日本映画界の失われた30年 松本優作監督、この「ぜんぶ、ボクのせい」が商業デビュー作とのこと、ちょうど30歳くらいの方です。「秋葉原無差別殺傷事件をモチーフにした『Noise ノイズ』(19年)が国内外の映画祭で話題を呼んだ」と紹介されています。んー、これではかなり厳しいと思いますが…。ぜんぶ、ボクのせい / 監督:松本優...
見どころはレア・セドゥのワンシーンのみか… 2017年のベルリン映画祭で金熊賞を受賞した「心と体と」のイルディコー・エニェディ監督最新作です。昨年2021年のカンヌ映画祭のコンペティションに出品されています。受賞はありませんでした。主演はレア・セドゥさん、新境地(私が見ている映画では…)の役柄でこれまでとは違った魅力が爆発していました。[t...
戦闘は終わっても戦争は終わらない この映画は、2015年にノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさんの代表作『戦争は女の顔をしていない』に着想を得て生まれたものとのことです。監督は、映画制作当時26、7歳(現在31、2歳)のカンテミール・バラーゴフ監督、戦闘は終わっても決して終わることのない戦争を描いています。2019年のカンヌ...
見どころは三人の俳優の演技、物語は短絡的 三人三様という言葉があり、チェーホフにも「三人姉妹」という戯曲がありますが、この映画は「三姉妹」、性格や生活環境が異なる三姉妹が父親の誕生会に集い、心に閉ざしていた幼い頃の思いを爆発させることであらためて姉妹の絆を深めるという物語です。監督はイ・スンウォンさん、初めて見ます。三姉妹を演じるのは「愛の不時着」...
ファビアン、あるいは堕落について 『飛ぶ教室』『エーミールと探偵たち』『点子ちゃんとアントン』など、子ども向けの原作がよく映画化されるエーリッヒ・ケストナーさんの大人向けの作品『ファビアン あるモラリストの物語』の映画化です。主演は「コーヒーをめぐる冒険」「ピエロがお前を嘲笑う」のトム・シリングさん、「さよなら、アドルフ」のザスキア・ローゼンダール...
MilitaryWives軍人の妻たちの合唱もの映画 「フル・モンティ」のタイトルが目に入り、楽しく見たなあと思い出しながら、それ以降ピーター・カッタネオ監督の名前を見た記憶がありませんので一発屋かと思いましたら、テレビドラマをたくさん撮っている方でした(ペコリ)。シング・ア・ソング!~笑顔を咲かす歌声~ / 監督:ピーター・カッ...
ウクライナ国境近くで起きた60年前の虐殺事件 東西冷戦下の1962年、ロシア(ソ連邦)南部のノボチェルカッスクという町で起きた虐殺事件を描いた映画です。この事件はソ連邦崩壊後の1990年代まで約30年間隠蔽されていたとのことです。監督はアンドレイ・コンチャロフスキー監督、現在84歳のロシアの監督です。名前を聞いて映画を思い出せる監督ではありませんが...
ジャネットのようにミュージカルにすべきだった? ブリュノ・デュモン監督がジャンヌ・ダルクの少女時代(12歳くらいから数年)を描いた「ジャネット」の続編です。その「ジャネット」はミュージカル仕様でしたが、こちらはうってかわって台詞劇です。ジャンヌ、ここは歌えよと思うところでも歌ってくれません(笑)。ジャンヌ / 監督:ブリュノ・デュ...
不完全なる映画から立ち昇るリアルなジャンヌ・ダルク なんとも奇妙な映画ですね。やっていることはわかるのですが、やろうとしていることがわからないという、つくり手の考えていることが不可解な映画です。ただ、この映画には「ジャンヌ」という続編があり、まだ見ていませんのでそれを見れば、その不可解さもちょっとは解けるかもしれません。ジ...
社会システムの欠陥を個人の問題にすり替えてはいけない すごい映画ですね。憎悪や悪意など何もないのに次から次へと人が傷ついていき、挙げ句の果てに…という、救いなし、癒やしなし、不条理の極みの映画です。と思ったのですが、よくよく考えれば…と思いなおした映画です。イラン映画です。監督は、主演でもあるマリヤム・モガッダムさんとプライベートでもパート...
