おとなの事情(原題は"赤の他人")と言いながら、映画の中で起きることは子どもの行い シチュエーション・コメディのジャンルかと思いますが、ただ見ようによってはかなりシリアスで、身に覚えのある人は笑ってはいられないかも知れません(笑)。いや、逆かな?たとえば夫婦で、あるいはカップルでこの映画を見に行ったとすれば、こりゃやばいと思い当たる人は大笑い...
悪の凡庸さ、あるいはミルグラム効果は日々起きている 邦題にヒトラーやナチスとつけて(多分)注目度を高めようとするのは日本の映画界の常套手段だと思いますが、最近ではアイヒマンもよく見かけるようになりました。この映画の邦題「アイヒマンの後継者」は、ひねりすぎていて分かりにくいのですが、多分、誰もが「アイヒマン」になり得るという意味なんでしょう。1961年、イェール大...
これが今のイギリスのリアルか!? 2016年カンヌ、パルム・ドール 公式サイトに、ケン・ローチ監督は「前作の『ジミー、野を駆ける伝説』を最後に映画界からの引退を表明していた」とありますが、引退? 知りませんでした。その程度の?と言われそうですが、実はケン・ローチ監督のファンでして、あの画からにじみ出るやさしさにどの映画を見ても涙がこぼれてしまいます。で、その「引...
恋に悩む男女におすすめ、大人になるために。 「恋人たちの失われた革命」以降ですのでごく最近のものしか見ていませんが、フィリップ・ガレル監督、一貫して男女の関係を撮っている印象です。モノクロへの思いも強いのでしょうか、この「パリ、恋人たちの影」もそうですが、「恋人たちの失われた革命」「ジェラシー」「愛の残像」がそうでした。それに、極めてシンプルに、余計なものは一切...
ロケ地は桑名の六華苑か? タイトルや宣伝イメージ(下の画像)を見ても好奇心をそそられることもなくスルーしていたのですが、ふと監督名に目がいき、あららパク・チャヌク監督なら見ておかなくちゃということで見てきました。この監督、結構見ているように思うのですが、「オールド・ボーイ」しか思い出せなく、ウィキを見てみましたら、ああそうだそうだ、「親切なクムジャ...
ジョエル・エドガートンのストイックさにしびれる 「ラヴィング対ヴァージニア州裁判」という史実の映画化です。アメリカには(1967年時点で)異人種間結婚を禁じる法律というものがあり、それに反して結婚したヴァージニア州の黒人女性ミルドレッド・ラヴィングさんと白人男性リチャード・ラヴィングさんが起こした裁判とのことです。このことは初めて知ったことですが、あらためて考え...
これに金熊を与えなかった審査員が信じられない! 「天安門、恋人たち」「スプリング・フィーバー」のロウ・イエ監督、2014年の作品です。なぜこんなに公開が遅くなるのか不思議ですね。一般的にの話ですが、映画祭で評価の高い映画は逆に一般公開が難しいのかもしれません。この映画も2014年のベルリンで銀熊を受賞しています。ただ、芸術貢献賞(Outstanding Artis...
難民の死体のシーンは監督の葛藤の結果のようです ジャンフランコ・ロッシ監督、ドキュメンタリーでありながら(というのも変ですが…)、2013年の「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」がヴェネチアで金獅子、この「海は燃えている」が昨年2016年のベルリンで金熊、快挙そのものでしょう。監督がドキュメンタリーというものをどう考えているか、記者会見でこんなことを語っています。...
理不尽で不条理な国境線が個人や家族を破壊する キム・ギドク監督は多作の監督ですね。1996年のデビュー作「鰐」以来、毎年のように発表し続けています。初めて見たのが「春夏秋冬そして春」、それ以降ほとんど見ていますし、過去の作品も DVD になっているものはほとんど見たはずです。やはり印象深いのは、上の作品や「サマリア」「うつせみ」「弓」あたりの屈折した純愛ものや現...
さすがにこの邦題はまずいでしょう、ミスリードし混乱させます。 これは邦題への風当たり強いよなあと、まずは見終えてのの感想(笑)。宣伝担当者は何を考えたんでしょうね? 散文系のタイトルが流行っているから? ラブストーリーのほうが客が入る(かどうかは知らない)から? 感傷的な言葉で高齢者を釣ろうとした?原文は、If it's rainy, You won't see...
