督もその系譜を継いでいるということになります。
メイは翻訳アプリを使って店のシェフ マルチェロ(エンリコ・ボレッロ)にアルフレードの行き先を尋ねるも、埒が明かないとみるやマルチェロをボコボコ(まではいっていないけど…)にします。結局、マルチェロはアルフレードの息子であり、父親は中国人の売春婦と駆け落ちしたと知らされます。もちろんユンのことです。
アンニバレは移民たちを高利貸しなどで搾取しているイタリアンマフィアです。マルチェロからメイのことを聞いたアンニバレはワンの手下に違いないと「紫禁城」に乗り込みます。ここでは何も起きませんが街の支配権を争うアンニバレとワンです。
この映画はカンフーアクション映画というだけではなくアモーレ映画でもあるというのは、マルチェロの母親ロレーナをきちんと人格ある人物として登場させていることです。アメリカ映画にありがちな刺し身のつま的な扱いではないということです。ロレーナは嘆きのカンツォーネを流し、悶え苦しみながら(笑)、ユンと駆け落ちした夫の衣服をクロゼットから放り出し、バッグに詰め込み、街に出て露天商に売ってしまってと言い放つのです。
こういう描写がたくさんありますので長いと感じることもあるんだろうと思います。実際長いんですけどね(笑)。
先に書いておきますと、実はアンニバレはロレーナに恋をしているのです。映画がはっきり言っているわけではありませんが、おそらくそれは若い頃からであり、アンニバレはアルフレードとも若い頃からの付き合いと言っていますのでロレーナへの愛は密かに心の奥にしまい込んできたものなんだろうと思います。
イタリア映画ですね(笑)。
ということで主要な人物が揃いました。かなり詳しく書いてきましたのでこの映画の魅力をわかっていただけたかと思います(笑)。
「ローマの休日」もどき展開もあり…
ここまでまだ40分くらいです。この調子で書いていきますとそれこそ長い!ということになりかねませんので後は簡潔にいきます。
中盤の盛り上げ、再びカンフーアクションシーンです。アンニバレの手下とメイの格闘シーンになります。もちろん大男二人でも歯が立ちません。
そして、どういう経緯だったか忘れましたが、メイはワンの手下からユンとアルフレードを地中に埋めたことを聞き出し、マルチェロとともに掘り返し、埋められたふたりを発見します。あっけない展開ですが、ふたりの悲しみのシーンが結構長くあります。メイはユンを浜辺のボートに乗せて火をつけて火葬しておくります。マルチェロはアンニバレを呼び、思い出を語りながら土葬しておくります。埋葬の仕方の違いを見せているんでしょう。
アンニバレはマルチェロにアルフレードとユンは愛し合っていたと話し、ふたりが暮らしていたアパートメントに連れていきます。そこには自分と父の写真と幼いメイとユンの写真が飾られています。
怒りの収まらないマルチェロは包丁を握り「紫禁城」に乗り込みます。あっけなく追い返されます。メイもまた、ユンが暮らしていた売春宿の部屋に潜り込み、ユンの衣装を着て、「紫禁城」のワンを狙います。
真っ赤なロングドレスでのカンフーアクションシーンです。ドレスがふわーと舞ったりするところはきれいでした。


さすがスタントウーマンのリウ・ヤーシーさんです。
しかし、ここではさすがのメイもボコボコにやられ、かろうじてその場から逃げ出します。そして、路上に倒れているところを巡り巡ってマルチェロに助け出され、ユンとアルフレードのアパートメントに匿われます。
ここからしばらくはメイとマルチェロのラブストーリーとなり(笑)、なんと!「ローマの休日」シーンとなってしまいます。あからさまですのでどういう意図かはよくわかりません。
ここでメイはなぜユンがイタリアにやってきたかをマルチェロに話します。閉じ込められるのはいつも自分であり、どこにも行けないのはユンのせいだとユンを恨んでいた、時が経ち、罰金を払えば戸籍を買うことができるようになり、ユンは自責の念からお金を稼ぐため身売りをしてイタリアにやってきたということです。
