11歳の少年は世の不公平や偏見差別を肌身を持って体験する ジェームス・グレイ監督、見ているのは「エヴァの告白」だけです。もうほぼ10年前になりますが、マリオン・コティヤールさんを見に行った映画でよく覚えています。で、この「アルマゲドン・タイム ある日々の肖像」ですが、邦題の副題の言葉の選択が間違っています。日本語として「ある日々の肖像」なんてのはお...
原作をなぞっているように感じられ、映画としての力が感じられない… 2017年にイタリアの文学賞ストレーガ賞を受賞しているパオロ コニェッティ著『帰れない山(Le otto montagne)』が原作の映画です。原題の意味は「8つの山」です。映画のなかでその意味が語られます。監督、脚本はフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲンとシャルロッテ・ファンデル...
レア・セドゥの魅力が裏目か…、ミア・ハンセン=ラヴ監督の新機軸か… 自伝的、あるいは自分の家族を題材にすることが多いミア・ハンセン=ラヴ監督の最新作、昨年2022年のカンヌ国際映画祭監督週間で上映され、ヨーロッパ・シネマ・レーベル賞を受賞しています。前作の「ベルイマン島にて」では自分自身ですし、「未来よ こんにちは」でイザベル・ユペールさんが演じた...
ポルノスターは社会の底辺で永遠の夢を見る… 「タンジェリン」「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」のショーン・ベイカー監督、一昨年2021年のカンヌ国際映画祭のコンペティションに出品されています。「TITANE/チタン」がパルムドールの年です。レッド・ロケット / 監督:ショーン・ベイカー2016年はトランプの年時代の...
モンゴルっぽい映画ではなく、真モンゴル映画 日本の公式サイトに「“モンゴル映画”と言えば、草原を舞台にした作品を想起する人が多いはず」とあり、確かにそうだなあと思いながらも、さてどんな映画があるのだろう?と考えて思い出されるのは「モンゴル映画っぽい映画」であって、そもそも「真モンゴル映画」を見たことがないことに気づきます。でも、この「セールス・ガー...
概念と表層で戯れる… 「ミヒャエル・ハネケ監督に師事したC.B. Yi監督」の宣伝文句でポチッです。若い監督かと思いましたら、意外にも1976年生まれの47歳の監督です。映画は2021年の製作でその年のカンヌ国際映画祭ある視点部門で上映されています。「母の聖戦」「アフター・ヤン」「母へ捧げる僕たちのアリア」「LAMB ラム」「ONODA 一万夜を越えて」が...
着想の面白さだけで映画はもつか… 着想が面白い映画です。反面、もったいない感じがする映画でもあります。監督は阪本順治監督、最近の映画では「弟とアンドロイドと僕」「半世界」を見ています。せかいのおきく / 監督:阪本順治青春映画だったの?ラストシーンでしたか、章のタイトルでしたか、どこかに「青春」という言葉が出てきたと記...
ピュアで美し過ぎるがゆえに作り込み感が気になる… 「僕たちの家に帰ろう」のリー・ルイジュン監督です。2014年の映画でしたので8年ぶりになります。そのレビューでは「私が審査委員長なら、パルムドールでも、金熊でも、金獅子でも何でもあげちゃいます」と書いている監督です(笑)。なお、この「小さき麦の花」の前にもう1本「Lu Guo Wei Lai (Wa...
フランス的個人主義と家族主義が同居する映画 前作が「アマンダと僕」のミカエル・アース監督の最新作、昨年2022年のベルリン国際映画祭のコンペティションで上映されています。主演はシャルロット・ゲンズブールさん、こちらはたくさん見ていますが、なにが記憶に残っているかと言われれば、やはりラース・フォン・トリアー監督の「アンチクライスト」「ニンフォマニアック」あた...
担当制サスペンス・ホラーか(笑)… なんとなく面白そうと感じてポチッとした映画。同じくアレックス・デ・ラ・イグレシア監督の知らない映画「気狂いピエロの決闘」がヴェネツィア国際映画祭で監督賞と脚本賞を受賞していると目にしたことも影響したかもしれません。ベネシアフレニア / 監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア担当制サスペンス・...
