ヒロシマ・モナムール、王女メディア、そして母親とは何者か… 昨年2022年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞の審査員グランプリを受賞しています。現在、この映画の公開に合わせてアリス・ディオップ監督が来日されており、前作のドキュメンタリー「私たち」も上映されるようです。サントメール ある被告 / 監督:アリス・ディオップ母親と...
センスと技術力は感じるが、またも物語は語れても物語を生み出せない日本映画の現状の一作か… 劇場公開時、見逃していますのでDVDです。監督、脚本は土井笑生さん、商業デビュー作とのことです。出演は倉悠貴さんと見上愛さん、どちらも初めて見ます。衝動 / 監督:土井笑生2020年の青春残酷物語2020年東京渋谷、名前を失っ...
ウクライナ、ポーランド、ユダヤの三家族、三人の子どもたちが歴史の波に翻弄される クリスマスキャロルの定番とも言える「キャロル・オブ・ザ・ベル」は「シェドリック(Shchedryk)」というウクライナ民謡をもとにした曲に英語の歌詞がつけられたものだそうです。その「キャロル・オブ・ザ・ベル」が1939年からの戦火の下でしあわせを呼ぶ(はずの…)曲として象徴的に...
前半の良さを後半が台無しに。主演の花瀬琴音さんを生かしきれず、パターンドラマに終わる… チェコにカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭という映画祭があるとのことで、この「遠いところ」は、昨年2022年のコンペティション部門に出品されたとあります。かなり大規模な映画祭です。この作品の受賞はなかったようですが、過去のグランプリ受賞作を見てみましたら、見ている映画では「と...
穴から見える世界は馬鹿な男たちの争いごとであり、破壊され、人が死んでいくだけの何も残さない世界 2014年7月頃のウクライナ東部ドンバス地方の物語です。2023年の今から見ますと、どうしても現在進行中のロシア・ウクライナ戦争という視点で見てしまいますが、そこに力点が置かれた映画ではありません。映画の制作も、2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以...
原題は「Little Kingdom(小さな王国)」、邦題に惑わされず見れば寓話的か、コメディか… えらく情緒的なタイトルである上にメインビジュアルが男女の濃厚なキスシーンという映画がひっそりと公開されていました。2019年のスロバキア映画です。未来は裏切りの彼方に / 監督:ペテル・マガート邦題に惑わされないように…...
逆です。作り話っぽい話は作り話っぽくやらないと現実感は生まれませんよ… 「山女」のタイトルや映画.comの概要を読む限りではさすがに興味は持てませんでしたが、割といい印象が残っている「アイヌモシリ」のタイトルが目に飛び込んできましたので見てみました。山女 / 監督:福永壮志ファンタジーで描くべきじゃないの…さすがに...
前半は兄ヴィットリオへの追悼の意味合い、そして後半はピランデッロの不条理劇(小説)「釘」の映画化です 監督のパオロ・タヴィアーニさんは長くタヴィアーニ兄弟監督として活躍されてきた弟さんの方で、兄ヴィットリオ・タヴィアーニさんは2018年に88歳で亡くなられています。記憶のあるところ(内容には記憶がないが…)では、兄弟監督として撮った「塀の中のジュリ...
タクシードライバー系? カジノもの? いやいやピュア・ラブストーリーでした いまだに「タクシードライバー」や「ポール・シュレイダー × マーティン・スコセッシ」で売らなくちゃいけないというのはどうなんだろう、などと思いながら見に行きましたら…いやいや、結構面白かったですし、びっくりしました(笑)。カード・カウンター / 監...
アンドレア・ライズボローの演技は評価されるべきもののスウィーニーのいい人ぶりと地域コミュニティの暴力性が気になる… アルコール依存症の女性が心やさしき男性の助けで再起するという話です。現実感はありませんが過剰さがなく見やすい映画です。主演のアンドレア・ライズボローさんが今年2023年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされています。受賞したのは「エブリシン...
