キューバ危機は「信頼」で回避された?というスパイ映画 ドミニク・クック監督の二作目です。一作目の映画「追想」は、原題が「チェジルビーチで」となっているように、チェジルビーチでの男女の別れのシーンのカメラワークの美しさが印象に残っている映画です。ただ、自分のレビューを読み返してみますと、映画自体にはあまりいい印象を持たなかったようです。しかし、この二作目「クーリエ...
父娘のつながりに救いを求めてはダメでしょう ????田恵輔(吉田恵輔)監督の「よし」は「????」なのか、「吉」なのか、どっちなんでしょう?公式サイトでも混在しています。これ、どっちでもいいわけじゃなく、検索に引っかからなくなるんですよね。 「????」と「吉」 | 三省堂 ことばのコラム空白 / 監督:????田恵輔 今作は古田新太さん… ...
吉野竜平監督の構成力と佐久間由衣、奈緒の俳優力が光る 原作の津村記久子著『君は永遠にそいつらより若い』を読んでいなければ見なかったかも知れない映画、見てよかったです。俳優よし、構成よしの映画らしい映画でした。君は永遠にそいつらより若い / 監督:吉野竜平吉野竜平監督の構成力が素晴らしい人物にバックボーンが感じられるネタバレあらすじホリガイさ...
語るべきは、また描くべきは、人であって物語ではない 「火口のふたり」を見て、気になる俳優さんだなあと感じた瀧内公美さん、その主演の映画です。監督は春本雄二郎さん、監督・脚本・編集・プロデューサーということですので、自分の撮りたいものを撮ったということだと思います。2018年に独立映画製作団体「映画工房春組」を立ち上げてのその第一作ということになるのでしょうか。...
女16歳、男35歳の恋愛を16歳の側から描く スザンヌ・ランドン監督、現在21歳、撮影時は19歳くらい、この映画のシナリオ(のベース、多分)を書いたのは15歳、そして自ら、監督、脚本、主演という映画です。両親は、ともに俳優のサンドリーヌ・キベルランさんとヴァンサン・ランドンさんです。スザンヌ、16歳 / 監督:スザンヌ・ランドン16歳女子から見た...
高畑充希さんら俳優が映画を救う タナダユキ監督の映画では初めてよかったと思った作品かもしれません(ペコリ)。「赤い文化住宅の初子」以来、数本は見ているのですが、どちらかと言いますとステレオタイプな人物でドラマをつくる印象が強く、過剰な演出を感じるからだと思います。でも、この映画は、そうした過剰さは多少感じられるにしても、俳優によって打ち消されていますし、そもそも...
紳士服の世界をウェディングがエレガントに覆う ギリシャで育ち、アテネとロンドンで映画製作を学んだというソニア・リザ・ケンターマン監督の初の長編映画です。1982年生まれですから現在39歳です。ちょっと変わった、といいますか、ユニークな感性を感じます。テーラー 人生の仕立て屋 / 監督:ソニア・リザ・ケンターマンメンズスーツからウェディングドレスへ...
娘の死のせいか、色濃く漂う破滅欲求 「What is youth? A dream. What is love? The dream’s content.」キェルケゴールの言葉から始まります。直訳では「若者とは何ですか?夢。愛とは何ですか?夢の内容」となりますが、映画を見た印象からすれば、「若さとは何だ? 夢さ。愛とは何だ? 夢を見ていただけさ」といったニュアンス...
手漕ぎ船と一本の銛で鯨に挑む 数日前に劇場で見た予告編、銛一本で巨大なクジラに向かって海に飛び込んでいく人の姿に驚き、早速見に行った映画です。くじらびと / 監督:石川梵手漕ぎ船と銛一本3つの視点と美しい映像血に染まる海ラマレラの人々の本当の姿か手漕ぎ船と銛一本そのトレーラーは多分下のものだったと思います。15秒くらいのところです。...
マルセル・マルソー、レジスタンに身を投じる パントマイムといえばマルセル・マルソーさんと、すぐにその名前が出てくる方ですが、パントマイム・アーティストとして世に出るのは第二次世界大戦後のことです。この映画は、その戦争中にナチス・ドイツに対するレジスタンスとして活動していた時代を描いています。第二次世界大戦が始まったが1939年、マルソーさんは1923年生まれですか...
