記事一覧

岸辺の旅/黒沢清監督

2015.10.23

か行,

深津絵里さんの良さで持っているような映画ですね。やたら大層な音楽が良いのやら悪いのやら…黒沢清監督の作品を見るのは「トウキョウソナタ」以来でしょうか。この映画、カンヌの「ある視点」部門で監督賞を受賞していますが、見ての印象は、むしろ深津絵里さんに女優賞をあげたほうがいいような映画ですね。3年間、失踪していた夫が突然帰ってきた。だが、夫は「俺、死んだよ」と妻...

過ぐる日のやまねこ/鶴岡慧子監督

2015.10.20

か行,

フランスを目指した(かどうかは本当のところ分かりませんが…)はずが日本に舞い戻ってしまったのでしょうか?2012年「くじらのまち」でPFFグランプリを獲得し、出品したベルリン映画祭で「フランス映画のようだ」と評された鶴岡慧子監督が、PFFスカラシップで撮った初の劇場公開作です。確かに「くじらのまち」は、無駄なところのない、よく練って作られた映画でした。三人の高校...

草原の実験/アレクサンドル・コット監督

2015.10.19

さ行,

台詞の有り無しが特徴と言われないために、あるいは映像が美しい映画と言われないために「草原の実験」って何? と不思議なタイトルですが、最後に「ああ、そういうことね」と分かります。原題が「Ispytanie」とローマ字表記になっているのは、ロシア語(キリル文字)は2バイト文字なのでラテン文字表記法という1バイト文字変換というものがあるようです。意味は TEST という...

顔のないヒトラーたち/ジュリオ・リッチャレッリ監督

2015.10.14

か行,

映画の評価より「フランクフルト・アウシュビッツ裁判」について語るしかない誤解を受ける言い回しかもしれませんが、我々日本人ってヒトラーやアウシュビッツを扱った映画って好きですよね。配給もそれを分かって邦題をつけているのでしょうが、かく言う私もつい見なくてはいけない(強迫)観念にとらわれて見に行きました。連休明けの朝イチですので空いているかと思いきや、その時間帯にし...

天使が消えた街/マイケル・ウィンターボトム監督

2015.10.07

た行,

消えてはいないが、結局天使はカーラ・デルヴィーニュだった。「ペルージャ英国人留学生殺害事件(アマンダ・ノックス事件)」を題材にした映画なんですが、如何せんその事件を全く知りません。更にそうした類の事件に全く興味がありません(笑)。なら、なぜ見にいった? って、マイケル・ウィンターボトム監督の映画を見てみたかったことと、宣伝文句に「観る者の心を揺さぶる重層的なドラ...

ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女/アナ・リリ・アミルプール監督

2015.10.04

おすすめ映画, さ行,

監督自身の網膜に焼き付けられてきた残像や鼓膜に記憶されてきた残響を一本にまとめ上げたような映画随分前に予告編を見て、これは絶対見なくっちゃと待ちに待った映画です! と言いながらも公開から一週間経っていますので、大きなことは言えません。あらら、1日1回の上映ですね。さほど入らないとふまれたのでしょうか、良い映画なだけに残念です。邦題を、原題の「A Girl Wa...

エデンEDEN/ミア・ハンセン=ラヴ監督

2015.10.01

あ行,

スタイリッシュなグルーヴ感なのに以外に身近な青春もの、見ていれば自然と体が動き出します仕事上選曲をしたりしますので、この曲なんだっけ?といった音楽がいっぱい流れていました。ただ、クラブ系の音楽はなかなか曲名に結びつかいないですね。音楽的には、ハウス系の音楽ですともう少しディープで体が沈み込むようなものが好みですので、ちょっとばかり軽すぎる印象ですが、それでも映画...

ぼくらの家路/エドワード・ベルガー監督

2015.09.29

は行,

これ、エンディングも「希望に満ち(公式サイト)」てはいないよね。日本にもジャック&ベティはたくさんいるんだろうな…。冒頭、大きなベッドにふたりの幼い子どもが気持ちよさそうに眠っています。カメラはその姿をじっと捉えています。至福の時はゆったり流れる、と思いきや、突然映像は切り替わり、部屋の中を慌ただしく動きまわる子供を追いかけるように、カメラもまた手持ちのま...

セッション/デイミアン・チャゼル監督

2015.09.28

さ行,

鬼の目にも涙では甘いのだ!スパルタ教育こそが天才を生むのだ!見逃していた映画が、運良く二番館で上映されていました。音楽ものですし、「圧倒的」とか「ラスト何分の何とか」とかの言葉が踊っていますので期待は高まります。名門音楽大学に入学したニーマン(マイルズ・テラー)はフレッチャー(J・K・シモンズ)のバンドにスカウトされる。ここで成功すれば偉大な音楽家になるとい...

あの日のように抱きしめて/クリスティアン・ペッツォルト監督

2015.09.20

あ行,

三人の人物描写が浅いけれど、メロドラマとしてはほど良いところかも。?な邦題もぴったりか?「東ベルリンから来た女/クリスティアン・ペッツォルト(クリスティアン・ペツォールト)監督」の最新作ですね。1945年6月ベルリン。元歌手のネリーは顔に大怪我を負いながらも強制収容所から奇跡的に生還し、顔の再建手術を受ける。彼女の願いはピアニストだった夫ジョニーを見つけ出...

