この邦題、相当困ったみたいですね。癒やしのスクラップブックとかでいいじゃないの。
いきなり女性の泣きじゃくる顔のドアップで始まり、それが数分(の印象…)続きますのでびっくりしました(笑)。でも演じているバービー・フェレイラさんの印象はとても良く、また相手のボブを演じている共演のジョン・レグイザモさんも良かったです。

ネタバレあらすじ
リリーの人物像と人物背景
ただ、問題なのはそれぞれの人物像がはっきりしてくるまでが長いことと、分かってもそうは見えないことです。ボブ(ジョン・レグイザモ)を除いて、リリー(バービー・フェレイラ)と父親のロバート(フレンチ・スチュワート)のです。
冒頭、リリーが泣きじゃくっていたのは恋人から別れを告げられたからでした。誤送信だったかも知れません。ショートメッセージのやり取りの映像でしたのでうまく読み取れませんでした。誤送信でしたら、その後にリリーの方から別れを告げたことになります。
リリーの仕事もよく分からず(最後まで分からなかった…)、いまウィキペディアを読んで住み込みの介護士だったことを知りました。車椅子生活の女性とのシーンがたくさんあったのはそういうことだったんですね。映画は分かるようなこと言っていましたかね。
リリーの過去は本人がカウンセラーに話す話と父親ロバート(フレンチ・スチュワート)との会話で明らかにされます。母親はヤク中でリリーが5歳(だったか…)の時に失踪したと言っています。
父親はリリーをひとりで育てたと恩を売るような人物です。出会い系アプリでデート相手の女性を漁っており(そんな感じ…)、リリーにそのサポートを頼みに来たりします。後にわかるのですが、ロバートは戸建て住宅型の老人ホームで暮らしており、お金はあまりなく、食事代をリリーに払わせたり、女性とのデートに割引クーポンは使えるかと交渉したりします。
そんなこんなでリリーはやや精神的に不安定なところがある人物に設定されているのだと思います。ただ、そうは見えず、明るく愛嬌がある魅力的なキャラクターであり、バービー・フェレイラさんの印象も良い映画です。
リリー、ボブと出会う
父親と女性とのデートに同席させられたリリーは、他に聞かされていた何人かの女性と間違えて女性を怒らせてしまいます。そのことで父親はその後連絡しても一切応えなくなり、リリーはしょげかえります。
あれは Facebook で父親を探していたんでしょうか、同じ名前のボブ・トレヴィノに友達申請をします。ボブはロバートの愛称です。
ボブ(ジョン・レグイザモ)は建築関係の仕事をしている人物で妻と二人暮らしです。最初の夫婦のシーンではボブの妻への気遣いになにかあるなという演出がされています。これも後にリリーとの Facebook でのやり取りや直接会っての話で明らかにされます。
ボブ夫婦は幼い子どもを難病で亡くしており、それ以来妻は元気を取り戻すことなく、スクラップブッキングで心を癒やす日々です。これにはコンテストがあり毎年優秀な成績を収めているようで、このスクラップブッキングが最後のクライマックスに使われています。
ということで、リリーとボブ、このかなり年齢の離れた二人の自然体で気取らない交流が見せ場の映画ということになります。リリーはボブに父親を見、ボブはリリーに娘を見ているということかと思います。
もともと気遣いのボブという設定でもあり、ほぼボブからリリーへの心遣いが描かれていきます。初めて二人が顔を合わせるのは、リリーが介護している女性がトイレをつまらせて(かな…)しまってボブに頼ったときですが、その時に様々な生活用具を購入してくれたり、その後かなり親しくなってからは流星群を見るためにキャンプに誘ってくれたり、リリーの犬についてのトラウマ(的なこと…)を解消するためにサプライズで犬を抱く機会をつくったりします。
癒やしのスクラップブック
そしてクライマックスに向けて大問題が起きます。
父親がどうしても会いたいと連絡してきます。しかし、その時のリリーにはボブとの約束があるのです。今は無理というリリーに父親は引き下がりません。折れたリリーはボブにメッセージを送り父親と会います。
なんと! 父親はお金を要求してくるのです。これまでリリーを育ててきた経費一覧の表を見せて払えというのです。拒否するリリーに、今度はボブにお金を借りてくれと言い出します。無理と言い続ける(受け入れるのかと思った…)リリーに父親もやむなく去っていきます。
そして、ボブからの返信が途絶えます。落ち込んだリリーは詩を書き(詩を書くのが好きとの前振りあり…)送ります。しかし、なにも返ってきません。たまらずリリーはボブの家に行き、誰もいない家に向かってボブ! ボブ! と叫び続けます。警察に通報されたのでしょう、拘束され、身元引受人が必要となり父親を呼ぶことになります。
父親の家でリリーはとんでもないものを見ます。家族のアルバムの写真すべてから自分の姿が切り取られているのです。父親は女性への印象をよくしたいからだと言います。リリーは激怒し父親の家を後にします。
その後もボブからの応答はありません。そして、ある日のこと、リリーは Facebook にボブが亡くなったとの投稿を見ます。葬儀に向かったリリーはボブに別れを告げ、初めて妻と顔を合わせます。妻はボブが心臓発作で倒れた後もリリーの詩を読んでいたことを話し、これを受け取ってとスクラップブックを差し出します。
そこにはリリーとボブが交わしたメッセージや写真、そしてリリーの詩が美しくスクラップされているのです。リリーは涙を流しながら妻と抱き合います。
感想:トレイシー・レイモン監督は誠実な方のよう
この映画は2024年のサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)映画祭の長編部門で審査員大賞(Grand Jury)を受賞しています。また、トレイシー・レイモン監督の実体験がベースになっているとのことです。
トレイシー・レイモン監督へのインタビュー記事を読みますととても真面目で誠実な印象を受けます。経緯はわかりませんが相手の男性はすでに亡くなっているとのことです。ただ、今なおその妻や娘とはつながりがあり、娘はトレイシー・レイモン監督が経営する金物店(the hardware store)のキャッシャーとして働いているそうです。金物店を経営しているんですね(笑)。
ということで、構成にやや難があるようにも感じますがとてもいい映画でした。