ピュアで美し過ぎるがゆえに作り込み感が気になる… 「僕たちの家に帰ろう」のリー・ルイジュン監督です。2014年の映画でしたので8年ぶりになります。そのレビューでは「私が審査委員長なら、パルムドールでも、金熊でも、金獅子でも何でもあげちゃいます」と書いている監督です(笑)。なお、この「小さき麦の花」の前にもう1本「Lu Guo Wei Lai (Wa...
ダルデンヌ兄弟監督がドキュメンタリ作家の原点に帰ったような劇映画 1999年の「ロゼッタ」以降すべて見てきているジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟監督です。このサイト内では新しい方から「その手に触れるまで」「午後8時の訪問者」「サンドラの週末」「少年と自転車」について書いています。という、ほぼすべてのドラマ作品を見てきた中でもこの「トリとロ...
ネタバレレビュー・あらすじ・感想・評価 アメリカの高校で起きた銃乱射事件から6年、被害者と加害者の両親が対面で話をするという映画です。監督のフラン・クランツさんは俳優として二十数年のキャリアがある方で、この映画が脚本も含め監督デビュー作ということです。対峙 / 監督:フラン・クランツデビュー作にこの題材…デビュー作にこ...
三浦透子、東出昌大主演の丁寧な、でも冗長な映画 「CMディレクターとして活躍する宮川博至監督(公式サイト)」の初長編映画です。主演は三浦透子さんと東出昌大さん、脇に小林薫さん、浅田美代子さんという映画です。とべない風船 / 監督:宮川博至CMと映画まったくのたまたま(偶然)ですが、正月休みに「光を追いかけて」という、C...
2,30分でネタは知れ、残り100分を耐えるつらさ 監督は「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」のオリビア・ワイルド監督、主演は「ミッドサマー」のフローレンス・ピューさんという今注目(らしい)の組み合わせの映画です。ドント・ウォーリー・ダーリン / 監督:オリビア・ワイルドつらい……2、30分も見ればネタは知...
バニーキングの正義と社会正義がぶつかる映画でロードムービーじゃないよ… ニュージーランド映画です。監督はゲイソン・サヴァットさん、映画界でのキャリアは30年近くありますが、これが初の長編とのことです。カメラクルーとしてスタートし、2000年代後半に入ってからテレビドラマやCMのディレクターとなり、映画では2009年に短編1本がクレジットされています。そして...
フランス革命前夜、フランス初のレストラン誕生秘話 1789年のフランス革命のちょっと前、フランスで初めてのレストランが誕生したというドラマです。実話ではありません。それまで料理というものは王族、貴族、聖職者といった支配者階級だけが理解できるもので、庶民が食事を楽しむという社会規範がなかったのが、革命という社会変革によって料理の世界にもパラダイム転換が起きた...
皮肉?教訓?ナンセンス? 「引っ越した家には12時間進んで3日若返る穴がありました」にやられて見てしまいました(笑)。カンタン・デュピュー監督、「ラバー」「ディアスキン鹿革の殺人鬼」など過去のタイトルを目にしても何も浮かびませんので初めてだと思います。奇妙な映画を撮る監督のようです。地下室のヘンな穴 / 監督:カンタン・デ...
ヘレン・シャルフベックを演じるラウラ・ビルンの魂のまなざし フィンランドの国民的画家ヘレン・シャルフベックの50歳代の8年間ほどが描かれた映画です。「魂のまなざし」とはまた奇妙なタイトルをつけたものだと思いましたら、2015年に「ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし」として全国4箇所で展覧会が開かれていました。映画としてはそのタイトルは決して間違...
映画は最強のプロパガンダ手段 2022年の今ではドンバスやドネツクの地名も毎日のように耳にしますが、その地名をタイトルにしたこの映画の製作年は2018年です。2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻(侵略)の4年前の映画です。皮肉なことですが、この戦争がなければこの映画が日本で劇場公開されていたかどうかわかりません。2018年のカンヌ映画祭...