正統派伝記映画にすべきだった 映画の邦題というのはどんなタイトルをつけてもあれこれ言われるものだとは思いますが、それにしても、この「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」はもう少し考えないと長すぎて肝心の「ビリー・ホリデイ」が三点リーダーに省略されてしまいます。「奇妙な果実」とかにすればよかったんじゃないでしょうか。ビリー・ホリデイの代...
俳優の無駄遣い。新しい女性アクション映画を。 このところ日本映画を見ることが続いていますのでちょっと気分転換にということと、ジェシカ・チャステイン、ペネロペ・クルス、ファン・ビンビン、ダイアン・クルーガー、ルピタ・ニョンゴという錚々たるメンバーということと、そして、さらに女性が主人公のスパイアクションものということで見に行ったのですが…...
終始正論で迫られ涙を流さざるを得ない 世の中の不条理に対して終始正論で迫ってきますので涙を流さざるを得なくなる映画です。保護司 阿川佳代交錯する阿川佳代と工藤誠の物語阿川佳代の物語(現在)工藤誠の物語(現在)拳銃強奪、連続殺人事件工藤兄弟の物語(過去)阿川佳代の物語(過去)そして、事件は終幕へ阿川、工藤を説得する...
しゃかりきにドラマを求めてもドラマは生まれない 「岬の兄妹」の片山慎三監督です。「岬の兄妹」ではかなり辛辣なことを書きましたのでよく覚えています。この「さがす」が商業デビュー作とありますので、あれは自主制作だったということです。そして、それが評価されたということでしょう。しゃかりきにドラマを求めても核がなければドラマは生まれない楓はど...
既視感はあるが気持ちが豊かになる映画、悲惨さを越えて。 「イン・ザ・スープ」のアレクサンダー・ロックウェル監督の25年ぶりの日本公開作品ということです。タイトルにはなにか引っかかるところがありますが多分見ていないです。それに、25年ぶりということは1996年になりますが、この映画の製作年は1992年になっており日本公開が遅かったのか、他の映画の話なのか、IMDbなど...
(韓国版)ジョゼは自ら身を引いたのか、同情を突き放したのか 田辺聖子さんの原作も読んでいませんし、妻夫木聡さんと池脇千鶴さん主演の2003年の映画も見ておらず、昨年末に公開されたアニメ版はその存在すらも知らなかったという「ジョゼと虎と魚たち」初心者ですが、ざっとネット上の予告編やあらすじなどを読んでみますと、この映画は随分趣きが違うようです。時代の変遷や価値観の違い...
14世紀フランスのレイプ事件、すべては男のため 1386年のフランスで実際にあった騎士の決闘にまつわる映画です。また地味な話だなあと思いながらも、マット・デイモン、アダム・ドライバー、ジョディ・カマー(よく知らない)、ベン・アフレック、それに監督がリドリー・スコットということならば見てみなくっちゃということです。時代背景は中世ヨーロッパでも、実に現代的な話でし...
ジギー・スターダスト誕生に迫れているか…? 音楽映画は鉄板というのはほぼ間違いなく、迷いなく見に行けます。と思い、見に行ったのですが、音楽映画ではありませんでした。もう3年前になりますが、フレディ・マーキュリーの伝記もの「ボヘミアン・ラプソディ」のような映画を期待していきますとややがっかりするかもしれません。ただ、様々な世界(ジャンル)でア...
女16歳、男35歳の恋愛を16歳の側から描く スザンヌ・ランドン監督、現在21歳、撮影時は19歳くらい、この映画のシナリオ(のベース、多分)を書いたのは15歳、そして自ら、監督、脚本、主演という映画です。両親は、ともに俳優のサンドリーヌ・キベルランさんとヴァンサン・ランドンさんです。スザンヌ、16歳 / 監督:スザンヌ・ランドン16歳女子から見た...
Let him go はアメリカ社会の裏の一面かも ラリー・ワトソン(Larry Watson)さんという作家の同名タイトル「Let him go」という小説が原作らしく、その小説の時代設定は1951年であるところを映画では1963年にしています。なぜこんなに中途半端に時代をずらしたのでしょう。アメリカ人にとっては、その10年の違いにもなにか意味があるのかも...