ゴゴベリゼ監督自身が過去の思いと折り合いをつける映画か… ジョージアのラナ・ゴゴベリゼ監督の2019年の映画です。現在93歳とのことです。公式サイトにはジョージアを代表する映画監督とありますが、この「金の糸」の前は1992年の「ペチョラのワルツ(Valsi Pechoraze)」という映画が最後であり、ちょうどジョージアが1991年のソ連邦解体後に独立して...
深層なき愛憎うずまく青春音楽物語かな 塩田明彦監督の映画を初めて見ました。すごいですね。先が読めないですし、その先はと言えばとんでもないことのほうが多いのですが、ああ、こういうこともあるかもしれないなあと妙に納得がいきます。青春音楽映画のようにもみえますが、「青春」にも「音楽」にも甘えていないところがいいです。麻希のいる世界 / ...
レオは認知症の後期、ひとりで置いておける状態ではないと思うが… サリー・ポッター監督が、若年性認知症を患った弟さんを介護した(公式サイト)ことから着想したという映画です。認知症の父親レオを演じているのはハビエル・バルデムさん、そしてその娘モリーをエル・ファニングさんが演じています。選ばなかったみち / 監督:サリー・ポッター...
建物にしみ込んだ記憶への詩的な鎮魂ファンタジー ユーリイ・ガガーリン人類で初めて宇宙へ行ったソ連の宇宙飛行士であり軍人です。1961年のことです。この映画はその伝記ものでも何でもありません。パリ南東に隣接するイヴリー=シュル=セーヌというコミューン(地方自治体のこと)にある(あった)「ガガーリン団地(CitéGagarine)」と名付けられた共同住...
ナチを欺いた嘘のような本当の話、なのだが… 第二次世界大戦中、イギリス諜報部がイタリア侵攻作戦を撹乱するために死体に偽の機密文書を持たせて地中海に流し、それをナチスドイツに回収させ信じさせようとしたという、嘘とも本当ともつかないような本当にあった話の映画です。オペレーション・ミンスミート ーナチを欺いた死体- / 監督:ジョン・マ...
翻訳家の男の存在感が足りません。ミスキャストでしょう。 もう2年前になりますが、この映画の監督の前作「黒四角」をDVDで見て、こういう映画をきっちり撮れる監督が日本にもいるんだ(劇場公開される映画でという意味)と興味を持ち、さらにさかのぼって宮﨑あおいさんとARATA(当時)さんの「青い車」まで見てしまったという奥原浩志監督の最新作です。2年前とい...
社会システムの欠陥を個人の問題にすり替えてはいけない すごい映画ですね。憎悪や悪意など何もないのに次から次へと人が傷ついていき、挙げ句の果てに…という、救いなし、癒やしなし、不条理の極みの映画です。と思ったのですが、よくよく考えれば…と思いなおした映画です。イラン映画です。監督は、主演でもあるマリヤム・モガッダムさんとプライベートでもパート...
正統派伝記映画にすべきだった 映画の邦題というのはどんなタイトルをつけてもあれこれ言われるものだとは思いますが、それにしても、この「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」はもう少し考えないと長すぎて肝心の「ビリー・ホリデイ」が三点リーダーに省略されてしまいます。「奇妙な果実」とかにすればよかったんじゃないでしょうか。ビリー・ホリデイの代...
男はケーキにまみれて自らの過去に拘泥し、女は朝日にまみれて未来を思う 日本映画は大丈夫か? と思います。松居大悟監督までもが…とかなり心配になります。この手の恋愛映画、それぞれ若干趣きは違うにしても過ぎ去りし過去を引きずった感傷的恋愛映画が立て続けに送り出されています。「ボクたちはみんな大人になれなかった」「明け方の若者たち」たまたま私が見...
ゴッドファーザーに囚われ続けるマフィアもの いわゆるマフィアものの映画でかなり渋くつくられていますので、そこそこ見ごたえはあります。ただ、人生の終わりを感じ始めた(のだと思う)大物マフィアが自分自身の生涯を語る現在とそのマフィアの過去が交錯して描かれますので、わかりにくい部分も多いですし集中しづらいところがある映画です。それにしても邦題を「ギャング...
