短編集では面白くはあっても映画にならず、もったいない… 濱口竜介監督はこういうことがやりたいんだなあということがよくわかります。そして、無茶苦茶よく考えられていますし、うまいです。余計なことをひとつ言わせていただきますと、「ドライブ・マイ・カー」も村上春樹氏の短編を短編として何本か集めて映画にすればよかったのにと思います。さらにもうひとつ余計な...
1960年代のロンドンへの郷愁と悪夢の事実 映画を見る際には必ず監督をチェックします。エドガー・ライト監督ってなにか見たことあるかな? と過去の作品一覧を見ましたら、「ワールズ・エンド酔っぱらいが世界を救う!」があり、ああ、あれか、スルーだなと思ったのですが、なにか引っかかるものがあったのでしょう、見てみましたら結構おもしろかったです。いや、おも...
自由に生きることと依存の束縛にまどろむこと ジュリアン・ムーアさんがリメイクを熱望した(らしい)セバスティアン・レリオ監督の「グロリアの青春(Gloria)」のジュリアン・ムーア版「グロリア永遠の青春(Gloria Bell)」です。オリジナルはもう7、8年前の映画ですのであまり細かいところは記憶していませんが、俳優が変わっているだけで物語や展開は...
トレブリンカ強制収容所の記憶の歌 The Song of Names 映画らしい映画と言いますか、ヨーロッパらしい映画です。監督のフランソワ・ジラールさんはカナダの方ですが、原作の「The Song of Names」がイギリスの小説ですし、原作者のノーマン・レブレヒト(Norman Lebrecht)さんはイギリスの作家であり、音楽ジャーナリストでもあります。...
閉じた円環、つくりもの過ぎて多くは伝わってこない 2019年の東京国際映画祭で最優秀女優賞と観客賞を受賞しています。最優秀女優賞って誰が? と思いましたら、マリオン役のナディア・テレスキウィッツさんでした。主だった女性の俳優は3人ですが、特別目立っていたわけではありませんのでいろいろなにかあるのでしょう。サスペンスのジャンルかと思いますが、英題の「Only T...
あるある型映画、傷つく恋愛映画は好まれない 公開時(まだ今年のはじめだったんですね)、菅田将暉さんの映画ということでどんな映画だろうと映画.comを見たときに、かなり評価が高い上にちらっと見たレビューから「リアル」という言葉が飛び込んできたがために記憶に残っており、DVDで見てみました。花束みたいな恋をした / 監督:土井裕泰説明モノローグにびっくり...
サルバトール・ムンディがルーブル・アブダビに展示される日は来るか? 1763年以降行方不明(ウィキペディア)となっていたレオナルド・ダ・ヴィンチの最後の傑作「サルバトール・ムンディ」という絵画が、真偽不明のまま、1175ドル(約13万円)から4億5000万ドル(約510億円)に化けてしまったという話です。その過程に関わった人物たちのインタビューで構成されたドキュメ...
カーワ、覚醒す。乾いた戦争映画のリアル 戦争映画のジャンルに入るんだろうとは思いますが、ちょっと違った感じの映画です。こうした戦争映画で面白いというのもなんですが、とにかくちょっと変わっていて面白い映画です。モスル~ある SWAT 部隊の戦い~ / 監督:マシュー・マイケル・カーナハン映画の背景アメリカ映画だがすべてアラビア語ネタバレあらすじ前半...
ラブホテル舞台の昭和的ホームドラマみたいな映画 2020年11月、ちょうど一年くらい前に公開された映画です。原作は2013年上半期直木賞受賞作、桜木紫乃さんの短編小説集『ホテルローヤル』です。ホテルローヤル / 監督:武正晴原作の評価は高いようだ映画はベタベタネタバレあらすじ廃墟の「ホテルローヤル」雅代、「ホテルローヤル」のオーナーになるミ...
犬は男?うさぎは女?隠されたセクシュアリティ 「ピアノ・レッスン」のジェーン・カンピオン監督です。今年2021年のヴェネチアで最優秀監督賞(銀熊賞)を受賞しています。そう言えば随分名前を耳にしていないなあとウィキペディアを見てみましたら、12年ぶりの監督作品とのことです。私は「ピアノ・レッスン」以来かもしれません。「トップ・オブ・ザ・レイク」という2013年のテ...
