文の非実在感は女の妄想か 2020年の本屋大賞の凪良ゆう著『流浪の月』の映画化です。主演は広瀬すずさんと松坂桃李さん、共演は横浜流星さん、多部未華子さん、趣里さんといったところです。流浪の月 / 監督:李相日真実は誰にもわからない15年前の女児誘拐事件の加害者と被害者がその15年後に再会するという映画です。ただ映画...
シュールな近未来か?アンチテクノロジーか? 予告編からはもっとシュールな映画を想像していたのですが、思いのほか感傷的で叙情的な映画でした。2020年のヴェネツィア映画祭のオリゾンティ部門で上映され、コンペティション部門の審査委員長のケイト・ブランシェットさんが評判を聞きつけて鑑賞し、エグゼクティブ・プロデューサーへの就任を買って出たという映画です。...
三つの時空の融合が中途半端で惜しい 率直なところ、始まって1/3あたりまではあまりの素人臭さに(感じたということでペコリ)なぜこれが劇場公開?とため息をこらえて見ていたのですが、後半の現代の写真館あたりからは、ん? そうでもないかと気を入れ直して見た映画です。いきなりこんな書き方でゴメン、問題は多いと思いますが悪くはないです。...
1960年代のロンドンへの郷愁と悪夢の事実 映画を見る際には必ず監督をチェックします。エドガー・ライト監督ってなにか見たことあるかな? と過去の作品一覧を見ましたら、「ワールズ・エンド酔っぱらいが世界を救う!」があり、ああ、あれか、スルーだなと思ったのですが、なにか引っかかるものがあったのでしょう、見てみましたら結構おもしろかったです。いや、おも...
プロメテウス、サシャ・シュナイダーまではわかったけど… 最も苦手な映画を見てしまいました(笑)。評判だったらしい同じロバート・エガース監督の「ウィッチ」という映画も知らず、この「ライトハウス」がスリラーだということもはっきりとは認識せず、なんとなく目にした「人間の狂気」とか「幻想的」とか「美しい映像」とかの言葉に釣られてしまいました。ライトハウス / 監督...
アメリカの真実が真実とは言えない 「ラスト・フル・メジャー」という言葉は、リンカーン大統領の言葉としてよく引用される「人民の、人民による、人民のための政治」が語られたと同じ演説の中の言葉ということです。南北戦争史上最大の戦いと言われる1863年のゲティスバーグの戦いの4ヶ月後に行われた国立戦没者墓地の奉献式でのゲティスバーグ演説です。ラスト・フル・メジャー ...
ギャスパー・ノエ監督、画を点滅させるも心は点滅せず サンローランのアートプロジェクト「SELF」の一環として制作された映画とのことです。監督本人がインタビューで、サンローランのクリエイティブディレクターのアンソニー・ヴァカレロさんから「何か一緒に作品を作りませんか?」と提案されたと語っています。ルクス・エテルナ 永遠の光 / 監督:ギャスパー・ノエ ...
サンフランシスコ フィルモアへの愛がほとばしる かなり個的で地域性の強い映画ですので共感するかどうかという見方では難しいのですが、主人公ふたりの関係はとても面白いですし、映画のつくりに新鮮さを感じます。ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ / 監督:ジョー・タルボットあらすじジミーの街への愛情と郷愁演劇的なシーンモントはジョー・タルボット...
ホラーと言うよりも女たちの嘆きと悲しみの映画 「火の山のマリア」のハイロ・ブスタマンテ監督の4年ぶりの新作ということになります。この作品は昨年2019年8月のヴェネチア映画祭で上映された映画ですが、IMDbを見ますと、ほぼ同時期の2019年の2月のベルリン映画祭に「Temblores(Tremors、震え?)」という作品が出品されています。ラ・ヨローナ 彷徨...
寓話的ファンタジーなのだが寓話性が足りず 「ルルドの泉で」のジェシカ・ハウスナー監督の最新作です。主演のエミリー・ビーチャムさんが昨年2019年のカンヌで女優賞を受賞しています。ハウスナー監督の映画は日本ではほぼ10年ぶりということになりますが、2014年に「Amour fou」という映画を撮っているようです。英題は「Mad Love」ですので狂った愛みたいなニュ...