新人俳優ジュリー・ルドリューがノンバイナリー的存在感を放つニューシネマ クロスビトゥームという、バイクの前輪を上げて走るなどアクロバティックな乗り方で公道を疾走するバイカーたちの話です。ただし、それはあくまでも背景であって、映画のポイントはその集団の中に自らの居場所を見つけようとするひとりの女性(あえてこう書くが、実は違う…)の物語です。...
リーアム・ニーソンに古典的な男性像タフでダンディなハードボイルド・ヒーローはあうのだろうか… リーアム・ニーソンさん、出演作100本ですか、すごいですね。すべてが主演というわけではありませんが、単純に1年に2本撮ったとして50年です。ああ、デビューから45年らしいです。ただ、この古典的な探偵ものフィリップ・マーロウはリーアム・ニーソンさんに合います...
ドキュメンタリー監督らしいじわーと効いてくる映画だが、公開のタイミングを逸している… ニューヨーク・タイムズがアメリカの映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインのセクシュアル・ハラスメントに関する告発記事を発表したのが2017年10月5日、それを契機に世界中で「#MeToo運動」が巻き起こりました。もちろん現在進行中でもあります。この映画は、...
イスラム国モロッコの同性愛と夫婦愛とカフタン愛 マリヤム・トゥザニ監督「モロッコ、彼女たちの朝(Adam)」に続く長編二作目です。昨年2022年のカンヌ国際映画祭「ある視点部門」で国際映画批評家連盟賞を受賞しています。青いカフタンの仕立て屋 / 監督:マリヤム・トゥザニミナとハリム少ない台詞と抑制された演出は前作「...
退職金あげるよと言えなければ人生変わらないと思いますが… 2019フィルメックス新人監督賞受賞作とあり、4年前の受賞作を今なの? と思いましたら、「新人監督賞は商業映画の実績がない新鋭監督が対象で、シナリオと過去の映像作品をもとに選考」ということらしく、「賞金50万円のほか、木下グループが5000万円を上限に製作費を提供、劇場公開に向けて企画開発や製作・配...
こんな話を書けるのは、2023年現在の日本の社会環境においては女性しかいません(笑)。 特に期待を持ってというわけでもなく、広瀬すずさん、久しぶりだなあなどと思いポチッとしてみました。と思ったのですが、何年ぶりだろうと出演作をみてみましたらちょうど1年前に「流浪の月」を見ていました(笑)。水は海に向かって流れる / 監督:前田哲...
人は誰もが愛するものを殺す、それでも人は死なない(オスカー・ワイルド) フランソワ・オゾン監督は多作なんてもんじゃないですね、年1本ペースで撮っています。この「苦い涙」も最新作ではなく、もう1本「Mon crime(The Crime Is Mine)」という映画があります。この映画の前にはつい数ヶ月前に「すべてうまくいきますように」、そしてその1年くらい...
河林満さんの原作のラストを知れば思わずAmazonでポチッ… 原作者の河林満さんも監督の高橋正弥さんも初めて目にする名前です。河林満さんは2008年に57歳で亡くなられているようです。いま河林満さんのウィキペディアを読んでいましたら、ラストシーン、ああやっぱりねということが書かれています。渇水 / 監督:高橋正弥原作は河林満...
あなたは男社会を赦す?戦う?逃げる?と映画が問うてくる 「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」のサラ・ポーリー監督、あれは2007年の映画でしたので16年ぶりということになります。監督自身はその間にも2、3本の映画やテレビドラマを撮っています。この「ウーマン・トーキング 私たちの選択」の主演はルーニー・マーラさん、私には「キャロル」を見た以降、評価の...
幸せは誰もがそう思えるものではなく、自分自身が幸せと思えればそれでいいのだが… つい数日前にカンヌ国際映画祭で脚本の坂元裕二さんが脚本賞を受賞しており、話題性の上でもとてもタイミングのいい公開です。それにしても是枝裕和監督はカンヌに出品する映画はすべて何らかの賞を受賞しています。「ベイビー・ブローカー」「万引き家族」などなど、と思い調べてみましたらそうでも...