私たちは幸せなときは常に善き人ですが、善き人であるときは必ずしも幸せとは限りません(引用) 1973年のプラハ、路面電車を待つ群衆の中へトラックで突っ込み、8人を殺害、12人を負傷させ、翌年23歳で絞首刑に処せられた女性オルガ・ヘプナロヴァーの映画です。映画のスタイルはちょっと変わっていますが、基本的には伝記映画です。オルガを演じているのは「ゆれる...
下世話な意味ではないファザー・コンプレックスの映画 スコットランドのシャーロット・ウェルズ監督の長編デビュー作です。現在35歳、過去に短編3本がクレジットされています。また、この「aftersun」の父親カラム役のポール・メスカルさんが今年2023年のアカデミー賞主演男優賞にノミネートされています。受賞は「ザ・ホエール」のブレンダン・フレイザーさんでした。...
波紋というより復讐劇、それに差別と理不尽なことへの怒りとは違う 「かもめ食堂」「彼らが本気で編むときは、」「川っぺりムコリッタ」の荻上直子監督です。どういう映画を撮る監督はもうおおよそ想像がつきますので、この映画に対する興味はどちらかといいますと筒井真理子さんです。波紋 / 監督:荻上直子荻上直子監督、イメチェンを狙う?...
ソクーロフのおとぎ話。さまようヒトラー、スターリン、ムソリーニ、チャーチル… 私には2005年の「太陽」以来のアレクサンドル・ソクーロフ監督です。2011年の「ファウスト」がヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞しているのですが、なぜか見ていません。どうしたんでしょう?独裁者たちのとき / 監督:アレクサンドル・ソクーロフ実...
え?!どこまで行くの? 特に見たいと思える映画もなく、迷いに迷ってポチッとしてしまった映画(笑)。なぜ迷ったかと言いますと、藤井道人監督の映画は「新聞記者」、DVDで「光と血」、そして「ヤクザと家族 The Family」と見てきていますが、この監督には人間の内面を描くことは無理だなと見きったからです(ペコリ)。ですので、見ておいてなんですがこの映...
イエジー・スコリモフスキ監督いきあたりばったり イエジー・スコリモフスキ監督、現在84歳です。前作の「イレブン・ミニッツ」が2015年ですので、7年ぶりです。昨年2022年のカンヌ国際映画祭のコンペティションに出品され審査員賞と作曲賞を受賞しています。EO イーオー / 監督:イエジー・スコリモフスキEO どこへ行くイ...
親子共依存にさせない社会環境が求められるのだが… 子どもに対する虐待やネグレクトを題材にした映画は結構見ていますが、その実相を知っているかと言われますと、実際そうした場面に出会ったこともありませんし、映画でもドラマ以外には見たことはありません。当然ながらその現場の映像が世に出てくることは考えづらく、しかしながらその体験者が自らの体験を語ることでその...
異形のサーカス団対ナチスのバトルを描く空想冒険活劇 前作が日本のアニメ「鋼鉄ジーク」(原作:永井豪)をモチーフにしたダークヒーローもの「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」だったガブリエーレ・マイネッティ監督、その長編二作目は異形のサーカス団員とナチスの戦いを描いた空想冒険活劇です。面白かったです(笑)。異形のサーカス団...
11歳の少年は世の不公平や偏見差別を肌身を持って体験する ジェームス・グレイ監督、見ているのは「エヴァの告白」だけです。もうほぼ10年前になりますが、マリオン・コティヤールさんを見に行った映画でよく覚えています。で、この「アルマゲドン・タイム ある日々の肖像」ですが、邦題の副題の言葉の選択が間違っています。日本語として「ある日々の肖像」なんてのはお...
原作をなぞっているように感じられ、映画としての力が感じられない… 2017年にイタリアの文学賞ストレーガ賞を受賞しているパオロ コニェッティ著『帰れない山(Le otto montagne)』が原作の映画です。原題の意味は「8つの山」です。映画のなかでその意味が語られます。監督、脚本はフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲンとシャルロッテ・ファンデル...