よい黒人は受け入れられ、わるい黒人は排除される なんだかわかりにくい映画だなあと思いながら、考えがまとまらず、はや3日経ってしまいました(笑)。わかりやすい映画を望んでいるわけではありませんし、この映画の場合、テーマは明快ですし描いていることはわかるのですが、描かれるのは今現在起きている現象面だけですので、言葉で語られるその背景とどうしてもうまく繋がりません。...
見なくてはわからないリアリティとダイナミズム 革命のダイナミズムとはこういうものかも知れない。というのが、この映画を見てまず最初に思ったことです。戦争は突発的にでも起きますし、ある一人の意志で起こすこともできますが、革命はそういうわけにはいきません。ある集団、階層、階級に共通した「怒り」がベースになければ革命は起きません。最初から最後まで「怒り」が渦巻いた映画...
苦しみながら選択することこそが人間に与えられた自由だということ 「ナチュラルウーマン」「グロリアの青春」のセバスティアン・レリオ監督です。新作? と思いましたら、製作年は「ナチュラルウーマン」と同じ2017年になっています。公式サイトによりますと、主演のレイチェル・ワイズさんの企画から立ち上がった映画で、レリオ監督はオファーをうけたということのようです。だからとい...
第一級のジョークか、はたまた脳内男性の成せる業か タナダユキ監督だからだと思いますが女性客が多い印象でした。女性はこういう映画を見て共感するんでしょうか?いや、この問題の立て方自体が間違っていますね。そもそもこの映画、男目線の映画ですので、園子に共感することはないにしても、男ってこんな馬鹿なのと呆れかえることはあるやもしれません。ロマンスドール / 監督:...
岩井俊二監督らしい叙情的感傷映画…でいいのか? 構成力はさすがです。見る前にどんな話かと公式サイトのあらすじを読んでみましたら、読み方もよくわからない役名が並び、過去と現在を同じ俳優の二役で配役したりとなんだかややこしい話だなあと思ったのですが、実際に見てみれば、現在と過去の行き来も自然ですし、二役にもまったく違和感がありません。それと俳優、特に松たか子さんでも...
下ネタ好きにはオススメ、シャーリーズ・セロンファンにもオススメ 下ネタも臆することなくやれば下品さも薄まるかどうかという映画です(笑)。正直薄まっちゃいませんが、まあ、シャーリーズ・セロンだから許しましょ、というところでしょうか。ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋 / 監督:ジョナサン・レヴィンアメリカ合衆国国務長官シャーロット・フィールド(シ...
感動するか、あまりの作り込みに引くか、あなたはどちら? こういう映画は苦手だなあ…(笑)。なにがって、全編、ストーリーを説明されているような映画ですし、それに、なんだか壇上から教訓話を聞かされているような窮屈さを感じません?ライフ・イットセルフ 未来に続く物語 / 監督:ダン・フォーゲルマンそれもそのはずでした。この映画、二世代にわたる二つのルー...
ケニア、自由にあるがままに生きたいと願う少女たち ケニア映画です。アフリカを「舞台」にした映画ではないアフリカ映画って見たことがあるのだろうかと思い返してみても記憶がありません。この映画の製作は南アフリカの Big World Cinema というプロダクションで、アフリカ映画がたくさんラインナップされており面白そうなものがあります。監督のワヌリ・カヒウさんは1...
事件は描いても人を描かず。吉田修一「犯罪小説集」を映画化 吉田修一さんの小説が映画化されたものはほとんど見ていますが、なかなか小説を越えるものが出ないです。吉田修一さんはどちらかといいますとストーリーテラーですので、物語を追っていくだけの映画では、ただ映像化しただけで終わってしまうからではないかと思います。この「楽園」の原作は『犯罪小説集』という5編の短編を収録し...
バート・レイノルズファン御用達、男の癒やし映画 バート・レイノルズさん、もちろん名前は知っていますし、顔を見れば、ああこの俳優さんかとわかりますが、おそらく映画は見たとしてもすべてDVDだと思いますのであまり記憶はありません。昨年2018年9月6日に82歳で亡くなられているんですね。この映画は、ちょうど1年後の今年9月6日を劇場公開日にしているようです。...