クリスティアン・ムンジウ監督、カンヌ監督賞も納得 2007年、「4ヶ月、3週と2日」がカンヌでパルムドール、2012年、「汚れなき祈り」がカンヌで脚本賞と女優賞、そしてこの「エリザのために」が昨年2016年の監督賞を受賞というカンヌ三連勝*1のクリスティアン・ムンジウ監督です。特に「4ヶ月、3週と2日」はかなりインパクトを感じた映画で、冒頭二人の女性(大学生だった...
満島ひかり、妻夫木聡、向井康介(脚本)に期待するも… 原作の著者貫井徳郎さんも監督の石川慶さんも初めて聞く名前なんですが、何となく気になってといいますか、むしろ、満島ひかりさんと妻夫木聡さん、そして脚本の向井康介さんの名前に誘われたのかもしれません。原作は第135回直木賞候補作とありましたので、いつだろうと調べてみましたら2006年ですから10年前ですね。映画は...
ニコール・キッドマンのニコール・キッドマンための映画 ヴェルナー・ヘルツォーク監督、もちろん名前は知っていますし、2,3映画のタイトルも浮かびますが、残念ながら見ていません。これを機会に「アギーレ/神の怒り」「フィッツカラルド」くらいはみてみようと思いますが、どんな映画を撮る人なんでしょう?で、この映画が描いているガートルード・ベルさん、あまり詳しくはありませんが...
グザヴィエ・ドラン、会話劇で新境地 グザヴィエ・ドラン監督、27歳にしてすでに6作目、どの作品も自国だけではなく世界に配給され高評価、どんだけ才能豊かなんだ!という若き天才映画監督です。この映画は俳優もすごいです。ギャスパー・ウリエル、マリオン・コティヤール、レア・セドゥー、バンサン・カッセル、そしてナタリー・バイ、そうそうたるメンバーということなんですが、さらに...
言葉過剰で映画としてはつらいですが、人間も捨てたものではないかもしれない。 もう2年ほど前になりますが、「リスボンに誘われて」のメラニー・ロランが強烈に印象に残っています。メラニー・ロラン出演の映画が初めてというわけでもなかったのですが、映画内のアマデウ同様、エステファニア(メラニー・ロランの役名)にくぎ付けになってしまった記憶があります(笑)。そのこともあり、...
実在したフランスの道化コンビ「フティット&ショコラ」の友情、そして人種差別 「ショコラ」と聞きますと、私はジュリエット・ビノシュとジョニー・デップの映画を思い出してしまいます。映画のタイトル付けもなかなか難しいものです。とは言っても「君がいて、僕がいる」はいただけません(笑)。こちらの「ショコラ」は、公式サイトによれば、20世紀初頭フランスで活躍したラファエル・パ...
キャリー・マリガンが女性参政権運動の闘士を好演 まず、用語の解説(というほどのことではありませんが…)から。原題の Suffragette は、Weblio では「(特に 20 世紀初頭の英国の)参政権拡張論者、(特に女性の)婦人参政権論者」とありますが、もうひとつ Suffragist という言葉があり、こちらは「婦人参政権論者」とあります。こういうことのよう...
他国の話ではない、日本でもやっているでしょう。ノートのカメラは切りましょう。 スノーデン氏が NSA の盗聴などの諜報活動を告発したのは2013年、もう4年前になります。「シチズンフォー スノーデンの暴露」というドキュメンタリーもありました。オリバー・ストーン監督は、この映画について「私個人の考えは作品に一切入れていない。すべてスノーデンが私に語った内容です。NS...
俳優の素晴らしさと丁寧な描写がひかります ヨアキム・トリアー監督、ラース・フォン・トリアー監督の甥だそうです。ただ、監督紹介ではデンマークではなくノルウェー人となっています。それにしても「ラース・フォン・トリアーの遺伝子を受け継ぐ」なんてのは、宣伝文句とはいえ、ちょっとばかりいただけません。長編三作目だそうですが、才能が感じられます。こうした丁寧な人物描写が求め...
「ドライブ」のニコラス・ウィンディング・レフン監督最新作! 「ドライブ」のニコラス・ウィンディング・レフン監督の最新作です。細かなところをほとんど覚えておらず、自分の書いた記事を読んでも記憶は蘇らず、自分ながら「ちゃんと書いておけよ!」(笑)と言いたくなるような「ドライブ」です。レフン監督は、中間色が見えづらい色覚障害を持っているらしく、そのせいでコントラスト...