ところで、このパートにマルチェロがメイのために麺料理を作るシーンがあるのですが、メイが思いっきり音を立ててすするところが強調されていました。悪意があるということではないとは思いますがどういう意図なんでしょう。
マルチェロにも奇妙なシーンがありました。自宅のベッドで寝返りをうち、横にいた女性の頬にキスをしますと、なんと!母親です。当然びっくりとはなりますが、そのまま何ということはなくふたりで話し込んだりします。わざわざ入れている感じがしますのでなにか意図があるんでしょう。
話を戻し、メイとワンの最終決戦です。書いていませんがワンの息子はラッパーです。ワンが一人でライブ会場にいるところにメイがやってきます。そして、ワンが逃げ込んだ巨大な倉庫での結構長いカンフーの格闘戦となります。
この戦いはメイの勝利で終わります。が、しかし、この映画、ここからがガブリエーレ・マイネッティ監督らしいところなんです。
イタリア映画らしさに着地する
ワンは死ぬ間際にユンとアルフレードの死の真相を話します。それがシーンとして流れます。まずはひとつ目、「紫禁城」です。すでにアルフレードが血を流して倒れています。ユンが泣き崩れています。ワンが静かにユンに近寄り、後ろ手に抜いたナイフでユンを刺します。ユンはアルフレードに重なるように崩れ落ちていきます。
そして映画は現実に戻り、メイを愛してしまったマルチェロの虚ろな日常が描かれ(笑)、二人は再会します。
メイがマルチェロに真相を話したのでしょう、ユンとアルフレードの死の真相のふたつ目のシーンが流れます。ひとつ目の映像の前段です。同じく「紫禁城」です。アルフレードは愛するユンを身請けするためにトラットリア「Da Alfredo」をワンに売る契約書にサインをしようとしています。そこにアンニバレがやってきます。アンニバレは、これまで二人で築いてきた友情や自分たちの街をこの女のために捨てるのかとアルフレードに拳銃を突きつけ強く強く咎めます。しかし、アルフレードはユンを選び、契約書にサインしようとします。アンニバルは引き金を引きます。倒れたアルフレードにユンが泣き叫びながらすがりついています。
事の真相をメイから聞いたマルチェロは「Da Alfredo」に向かいます。その頃「Da Alfredo」ではアンニバルがロレーナに思いを告げようとしています。マルチェロが遠回しに真相を話しますとアンニバルはその場から逃げだします。後を追うマルチェロ、責めるマルチェロ、ひとしきり思いを語ったアンニバルは拳銃を抜き自らの胸を撃ち抜きます。崩れ落ちそうになるアンニバルを抱きしめるマルチェロ、駆けつけたメイとロレーナはその二人を見つめています。
ああ、イタリア映画…(笑)。
数年後の中国です。メイが子どもたちにカンフーを教えています。教え終わり、子どもたちが去っていきます。二人の子どもが残っています。家の窓から料理をするマルチェロの姿が見えます。メイとマルチェロ、そして二人の子ども、食卓を囲む家族です。
その頃、ローマのトラットリアの店は「Da Lorena」と名前が変わっています。
感想。考察:映画の原点はイタリア映画にあり、とか…
このラスト30分をどう感じるかでこの映画の評価は別れます。
私はこの30分がなければありきたりのカンフー映画で終わっていると思います。この30分があってこそのイタリア映画であり、ガブリエーレ・マイネッティ監督の映画だということです。
たしかに長いと感じるところもありますが、そんなことはガブリエーレ・マイネッティ監督にはわかっているはずで、それでもこれを入れなければという思いこそがこの映画の持つ意味だと思います。
主演のリウ・ヤーシーさん、スタント・ウーマンということですのでアクションシーンはさすがです。ワンショットシーンが少ないのはちょっと残念ですがアクション監督、カメラワーク、演出含めてトータルで素晴らしいと思います。ただ、メイの人物像の表現としてはちょっとさみしいところもあります。
とにかく、こういう映画は楽しいですね。映画の原点はイタリア映画にあり、とか(笑)。