そして僕は途方に暮れる

ネタバレレビュー・あらすじ・感想・評価

何者」「娼年」の三浦大輔監督です。私が見ているその二作は原作ものですが、この「そして僕は途方に暮れる」は三浦監督のオリジナルです。主演は藤ヶ谷太輔さん、Kis-My-Ft2の方とのこと、他に前田敦子さん、中尾明慶さん、原田美恵子さん、豊川悦司さんといったところです。

そして僕は途方に暮れる / 監督:三浦大輔

演劇ネタは映画にしてもつまらない

いきなり断定的な見出しですみません(ペコリ)。

この映画は2018年にシアターコクーンで上演された舞台劇の映画化だそうです。面白いところはありますがその面白さが持続しないという意味です。先が読めますので飽きてきます。そうしますとオチを待つだけになります。

舞台は先が読めても面白く見られる場合があります。生身の俳優の熱量です。内容がつまらなくても俳優の力だけで面白くなる場合があります。

映画はなかなかそうはいきません。やはりどこまでいっても映画は平面です。2次元という意味ではありません。どんなに奥行きのある内容でも、どんなに面白い話でもスクリーンと客席には深くて暗い川があります。川の形容詞は冗談です(笑)。映画は内容のよさと俳優のよさのバランスが重要です。

この映画は、ダメ男(社会性がないという意味…)裕一(藤ケ谷太輔)がその場に居づらくなるとすぐに逃げるという話です。その逃走劇がほぼ最後まで続きます。逃げのパターンがほぼ同じで、裕一自身も最後まで変わりませんので飽きてきます。

5年間同棲している内縁の妻ともいうべき里美(前田敦子)、幼馴染の親友伸二(中尾明慶)、先輩の修(毎熊克哉)、姉の香(香里奈)らに責められますとすぐに逃げ出します。そして、たどり着く先は故郷苫小牧、母親の智子(原田三枝子)、そして離婚している父親の浩二(豊川悦司)を渡り歩いていきます。これら、裕一の相手のキャラクターは変化していきますのでかろうじてそれで持ちますが、裕一はまったく変わりません。どう考えても面白くなりようがありません。

オチが読めてしまう

もちろんオチが読めても面白い映画はあります。ただ、この映画はどちらかといいますとそのオチで見せようとしているような映画です。

逃げて逃げて逃げまくっていた裕一が、最後は逃げてきた皆の前で人生やり直しますと言います。それで映画が終わるはずはありません。

じゃあ何が起きるか? は決まっています。裕一を責めていた人が裏切るに決まっています。

もちろん、それがわかるのはハッピーエンド的なエンディングの空気を醸し出したほぼ終盤です。ハッピーエンド? 誰だって、これで終わるはずがないと思います。そうなれば、裏切るのは里美に決まっています。ましてや前田敦子さんがキャスティングされているわけですからどう考えてもそうなります(笑)。

面白くなってきやがったぜ

裕一(藤ケ谷太輔)は20代か30歳前後の設定かと思います。映画監督を目指していたようですが、今は居酒屋のバイトをしているだけです。里美(前田敦子)と5年同棲しています。

ある朝、裕一は、出勤する里美に今日は親友の伸二と飲みに行くから遅くなると言っています。その夜、残業で遅く帰ってきた里美に、ソファに寝転がってスマホを触りながら電球が切れているから替えておいてとか勝手なことを言っています。里美がキレます。裕一の浮気がバレています。ちゃんと話をしようという里美に裕一は速攻で逃げます。

北海道から一緒に上京した幼馴染の伸二(中尾明慶)の住まいに居候します。一週間後、我が物顔で居座る裕一に伸二がキレます。再び裕一は逃げます。次は先輩(何のかは不明)です。あれこれあって逃げます。次は後輩に電話をしますが、言い出せなく、行き先もなく、ついに姉(香里奈)に頼ることになります。

姉はもうすでに裕一を見限っています。姉は、裕一が北海道の母親にお金をせびっており、その母親が自分にお金を貸してほしいと言ってくると怒り、数万円を裕一に叩きつけます。裕一は逃げます。

裕一は北海道の母親(原田三枝子)の元に帰ります。母親は嬉しそうです。裕一はここに戻ってこようかなと言っています。その後の展開は忘れましたが、母親にしっかりしろ! と言われ、やはり逃げ出します。

雪の中、バス停に佇んでいますと通りがかった父親(豊川悦司)と出くわします。父親は10年ぶりかとか言い、裕一を家に連れて帰ります。

この父親は面白いキャラクターで、社会的にはダメ人間なんですが、世の中は生ぬるいもので適当にやっていればなんとかなるなどとうそぶいて、日々パチンコ人生です。母親と離婚、その後誰かと結婚したが浮気がバレて追い出されたと言っています。今はすべての関係を断ち切って自由気ままに生きていると言っています。

「俺のまわりには誰もいなくなった。どうしようもなく怖くなったらこう思うんだよ。面白くなってきやがったぜ。」

これをもっと生かせばいいのに、と思います。

そして、オチは…

スマホの電源も切り、しばらく父親の元でゴロゴロする裕一です。

ただ、裕一が変わらないんです。さすがにいろんな感情がぐるぐるすると思いますが、藤ケ谷太輔さんの演技が最初から最後までまったく変わりません。

それはともかく、母親が倒れたことがわかり、俺はいかないという父親にやや怒りを感じながらも裕一は病院に駆けつけます。なぜか里美が来ています。正月休みに帰ってきたという伸二も来ています。姉も帰ってきています。母親の症状は軽かったらしく、大晦日、皆で食卓を囲みます。皆に責められまくりの裕一もついに自分自身がよくわからないけれどもとにかく何とかしようと思うみたいなことを言い涙ながらに皆に頭を下げます。

東京に帰る(フェリー)里美を見送り、伸二とも親友感を分かち合いながら別れ、家に戻りますと父親がやってきます。父親は、伸二に俺も頑張ったぞと唇を震わせながらつぶやいています。

で、東京、里美のもとに戻った裕一です。突然里美がごめんなさいと言い出します。裕一が出ていった2週間後に伸二と会い、酔っ払って自分からホテルに誘い、今は会いたいと思う人になったと告げられます。

裕一は悔し紛れに「面白くなってきやがったぜ」とつぶやいて終わります。