不完全なる映画から立ち昇るリアルなジャンヌ・ダルクなんとも奇妙な映画ですね。やっていることはわかるのですが、やろうとしていることがわからないという、つくり手の考えていることが不可解な映画です。ただ、この映画には「ジャンヌ」という続編があり、まだ見ていませんのでそれを見れば、その不可解さもちょっとは解けるかもしれません。ジ...
社会システムの欠陥を個人の問題にすり替えてはいけないすごい映画ですね。憎悪や悪意など何もないのに次から次へと人が傷ついていき、挙げ句の果てに…という、救いなし、癒やしなし、不条理の極みの映画です。と思ったのですが、よくよく考えれば…と思いなおした映画です。イラン映画です。監督は、主演でもあるマリヤム・モガッダムさんとプライベートでもパート...
(韓国版)ジョゼは自ら身を引いたのか、同情を突き放したのか田辺聖子さんの原作も読んでいませんし、妻夫木聡さんと池脇千鶴さん主演の2003年の映画も見ておらず、昨年末に公開されたアニメ版はその存在すらも知らなかったという「ジョゼと虎と魚たち」初心者ですが、ざっとネット上の予告編やあらすじなどを読んでみますと、この映画は随分趣きが違うようです。時代の変遷や価値観の違い...
よくできた泣けるガール・ミーツ・ボーイだが…今年のアカデミー賞国際映画賞にノミネートされた中国映画です。昨年2020年の大阪アジアン映画祭では観客賞を受賞しています。見れば、そりゃ観客賞受賞でしょうという泣かせる感動ものです。少年の君 / 監督:デレク・ツァンガール・ミーツ・ボーイネタバレあらすじとちょいツッコミチェンニェン、いじめの標的にさ...
セックスシーンと愛、恋、情愛の忘我100分は耐えられるかアニー・エルノー著『シンプルな情熱 Passion Simple』の映画化です。「フランス現代文学の頂点 アニー・エルノー原作、年下男性との愛と性の実体験を赤裸々に綴り衝撃を呼んだベストセラー小説(公式サイト)」とのことです。シンプルな情熱 / 監督:ダニエル・アービッド 映画よりも小説を読む...
ウィリアム・ニコルソン監督自身の両親追憶映画すごい映画ですし、面白いです。老年夫婦の離婚話ですが、その離婚話自体が類似の映画とは随分かけ離れていますし、台詞だけではなく頻繁に語られる詩などの言葉にいろいろ意味が込められているようです。とにかくいろんな見方ができる映画で、ウィリアム・ニコルソン監督(脚本も)は一体どこへ持っていこうとしているのか考えさせられてしまい...
ガイ・リッチー監督のクライム・アクション・コメディマシュー・マコノヒーさん目当てで見た映画ですが、「ビーチ・バム まじめに不真面目」にしたほうがよかったかも(笑)。ジェントルメン / 監督:ガイ・リッチーいきなりネタバレしますが… ネタバレあらすじとちょいツッコミガイ・リッチー監督 いきなりネタバレしますが… 気にしなくていいと思います...
「おしん」の国のクライム映画、イラン・ノワールとなるか…最後まで飽きることなく集中して見られる映画なんですが、でも結局、見終えてなんと評すべきか迷うような映画です。基本的には、警察と麻薬密売組織の戦いを描いたクライム映画ですのでアクションシーンもありますし、サスペンスっぽいところもあります。でもなにか違うんですよね。言うなればまったく価値観の違うところに放り込ま...
これは愛なのか? 同情なのか? 心の空白を埋める自己愛なのか…キム・ヤンヒ監督の長編デビュー作です。といっても、主演のヤン・イクチュンさんの名前で見に行く人が多いのではないかと思いますし、私もそうです。でも見てみますと、意図してかどうかはわかりませんがちょっと変わっていて面白い映画です。詩人の恋 / 監督:キム・ヤンヒ極端から極端へ振れる登場人物...
「銃」2018版のリベンジ版かと期待したのにコメディでした(笑)「銃」で失敗したのでリベンジ版の「銃2020」かと思いましたら、まったくもって同じ程度に映画になっていない映画でした。と言うよりも吉本興業の芸人救済映画なのかもしれません。銃2020 / 監督:武正晴それにしてもわずか2年の間に同じような企画の映画を作るくらいですから、よほど原作の『銃...