面白い!沖縄コザ舞台のタイムスリップ&入れ替わり映画 これ、むちゃくちゃ面白いですし、泣けますし、感じますし、つくりもうまいです(多分、結果として)。脚本、監督の平一紘さんって誰?ミラクルシティコザ / 監督:平一紘沖縄の沖縄による、日本全国のための映画この映画は、第3回未完成映画予告編大賞でグランプリを受賞した作...
俳優の無駄遣い。新しい女性アクション映画を。 このところ日本映画を見ることが続いていますのでちょっと気分転換にということと、ジェシカ・チャステイン、ペネロペ・クルス、ファン・ビンビン、ダイアン・クルーガー、ルピタ・ニョンゴという錚々たるメンバーということと、そして、さらに女性が主人公のスパイアクションものということで見に行ったのですが…...
その時生きている空間をその時の出会いで撮った映画 ホームビデオみたいな映画です。だからといってダメというわけでもありませんが、さすがにこれを2時間見続けるのはつらいです。春原さんのうた / 監督:杉田協士なにがホームビデオ的なのか?ひとことでいいますと、映画を撮っている人の、ここでは杉田協士監督ですが、その人のなに...
ファンタジーだが、新鮮な感覚を感じる 身体的性と性自認が一致している女性ユイとFtMトランスジェンダーの真也の10年にわたる恋愛を描いた映画です。いやあ、面白かったです。社会からの偏見や差別という視点ではなく、それこそユイと真也の「フタリノセカイ」に絞って描いていますのでとても新鮮な感じを受けました。フタリノセカイ / 監...
終始正論で迫られ涙を流さざるを得ない 世の中の不条理に対して終始正論で迫ってきますので涙を流さざるを得なくなる映画です。保護司 阿川佳代交錯する阿川佳代と工藤誠の物語阿川佳代の物語(現在)工藤誠の物語(現在)拳銃強奪、連続殺人事件工藤兄弟の物語(過去)阿川佳代の物語(過去)そして、事件は終幕へ阿川、工藤を説得する...
批評性のない社会派映画は見ていてつらい 久しぶりに後味の悪い映画を見ました。いや、後味だけではなく中味(そんなものはないから途中の味?)もです。映画の中で起きることに対してというわけではなく、そもそもの制作者たちの価値観がとても気になります。映画の、ひいては制作者の価値観が気持ち悪い性的暴行を許容しているかのようホラー映画のようなセットはな...
しゃかりきにドラマを求めてもドラマは生まれない 「岬の兄妹」の片山慎三監督です。「岬の兄妹」ではかなり辛辣なことを書きましたのでよく覚えています。この「さがす」が商業デビュー作とありますので、あれは自主制作だったということです。そして、それが評価されたということでしょう。しゃかりきにドラマを求めても核がなければドラマは生まれない楓はど...
CODAはChildren of Deaf Adults、また主題とは違うもの 聴覚障害を持つ両親と兄の手話通訳者として家族を支える高校生ルビーが、自分の進路に悩み、そして羽ばたくという青春映画です。2014年の「エール!」というフランス映画のリメイクとのことです。見ていませんので予告編で触りを見てみましたら、つくりはほぼ同じような印象です。...
人はひとりでは生きられない、思い出にも生きられない 人間とロボットやアンドロイドとの恋愛を描いた映画ってたくさんありそうですが、なかなか思い浮かびません。ググってみましたら「her/世界でひとつの彼女」「エクス・マキナ」、どちらも見ていませんので浮かばないはずです。考えてみれば「ブレードランナー」も、あまり直接的なシーンはありませんが「ブレードランナー20...
これは映画でさえないかも知れない… ミレニアル世代アーティスト「アマリア・ウルマン」さんの映画です。アマリア・ウルマン映画ではないかも知れないこれを映画としてみれば…で、結局なんなのかエル プラネタ / 監督:アマリア・ウルマンアマリア・ウルマンアマリア・ウルマンさん、上の画像の女性ですが、初めて名前を...