ジャン=マルク・ヴァレ監督追悼、2005年からの1970年代青春回顧 昨年2021年の12月25日に亡くなったジャン=マルク・ヴァレ監督の2005年の映画です。亡くなった時はケベック州の湖畔のコテージにひとりだったそうです。警察発表では「Mr. Vallée’s death was not caused by the intervention of...
万雷の拍手をどうみるか、感動?疑問?気持ち悪い? 2020年のカンヌ映画祭のオフィシャルセレクションとして上映された映画です。この年は新型コロナウイルス蔓延のために映画祭が中止となり、全56作品がオフィシャルセレクションとして「カンヌレーベル」のくくりで各地の映画祭で上映されています。この映画はコメディ部門の一作としてアングレーム映画祭で上映されています。...
ヌールはここを出ていくと宣言するが… フランスのヨアン・マンカ監督の長編デビュー作、昨年2021年のカンヌ映画祭のある視点部門で上映されています。マンカ監督は1989年生まれの32歳です。母へ捧げる僕たちのアリア / 監督:ヨアン・マンカマンカ監督、シュムラさんに訴えられる?ヨアン・マンカ監督のウィキペディアを見て...
ロシアの新米教師ふたりの1年だが、なぜ退職に解雇ですますのだ?! ロシアの新米教師ふたりがモスクワから地方都市へ赴任した1年間を撮ったドキュメンタリーです。2020年製作ですので、3、4年前に撮られているものと思われます。ヘィ!ティーチャーズ! / 監督:ユリア・ヴィシュネヴェッツ日本でいえば学級崩壊ロシアの義務教育は...
絶滅収容所を生き延びた実在のポーランド人ボクサーの3年間 アウシュヴィッツへ最初に大量輸送された囚人のひとりでありながら戦後まで生き延びたポーランド人ボクサー、タデウシュ・ピエトシコフスキさんの物語です。1991年に74歳で亡くなっています。アウシュヴィッツのチャンピオン / 監督:マチェイ・バルチェフスキタデウシュ・“テ...
プラハの春の時代の宗教物語、あるいは脱宗教か? 1967年製作のチェコスロバキア(現在はチェコ共和国)の映画です。監督はフランチシェク・ヴラーチルさんという方で1999年に75歳(くらい)で亡くなっています。日本初公開とのことですが、なぜ今この映画か、発掘してきた方に聞いてみたいですね。と思ったんですが、IMDbを見ましたら、2000年代に入ってか...
90分全編ワンカットでみるレストランオープントラブルもの 90分ワンカットが売りの映画です。何年かに一度全編ワンカットにとらわれた映画制作者が現れます。映画制作者にはひきつける何かがあるようです。ボイリング・ポイント/沸騰 / 監督:フィリップ・バランティーニ全編ワンカットの魅力とはあらためて言うまでもなく、全編フイル...
戦闘は終わっても戦争は終わらない この映画は、2015年にノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさんの代表作『戦争は女の顔をしていない』に着想を得て生まれたものとのことです。監督は、映画制作当時26、7歳(現在31、2歳)のカンテミール・バラーゴフ監督、戦闘は終わっても決して終わることのない戦争を描いています。2019年のカンヌ...
脚本家渡辺あやの青春は挫折の記憶か?そしてノスタルジー 「ワンダーウォール 劇場版」に出演していた須藤蓮さんの初監督作品です。脚本は渡辺あやさん、「ワンダーウォール」の脚本も渡辺さんですのでその縁のようです。逆光 / 監督:須藤蓮渡辺あや、須藤蓮渡辺あやさんも須藤蓮さんもどんな方かはっきりとは認識できていませんので...
近代的自我の葛藤のテーマがぼんやり、それは現代的? 島崎藤村著『破戒』の映画化です。1948年の木下恵介監督作品、1962年の市川崑監督作品に続く3度めです。監督は前田和男さん、初めて見る監督です。破戒 / 監督:前田和男水平社創立100周年記念なぜ今映画化?と思いましたら、水平社創立100周年記念ということで部落...