レア・セドゥの魅力が裏目か…、ミア・ハンセン=ラヴ監督の新機軸か… 自伝的、あるいは自分の家族を題材にすることが多いミア・ハンセン=ラヴ監督の最新作、昨年2022年のカンヌ国際映画祭監督週間で上映され、ヨーロッパ・シネマ・レーベル賞を受賞しています。前作の「ベルイマン島にて」では自分自身ですし、「未来よ こんにちは」でイザベル・ユペールさんが演じた...
ポルノスターは社会の底辺で永遠の夢を見る… 「タンジェリン」「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」のショーン・ベイカー監督、一昨年2021年のカンヌ国際映画祭のコンペティションに出品されています。「TITANE/チタン」がパルムドールの年です。レッド・ロケット / 監督:ショーン・ベイカー2016年はトランプの年時代の...
モンゴルっぽい映画ではなく、真モンゴル映画 日本の公式サイトに「“モンゴル映画”と言えば、草原を舞台にした作品を想起する人が多いはず」とあり、確かにそうだなあと思いながらも、さてどんな映画があるのだろう?と考えて思い出されるのは「モンゴル映画っぽい映画」であって、そもそも「真モンゴル映画」を見たことがないことに気づきます。でも、この「セールス・ガー...
概念と表層で戯れる… 「ミヒャエル・ハネケ監督に師事したC.B. Yi監督」の宣伝文句でポチッです。若い監督かと思いましたら、意外にも1976年生まれの47歳の監督です。映画は2021年の製作でその年のカンヌ国際映画祭ある視点部門で上映されています。「母の聖戦」「アフター・ヤン」「母へ捧げる僕たちのアリア」「LAMB ラム」「ONODA 一万夜を越えて」が...
着想の面白さだけで映画はもつか… 着想が面白い映画です。反面、もったいない感じがする映画でもあります。監督は阪本順治監督、最近の映画では「弟とアンドロイドと僕」「半世界」を見ています。せかいのおきく / 監督:阪本順治青春映画だったの?ラストシーンでしたか、章のタイトルでしたか、どこかに「青春」という言葉が出てきたと記...
ピュアで美し過ぎるがゆえに作り込み感が気になる… 「僕たちの家に帰ろう」のリー・ルイジュン監督です。2014年の映画でしたので8年ぶりになります。そのレビューでは「私が審査委員長なら、パルムドールでも、金熊でも、金獅子でも何でもあげちゃいます」と書いている監督です(笑)。なお、この「小さき麦の花」の前にもう1本「Lu Guo Wei Lai (Wa...
フランス的個人主義と家族主義が同居する映画 前作が「アマンダと僕」のミカエル・アース監督の最新作、昨年2022年のベルリン国際映画祭のコンペティションで上映されています。主演はシャルロット・ゲンズブールさん、こちらはたくさん見ていますが、なにが記憶に残っているかと言われれば、やはりラース・フォン・トリアー監督の「アンチクライスト」「ニンフォマニアック」あた...
担当制サスペンス・ホラーか(笑)… なんとなく面白そうと感じてポチッとした映画。同じくアレックス・デ・ラ・イグレシア監督の知らない映画「気狂いピエロの決闘」がヴェネツィア国際映画祭で監督賞と脚本賞を受賞していると目にしたことも影響したかもしれません。ベネシアフレニア / 監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア担当制サスペンス・...
見えないなにかが見えてくる… 見ようと思ったきっかけは佐近圭太郎監督のキャリアに「わたしは光をにぎっている」の脚本とあったことと、監督補佐ってなんやねんとは思いながらも「静かな雨」にクレジットされていたことからです。わたしの見ている世界が全て / 監督:佐近圭太郎見えないなにかが見えてくる…台詞でもない、画でもない、見...
この乱雑さは気負いの現れ… 「ビー・ガン[凱里ブルース][ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ]フー・ボー[象は静かに座っている]に続く中国第8世代新たなる才能の発見チウ・ション|仇晟 鮮烈の長編デビュー作」と紹介されています。ただこの映画、2018年製作の映画です。郊外の鳥たち / 監督:チウ・ション新たなる才能か、未...