トム・クルーズは映画が映画でなくなった時代の最後の映画スター ハリウッド超王道! 見事です。2時間10分、あっという間でした。空中シーンでは知らず知らずのうちに拳を握っている自分に気づきます。懐かしさを感じるのに古くない見事と書いておきながらなんですが、特にすごいところがあるわけではありません。物語はハリウッドの定...
大人の女性のファンタジーに見えても、実は男の… 安倍照雄さんという脚本家のオリジナルストーリーとのこと、平山秀幸監督とともに10年来温めてきた企画でもあるそうです。笑えもし見ていて楽しくなる大人のファンタジーです。ただ、ちょっと見方を変えますと、んー……という映画でもあります。ツユクサ / 監督:平山秀幸大人のしあ...
昭和ノスタルジーの人情噺で自身の昭和度を測る 重松清さんの小説『とんび』の映画化です。中心となっている時代が1960年代から2、30年間の話ですのでいつ書かれたものだろうとウィキペディアを見てみましたら2003年の新聞の連載小説でした。原作を読んでいませんので実際はどうかわかりませんが、映画は昭和ノスタルジーです。自分の昭和度をはかるにはいい映画で...
男でもない女でもないノンバイナリージェンダーの誕生か 昨年2021年のカンヌ映画祭パルムドール受賞作です。「世界が驚愕、混乱、困惑」とか「完全に独創的、脳がブッ飛んだ」などの宣伝コピーが踊っていますので、無茶苦茶期待の映画です。TITANE/チタン / 監督:ジュリア・デュクルノー驚愕するよりも考えてしまう...
男はケーキにまみれて自らの過去に拘泥し、女は朝日にまみれて未来を思う 日本映画は大丈夫か? と思います。松居大悟監督までもが…とかなり心配になります。この手の恋愛映画、それぞれ若干趣きは違うにしても過ぎ去りし過去を引きずった感傷的恋愛映画が立て続けに送り出されています。「ボクたちはみんな大人になれなかった」「明け方の若者たち」たまたま私が見...
後味の悪さが現代につながる 焦げ付かないフライパンの代名詞のような「テフロン」ってデュポン社の登録商標なんですよね。以前、フライパンのコーティングが剥げたので再加工は出来ないかと調べていた時に知りました。フッ素を含んだ合成樹脂は耐熱性や耐薬品性に優れていることからフライパンのコーティングに使われているということらしく、そのフッ素樹脂をデュポンはテフロンと呼...
北白川派に時代劇は無理ではないか… 「北白川派」とは「京都造形芸術大学と映画学科が一丸となり、その全機能を駆使しながら、プロと学生が協働で一年をかけ一本の映画を完成させ、劇場公開を目指すプロジェクト(北白川派)」で、私は「嵐電」「のさりの島」と見てきて結構気に入っているんですが、さすがにこれはちょっと…です。主だったスタッフや俳優は、「監督は若...
トレブリンカ強制収容所の記憶の歌 The Song of Names 映画らしい映画と言いますか、ヨーロッパらしい映画です。監督のフランソワ・ジラールさんはカナダの方ですが、原作の「The Song of Names」がイギリスの小説ですし、原作者のノーマン・レブレヒト(Norman Lebrecht)さんはイギリスの作家であり、音楽ジャーナリストでもあります。...
サルバトール・ムンディがルーブル・アブダビに展示される日は来るか? 1763年以降行方不明(ウィキペディア)となっていたレオナルド・ダ・ヴィンチの最後の傑作「サルバトール・ムンディ」という絵画が、真偽不明のまま、1175ドル(約13万円)から4億5000万ドル(約510億円)に化けてしまったという話です。その過程に関わった人物たちのインタビューで構成されたドキュメ...
パンクカップルはラブコメで世界を変える 面白い映画でした。アメリカはこういう映画はうまいですね。社会規範への抵抗とラブストーリーを結びつけ、それでいて暗くならずにポップ(この映画ではパンク)でカラッとしています。犯罪性は抑えられてラブコメ要素がかなり強いのですが、「俺たちに明日はない」「地獄の逃避行」「トゥルー・ロマンス」の系譜でしょうか…。いや、そこまではいって...