僕たちの家へ帰ろう/リー・ルイジュン監督

2015.09.17

おすすめ映画, は行,

私が審査委員長なら、パルムドールでも、金熊でも、金獅子でも何でもあげちゃいますこれは「映画」です!余計なことは語らない、余計な演技はしない。画が全てであり、画にとらえられた人が全てです。そして、ラストカットのカタルシス。いや、この映画の場合、たしかにストンと心に落ちはしますが、カタルシスという言葉は当たらないかもしれません。なぜなら、二人の子どもたちにとっ...

ピエロがお前を嘲笑う/バラン・ボー・オダー監督

2015.09.14

は行,

実は共演がすごい!「コーヒーをめぐる冒険」に「4分間のピアニスト」もう少し期待して見に行ったのですが、思ったよりも単調で、オチも単純なものでした。と言っても、読めたということではなく、そもそも「トリック」やら「ラストのドンデン」で売ろうとして作られていないのかも知れません。ほぼ全編ベンヤミンの告白で進行するわけですから、そりゃ最後にひっくり返ることくらい誰でも予...

黒衣の刺客/ホウ・シャオシェン監督

2015.09.14

か行,

ホウさん、これじゃ分かりませんよ(笑)。と言うより、ストーリーなどどうでもいいか…「最も美しく、最も静謐な、新しい武侠映画」と言われても、武侠映画であるなら、もう少しストーリーを分かりやすくしてくださいよ(笑)。これじゃ、誰が誰やら、誰と誰がどういう関係やら、よく分かりません。 唐代の中国。13年前に女道士に預けられた隠娘(インニャン/スー・チー)が戻ってく...

しあわせへのまわり道/イザベル・コイシェ監督

2015.09.12

さ行,

あまりにアメリカ映画過ぎてどうなの?とは思いますが、過剰さもなく、楽に見られて、ほど良いところなのかなあとは思います世の中には二種類の映画があります。世の凡人に刺激を与えようとする映画か、落ち込んだ人を勇気づけようとする映画かです。ホントか?(笑)まあ、正直、これを見て勇気づけられる人がいるとも思えませんが、一応後者の範疇には入るのでしょう。離婚やら男女の別れや...

フレンチアルプスで起きたこと/リューベン・オストルンド監督

2015.09.06

は行,

緯度と理屈っぽさは比例する?スペイン映画なら笑ってすますのに…すでにハリウッドでのリメイクも決まっているとのこと、この映画は間違いなくハリウッド向きですね。こんな個的なテーマを、こんな偉そうに上から目線でやられた日にゃ、たまったものじゃありません。その辺、ハリウッドはうまいもので、個人の尊厳を脅かすようなテーマを直接的には描きませんし、ちょっと穿った言い方をす...

チャップリンからの贈りもの/グザヴィエ・ボーヴォワ監督

2015.09.02

た行,

エディ役のブノワ・ポールブールドさんの寂しさをたたえた雰囲気と涙目の小さな目がチャップリンチャップリン、何となくその人そのものを知っているような感じがするのに、実は何も知らない人物の一人です。特に赤狩りでアメリカから追放されてからの晩年のことは全く知りませんでした。スイスで亡くなっていたんですね。それに、この映画の下敷きとなっているチャップリンの棺盗難事件という...

わたしに会うまでの1600キロ/ジャン=マルク・ヴァレ監督

2015.08.31

わん他,

目指せ、PCT4000キロ、スルー・ハイキング!まずは早起きして散歩からか…?タイトルが自分探しものくさく、ちょっと迷ったのですが、「ダラス・バイヤーズクラブ」のジャン=マルク・ヴァレ監督の映画ということで見に行きました。ダラス・バイヤーズクラブ、かなり良かった記憶ですが、今ブログを読み返してみますと、あまり映画の内容については書いていないですね...

彼は秘密の女ともだち/フランソワ・オゾン監督

2015.08.26

か行,

ヴィルジニアは「わたしはロランス」のロランスとなり、「オール・アバウト・マイ・マザー」のロラへと旅立っていくのでしょうか?どちらかと言いますと、ぐぐっと引き込まれる映画が好みですが、こういう楽な映画もまたいいものです。冒頭から5分か10分くらいでしょうか、幼いクレールが、ローラと出会い、双子の姉のように慕いながら大きくなり、ローラの後を追うようにして恋愛、結婚...

この国の空/荒井晴彦監督

2015.08.19

か行,

二階堂ふみは、どんな役を演じても、必ず自分をさらけ出していると思わせる…二階堂ふみはつくづく不思議な俳優だと思い知らされます。一般的な意味でいえば「女優」としてのアドバンテージなど何も持ち合わせていないように見えるのに、この2時間あまりの映画を完全に「二階堂ふみ」の映画にしています。 「私の男」とさほど違った演技をしているようにも見えません。荒井晴彦監...

ローリング/冨永昌敬監督

2015.08.15

ら行,

映像的にも、音楽的にも、編集にしても隙がなく完成度は高い。三浦貴大も柳英里紗もいい。が…映画の中のナレーションというのは、説明的になったり、流れのリズムを壊したりすることが多く、あまり良い印象はないのですが、この映画は使い方がうまいですね。導入でうまい具合に人間関係をわからせ、「そして、これが今の私」とつがいの鳥を見せ、「ん?何が起きるの?」と興味を持た...