PIGGY ピギー

見知らぬ男はサラのリビドーとタナトスの発現か…

なかなかお勧めできる映画がない今日この頃ですが、この「PIGGY ピギー」はスペイン映画ですし、ちょっと変わった感じがしておもしろそうです。日本の公式サイトを見ますとあまり売る気がなさそうですので逆に興味がわきます(笑)。

PIGGY ピギー / 監督:カルロタ・ペレダ

青春屠殺場

B級臭ただよう映画ですが、なかなか複雑でおもしろいです。それに単純なリベンジホラーというわけでもないですし、ポスターのビジュアルも下のサンダンス映画祭のもののほうが合っています。

ところで、IMDb を見ていましたら素晴らしいものを見つけました(笑)。この映画が台湾の「台北ゴールデンホース(金馬)映画祭」で上映された時のタイトル、何だと思います?

もう見出しに書いちゃっていますが、「青春屠宰場」です。屠宰は屠殺ということらしいですので「青春屠殺場」です。日本もこのタイトルでいけばもっと売れたように思います。今週公開ですからまだわかりませんけどね。

見知らぬ男(役名 Desconocido)…

スペインの田舎町の話です。かなり太めのサラ(ラウラ・ガラン)が同級生の3人にその体型を「Piggy」と揶揄され、さらに身体的にもいじめられるというのがことの発端です。

で、サラがその仕返しをするのであればリベンジになりますが、仕返しをするのはサラではなく見知らぬ男です。その男をどう理解するかがこの映画の肝であり、そこをもっと浮かび上がらせる映画であれば「キャリー」になれたのにと思う映画です。

サラが3人に「Piggy」と揶揄されるシーンがあり、その後、サラがプールで泳いでいますと、3人が玉網(たも)でサラを溺れさせようとし、さらにサラの着替えが入ったナップサックを持っていってしまいます。サラは泣きながら水着のまま家までの長い道のりを走っていきます。

映画のごまかしだと思いますがプールがむちゃくちゃ遠いです。サラは人っ子ひとりいない田舎道を帰っていきます。そして、その途中、3人が見知らぬ男に車で拉致されていくところに遭遇します。ますます怖くなったサラは必死の思いで家にたどり着きます。

映画のストーリー上の軸は、行方不明になったこの3人がどうなったかということで家族が探し回ったり警察の捜査が始まるということなんですが、ややこしいことに3人の行方不明のまえにプールの監視人が殺されており、そちらが大きく取り上げられてこの2つの出来事がごちゃごちゃになってしまっています。

結局、管理人殺害も3人を拉致した見知らぬ男(役名もDesconocido 見知らぬ人…)の仕業ということだとは思いますが、警察の捜査は始まるもののその後触れられることはありません。

見知らぬ男は、サラがプールで3人にいじめられているところを見ています。なぜ監視人を殺す必要があったかはわかりませんが、シリアルキラー(的)ということでもあるのでしょう。いずれにしてもこの監視人殺害はあまり映画的にも意味がありません。

見知らぬ男は何者か?

映画の主題は、この見知らぬ男が一体何者かということであり、また男とサラはどういう関係かということです。

かなりわかりにくいのですが、取られたナップサックの中にサラのスマホが入っていたのでしょう、サラは父親のスマホを使って自分のスマホを追跡し森に入ります。そこで再び見知らぬ男と出会います。見知らぬ男はサラに愛情を示す素振りを見せ、サラもそれに応えるかのようです。ふたりが今にもキスをしそうなシーンです。

同時進行で3人の親たちが3人を探しに森に入ってきます。親たちは死体を見つけます。これもわかりにくいのですが、プールの監視員の殺害はひとりではなくその恋人も殺されていたらしく、その恋人の死体が発見されたということのようです。

その後、これまたよくわからないのですが(笑)、見知らぬ男がサラの家に忍び込み、つまり見知らぬ男はサラに変質的な愛情を持っているということのようでサラを連れ出しに来たと思われ、その際、サラの父親を暴行(死んではいないと思う…)し、母親も殴り飛ばしてサラを連れ出します。

サラは廃墟となった倉庫に連れて行かれ、そこで3人のうちのふたりが猿ぐつわをされて天井からフックによって吊り下げられていることを発見します。

さて、サラはふたりをどうするか? これがこの映画の主題でしょう。

サラの意識下、リビドーとタナトス

サラはふたりを助けようとしますが、その時見知らぬ男が戻ってきます(よくわからないけど、どこかへ行っていた…)。見知らぬ男はサラにナイフを持たせふたりを殺させようとします。

サラは悪魔の形相でふたりに向かいます。しかし、なにかから覚めたかのように、今度は見知らぬ男に向かい一度二度とナイフを突き立てます。そしてさらに、サラは男の首を噛み切って殺してしまいます。

サラは見知らぬ男のショットガンを手に取り天井から吊り下げられたふたりに銃口を向け引き金を引きます。銃声2発、血まみれサラが去っていきます。床には吊り下げられたロープが切られて落ちたふたりが横たわっています。サラが発射したショットガンはふたりが吊り下げられていたロープを切ったのです。3人のうちのもうひとりはすでに見知らぬ男に殺されていました。

さて、見知らぬ男は一体何者か?

サラのリビドーとタナトスの発現と考えるのがもっとも映画的ではあります。

サラが見知らぬ男からの愛情を感じた後、家に戻り、オナニーするシーンがあります。

なぜサラの意識下は発現したのか?

なぜサラの意識下は発現したのか?

その体型からくる社会的抑圧と母親からの家族的抑圧でしょう。

3人からのいじめはわかりやすいのですが、この映画では母親の存在が際立っています。母親はサラを支配しようとしています。家族的抑圧は見えにくいものです。

ということで「青春屠殺場」思春期から大人になっていくサラという映画でした。

ところで、サラを演じたラウラ・ガランさんは1986年生まれの現在36,7歳の俳優さんです。