小説の映画化は感想を映像にすることではない 『むらさきのスカートの女』で2019年上期に芥川賞を受賞した今村夏子さんのデビュー作『こちらあみ子』の映画化です。原作は2010年の作品ですが、デビュー作にして太宰治賞、三島由紀夫賞を受賞しています。2020年に芦田愛菜主演で映画化された「星の子」も今村夏子さんの原作です。監督の森井勇佑さんは現在37歳、...
ジェンダー、ポリコレを気遣うラブコメ 「母の残像」「テルマ」のヨアキム・トリアー監督の最新作、昨年2021年のカンヌ映画祭でレナーテ・レインスベさんが女優賞を受賞しています。私は最悪。 / 監督:ヨアキム・トリアー自分探しものからラブコメへ20代後半のユリヤ(レナーテ・レインスベ)は、自分の進むべき道が見つかりませ...
時代の波に抗うことの意味を問う 監督のアレックス・カミレーリさんは本人が生まれる前に両親がアメリカに移住したマルタ系アメリカ人です。ですので、おそらく自らのアイデンティティに向き合うことから生まれた映画だと思います。地中海のマルタ島でルッツという伝統の木造小型船で漁をする青年の苦悩を描き、本人名で青年を演じたジェスマーク・シクルーナさんが昨年202...
PTAアンダーソン監督自身のカリフォルニア・ドリーミング ポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作「リコリス・ピザ」、今年3月のアカデミー賞には作品賞、監督賞、脚本賞の3賞にノミネートされていましたが受賞はありませんでした。ちなみに作品賞は「コーダ あいのうた」でした。タイトルの「リコリス・ピザ」は1986年まで南カリフォルニアにあったレコードシ...
ホン・サンス監督だと思ってみないとその良さは感じられないかも… ホン・サンス監督は本当に多作の監督です。この「イントロダクション」が2020年の製作で、同時公開されている「あなたの顔の前に」が2021年製作となっています。ただどちらも66分と85分と短いですし、「あなたの顔の前で」は見ていませんのでおそらくですが、どちらもダイアログでつないだシンプルなつく...
1970年から半世紀、女性解放は遅々として進まず、特に日本では… 1970年前後は第二波フェミニズムの時代であり、日本でもウーマン・リブ(Women's Liberation Movement)と呼ばれた女性解放運動が大きなムーブメントとなっていました。そうした時代の1970年、イギリスで行われたミス・ワールド世界大会の会場で女性解放を訴えようと抗...
岸井ゆきの、ムロツヨシ2人の豹変力(?)俳優力が光る ????田恵輔(吉田恵輔)監督、振り返ってみれば「ヒメアノ~ル」からすべて見ています。「犬猿」「愛しのアイリーン」「BLUE/ブルー」「告白」、好みとして合うわけではないのですが、うまいなあと思うところが多い監督です。よかったのは「犬猿」と「BLUE/ブルー」です。神は見返りを...
疑似家族誕生ロードムービーだが、シナリオが薄っぺらい 是枝裕和監督作品です。今年2022年のカンヌ映画祭コンペティションに出品され、ソン・ガンホさんが男優賞を受賞しています。また、作品としてはキリスト教団体が選ぶエキュメニカル審査員賞も受賞しています。俳優はもちろんのこと、スタッフも全員(かな?)韓国のようです。ベイビー・ブローカ...
見どころは三人の俳優の演技、物語は短絡的 三人三様という言葉があり、チェーホフにも「三人姉妹」という戯曲がありますが、この映画は「三姉妹」、性格や生活環境が異なる三姉妹が父親の誕生会に集い、心に閉ざしていた幼い頃の思いを爆発させることであらためて姉妹の絆を深めるという物語です。監督はイ・スンウォンさん、初めて見ます。三姉妹を演じるのは「愛の不時着」...
日本じゃ安楽死も集団で…という近未来ディストピア 今年2022年のカンヌ映画祭「ある視点」部門でカメラドールのスペシャルメンションに選ばれた作品です。カメラドール受賞を争ったという意味でしょう。早川千絵監督の長編デビュー作で、2018年のオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」の一編をあらためて長編として制作したものとのことです。その...