見えないなにかが見えてくる… 見ようと思ったきっかけは佐近圭太郎監督のキャリアに「わたしは光をにぎっている」の脚本とあったことと、監督補佐ってなんやねんとは思いながらも「静かな雨」にクレジットされていたことからです。わたしの見ている世界が全て / 監督:佐近圭太郎見えないなにかが見えてくる…台詞でもない、画でもない、見...
この乱雑さは気負いの現れ… 「ビー・ガン[凱里ブルース][ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ]フー・ボー[象は静かに座っている]に続く中国第8世代新たなる才能の発見チウ・ション|仇晟 鮮烈の長編デビュー作」と紹介されています。ただこの映画、2018年製作の映画です。郊外の鳥たち / 監督:チウ・ション新たなる才能か、未...
美しき自然の中の美しき女性たちの佇まい… 映画.comのレビューの点数がかなり低いことで目につき、ひとつふたつレビューを読んで逆に興味がわいた映画です。それに、監督の伊藤ちひろさんの名前になんとなく記憶があり、このブログ内を検索してみましたら、「窮鼠はチーズの夢を見る」のシナリオがいいと褒める際に、何の根拠があったのかは忘れましたが、その映画の脚本の堀泉杏...
イランの女性連続殺人事件に見る女性蔑視の構造… 前作の「ボーダー 二つの世界」では、見る者のざわざわ感を呼び覚ますダークファンタジーで驚かせてくれたアリ・アッバシ監督です。アッバシ監督はその長編2作目にして、2018年のカンヌ国際映画祭ある視点部門でグランプリを受賞しています。そして、この最新作では主演のザーラ・アミール・エブラヒミさんが2022年のカンヌ...
日本の多くの同世代に見られることを望むのだが… フィンランドの青春映画です。フィンランドの映画は結構見ていますが思い返してみますとかなり多彩です。どの国にもいろんな映画があるという当然といえば当然のことなんですが、つい最近の「コンパートメントNo.6」、これは大人の映画でオススメです。フィンランドの国民的画家ヘレン・シャルフベックを描いた「魂のまなざし」...
父娘、ゲイ、宗教、そして人は人を救えるのか… うんざりするほど(笑)予告編を見せられた「ザ・ホエール」です。その印象からベタな父娘ものだろうとパスかなあと思っていたのですが、私にとっては「ブラック・スワン」以来のダーレン・アロノフスキー監督ですので思い返してポチッとしました。ザ・ホエール / 監督:ダーレン・アロノフスキー原...
映画の作り方、教えます 「映画作りに情熱を燃やす若者たちを描く70年代青春グラフィティ」という映画です。このコピーと映画のメインビジュアルを見れば内容はおおよそ想像がつきます。でも驚くのは、これを撮ったのが60歳の小中和哉監督であり、にもかかわらず、と言うのもなんですが、どちらかと言いますとノスタルジーよりも青春のみずみずしさが感じられる映画です。...
人生崖っぷちのタクシードライバーと人生終末の92歳女性が心を通わすファンタジー タクシーを使ったフランス映画と言えば、ずばりタクシーがマルセイユの街なかを爆走するリュック・ベッソンの「TAXi」ですが、あれはカーアクションですし、街もパリではなくマルセイユです。フランス映画というだけでまったく関係のない、それも正反対ともいえる映画を引き合いに出して...
オリジナルへのリスペクトと何かが抜け落ちた物足りなさ 言うまでもなく黒澤明監督の「生きる」のリメイクです。脚本はカズオ・イシグロさんです。生きる LIVING / 監督:オリヴァー・ハーマナスオリジナルに忠実なリメイク版オリジナルへのリスペクトが感じられるリメイクです。黒澤明監督の「生きる」をほぼ踏襲している印象です。...
青春友情物語のテッパンもの、ただ小学6年の子どもたちだけど… こんなに邦画を見るようになったのはここ最近のことですので「百円の恋」もタイトルに記憶があるくらいで足立紳監督の名前も初めて目にしました。ただ、どんな映画を撮っている方かとキャリアを見ていましたら、結構いい印象で記憶に残っている「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」の脚本にクレジットされていました。...