男系幻想とジェンダー、セクシュアリティ、宗教、家族再生幻想「シェイクスピアの庭」なんていうタイトルから、シェイクスピア(以下、ウィリアム)が田舎へ戻り穏やかな余生を過ごす話かと思っていましたら、とんでもない、シェイクスピア一家の結構シビアな愛憎物語でした。もちろんフィクションですが、ウィリアム本人にとってはかなり衝撃的な秘密が明らかになりますので、「シェイクスピ...
グザヴィエ・ドランの転換点となるかグザヴィエ・ドラン監督にとって、母親との関係は永遠のテーマなんでしょう。デビュー作の「マイ・マザー(英題:I Killed My Mother)」に始まり、「Mommy/マミー」というそのものスバリのタイトルもありますし、その他ほとんどの作品に母親の影がちらついています。ジョン・F・ドノヴァンの死と生 / 監督:グザヴィ...
ジュディ・ガーランドの最後のロンドン公演を描く名前はよく耳にするのに、具体的にはどんな人かも、顔さえも知らない有名人というのが結構います。ジュディ・ガーランドさんもそうで、「オズの魔法使い」のドロシーの人ということとライザ・ミネリのお母さんということくらいしか思い浮かびません。そのジュディ・ガーランドさんの亡くなる直前の半年くらいを描いた映画です。演じたレニー・...
五体投地のシーンが少ないのは残念、基本は親子ものでしたチベット仏教の巡礼といえば「五体投地」です。「ラサへの歩き方 祈りの2400km」で知りました。無茶苦茶いい映画でした。もう一度見たいです。これもそういう映画かなと思いましたがちょっと違っていました。巡礼の約束 / 監督:ソンタルジャ物語の背景や契機となるのはラサへの巡礼ですが、映画のテーマは親...
人は記憶を失えば他者と世界を共有できない、しかし…つい3ヶ月ほど前に「わたしは光をにぎっている」を見たばかりの中川龍太郎監督の「静かな雨」です。原作ものは初めてとありますのでおそらくオファーがあったのでしょう。静かな雨 (文春文庫)作者:宮下 奈都出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2019/06/06メディア: 文庫 映画を見て...
ヒトラーが吹っ飛ぶ寓話的なヒューマンドラマナチスを題材にしてコメディ映画を撮るとすれば、それがいいことかどうかは別にしますとヒトラーを茶化すことが一番に思いつきそうですし、そんな映画があったようにも思います。しかし、この「ジョジョ・ラビット」は、そうしたシニカルな手法をとらず、主人公に10歳の少年をおいて寓話的なヒューマンドラマに仕上げています。原作があるよう...
カトリーヌ・ドヌーブとジュリエット・ビノシュであればこその映画是枝裕和監督のパルムドール受賞後第一作です。引用の画像を見てのとおり、俳優はカトリーヌ・ドヌーブ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークという国際的スター、そして、IMDbを見た限りおもだったスタッフに日本人は入っていないようです。もともと是枝監督は台詞を大切にする監督だと思いますが、さらにこ...
ホアキン・フェニックスの代表作となるか? 多分なる。今年2019年ベネチア国際映画祭の金獅子賞受賞作品です。とにかく、ホアキン・フェニックスがすごい! につきる映画です。ほぼ一人芝居です。ジョーカー / 監督:トッド・フィリップスこの映画のために24キロ減量したと言われていますが、掛け値なしのその通りで誰だかわからないくらいです。その姿を見せる画...
新聞記者というより内閣情報調査室の官僚たちという映画政治ネタを映画にするのは難しいですね。圧力があるからということではなく、リアリティを求めれば地味だと言われたり、エンターテイメントに走ればわかっていないと言われたり、まあ、映画の題材には向いていない、特に日本ではということだと思います。新聞記者 / 監督:藤井道人この映画も、これだけ現実を模して、...
ミキ・デザキ監督のビデオ論文のような映画こうした映画にネタバレというものがあるとは思いませんが、以下、この映画の結論について書いていますので、気になる方はご注意ください。主戦場 / 監督:ミキ・テザキこれは映画というよりもビデオ論文みたいなものです。だからダメという意味ではなく、ミキ・デザキ監督の論文を読んだ(映像作品で見た)という感覚の映画という...