男たちよ、うるさいぞ! SFはあまり見ないのですが、以前見た同じくダグ・リーマン監督の「オール・ユー・ニード・イズ・キル」には妙によかったとの印象が残っており、その名が目に入りましたので、ちょっと不安ながらも(笑)見てみましら…いや、面白かったですよ。カオス・ウォーキング / 監督:ダグ・リーマン意表を突く始まり方男性社会と共生社会ノイズネ...
幻想的に見えて現実的、編集は乱雑だが各シーンはおもしろい 少年少女たちが孤立した環境に置かれるという設定の物語は、多くの場合、そこに理性と本能の対立という人間社会における根源的な矛盾をあぶり出そうとする試みだと思います。しかし、この「MONOS 猿と呼ばれし者たち」はちょっと違うようです。ゲリラ組織の下部組織のような少年少女の集団「MONOS」が人質のアメリカ人博...
人種差別、人身売買。エンターテインメントか、社会批判か よく練られたシナリオに作り込まれた映像、面白い映画です。ただ、批評性をもったテーマですので、エンターテインメント性が強い分、つくり手自らにその批評性がはね返ってくるのではないかと思います。監督はチェニジア出身のカウテール・ベン・ハニアさん、2005年くらいからドキュメンタリーやショートの作品がクレジットされ...
既視感はあるが気持ちが豊かになる映画、悲惨さを越えて。 「イン・ザ・スープ」のアレクサンダー・ロックウェル監督の25年ぶりの日本公開作品ということです。タイトルにはなにか引っかかるところがありますが多分見ていないです。それに、25年ぶりということは1996年になりますが、この映画の製作年は1992年になっており日本公開が遅かったのか、他の映画の話なのか、IMDbなど...
なれなかったのではなく、なりたくなかったボクたちの25年 ああ、これが2020年の日本なんだなあとつくづく感慨にふけざるを得ないような映画です。ボクたちはみんな大人になれなかった / 監督:森義仁残るのは虚しさだけ佐藤、加藤に会う佐藤、テレビ局の下請け仕事に就く佐藤と加藤、ラブホテルへいく普通が嫌いな加藤突然の別れ恋愛ドラマではなく、...
ダークファンタジーというよりもジェントリーファンタジー マッテオ・ガローネ監督は、自然主義的な社会派ドラマとファンタジーものを交互に撮るつもりなんでしょうか。「ゴモラ」「五日物語 3つの王国と3人の女」「ドッグマン」、そしてこの「ほんとうのピノッキオ」です。ほんとうのピノッキオ / 監督:マッテオ・ガローネ子ども向けなのか、大人向けなのか?人形...
(韓国版)ジョゼは自ら身を引いたのか、同情を突き放したのか 田辺聖子さんの原作も読んでいませんし、妻夫木聡さんと池脇千鶴さん主演の2003年の映画も見ておらず、昨年末に公開されたアニメ版はその存在すらも知らなかったという「ジョゼと虎と魚たち」初心者ですが、ざっとネット上の予告編やあらすじなどを読んでみますと、この映画は随分趣きが違うようです。時代の変遷や価値観の違い...
権力は真実を黒塗りにする。どの国でも、いつの時代でも。 2021年の今、アメリカが正義の国などと信じている人はいないと思いますが、少なくともこういう映画がつくられる国ではあります。2001年のアメリカ同時多発テロをうけ、ブッシュ政権が、容疑者の名のもとに法にもとづかない方法によって多数のイスラムを長期拘束し、拷問まで加えて自白を強要していた事実を暴いています...
女たちよ、失敗を恐れるな。やり直せばいいのだ。 「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」で主演のビーニー・フェルドスタインさんありきの映画です。全シーン出ずっぱりです。内容は、キャトリン・モランというイギリスのジャーナリスト、作家、テレビ司会者など多方面で活躍している方の自伝的小説の映画化とのことです。ビルド・ア・ガール / 監督:コーキー・ギェ...
人間関係にツッコミが足りず、かなり古くさい 今泉力哉監督の映画は「知らない、ふたり」以降それなりに見ていますが、そろそろもういいかなと、これは単に個人的趣味の話ではあるのですが、そう思っていたところ志田彩良さんの名前が目に入り、ん?だれっけ?とググりましたら、「ひかりのたび」でした。結構印象に残っている俳優さんですので、もう1本ということで見た映画です。か...