藤原竜也×西野七瀬、男女バディーものでいけるんじゃない この映画を見た理由は「鳩の撃退法」のタイトルにつられただけです(笑)。それだけ映画のタイトルは重要ということでもあります。原作者の佐藤正午さんの名前は見聞きはしていますが読んだことはなく、同名タイトルの原作も知らなかったということです。もちろん見る前にはざっと公式サイトを覗きましたのでわかって見てはいます。...
サイコパス映画でした。今や、ヤクザ映画は成り立たず? この映画を見るために一作目の「孤狼の血」を見て、さらに柚月裕子さんの原作『孤狼の血』まで読んでいます(笑)。んー、これはヤクザ映画ではなくサイコパス映画ですね。原作には続編があり三部作となっているのですが、映画はそれとは関係がないようでオリジナルストーリーとあります。ただひとつだけ、原作の『孤狼の血』のラ...
ロッド・スチュワート「セイリング」の2シーンが美しい 人には誰でもどう生きるかといった人生に対するスタンスのような代えがたい価値観のようなものがあると思います。それは、自分の人生に対することだけではなく、社会的な出来事や身の回りの人間関係の見え方にも影響します。当然、そうしたものは創作物にも現れ、またそれが作品の持ち味にもなるわけで、フランソワ・オゾン監督のそれは...
細かすぎて伝わらないと音が加福に言う 濱口竜介監督、私個人としても評価は高く、大いに期待する監督のひとりですので批判という意味ではなく言えば、映画としてはちょっとやり過ぎじゃないかと思います。言い方をかえれば、力が入り過ぎている感じがしますし、映画の特質である(と私が思う)直感的にわかる(伝わる)ことがおろそかになっています。それもまあ、本人がわかっていることなの...
児童虐待が人情噺に利用されている 現在の社会問題を昭和の価値観で片付けてしまってはなにも生まれないと思います。「10ANTS」という劇団の上西雄大さんという方が監督であり、主人公である男性を演じている映画です。劇団(兼芸能プロダクション)のウェブページをみてみますと、「かつての大映映画」とか「浪速の人情」などの言葉が踊っていますので、ああ、そういうことねと、それ...
Let him go はアメリカ社会の裏の一面かも ラリー・ワトソン(Larry Watson)さんという作家の同名タイトル「Let him go」という小説が原作らしく、その小説の時代設定は1951年であるところを映画では1963年にしています。なぜこんなに中途半端に時代をずらしたのでしょう。アメリカ人にとっては、その10年の違いにもなにか意味があるのかも...
少ない台詞と抑制された演出で静かなるフェミニズム 予想に反してとてもいい映画でした。劇場で本編映画の前に流れる予告編をぼんやり見た印象と邦題「モロッコ、彼女たちの朝」の響きから、それぞれ問題を抱えるふたりの女性が助け合いながら問題を解決していく甘めのハッピーな映画なんだろうと思っていました。違っていました。とんでもなく厳しい映画でした。モロッコ、彼女たち...
青春ノスタルジーは男の特権か? 湿っぽさのないノスタルジック青春映画という感じがします。1990年代半ばのロサンゼルス、家庭環境のせいで居場所を見いだせない13歳の少年が、スケボー仲間と出会い、背伸びして仲間に入ろうとする話です。映画が描いているのはそれだけですが、それだけであるがゆえに、見る人の年齢によってノスタルジックにも、あるいは、危なっかしいものにも見え...
伊藤万理華と金子大地の大立ち回り、サブカルがメインになる日 始まってしばらくは、なんだ…学生の卒業制作か…と、公開日早々に見に来たことを後悔していたんですが、金子大地さんが登場し中盤に入りますと、ん? 何か違うぞと思い始め、終盤に向かってどうまとめるんだろうと期待も膨らみ、終わってみれば、んー、うまいねえと感心した映画です。サマーフィルムにのって / 監督:...
1988年のペルー、乳児売買、センデロ・ルミノソ、先住民の貧困、同性愛 1988年頃のペルーを舞台にした映画です。どんな時代だったのかざっとウィキペディアから拾いますと、1985年に誕生したアラン・ガルシア大統領の経済政策の失敗によりハイパーインフレになっており、その影響もあって反政府勢力のセンデロ・ルミノソが勢力を伸ばしリマを包囲するような状態だったようです。日...