セックスというコミュニケーション ジャック・オディアール監督は割と硬派な映画を撮る監督との印象を持っていましたので、結末にはちょっと驚きました。終わってみれば、え?今どきの日本映画じゃないの?!と思ったということです。パリ13区 / 監督:ジャック・オディアール日本映画で言えば恋バナ映画4人の男女の恋愛話です。オデ...
あまりにも美しい、物語と、画と。そこから見えるもの 中川龍太郎監督は「演じる俳優」を撮るのが本当にうまいですね。この映画では岸井ゆきのさん、過去の映画では「四月の永い夢」の朝倉あきさん、「わたしは光をにぎっている」の松本穂香さん、前作の「静かな雨」は仲野太賀さんと衛藤美彩さん、どちらかといいますと女性の俳優さんがその物語の中の人物を演じているその姿を魅力的...
深層なき愛憎うずまく青春音楽物語かな 塩田明彦監督の映画を初めて見ました。すごいですね。先が読めないですし、その先はと言えばとんでもないことのほうが多いのですが、ああ、こういうこともあるかもしれないなあと妙に納得がいきます。青春音楽映画のようにもみえますが、「青春」にも「音楽」にも甘えていないところがいいです。麻希のいる世界 / ...
面白い!沖縄コザ舞台のタイムスリップ&入れ替わり映画 これ、むちゃくちゃ面白いですし、泣けますし、感じますし、つくりもうまいです(多分、結果として)。脚本、監督の平一紘さんって誰?ミラクルシティコザ / 監督:平一紘沖縄の沖縄による、日本全国のための映画この映画は、第3回未完成映画予告編大賞でグランプリを受賞した作...
ファンタジーだが、新鮮な感覚を感じる 身体的性と性自認が一致している女性ユイとFtMトランスジェンダーの真也の10年にわたる恋愛を描いた映画です。いやあ、面白かったです。社会からの偏見や差別という視点ではなく、それこそユイと真也の「フタリノセカイ」に絞って描いていますのでとても新鮮な感じを受けました。フタリノセカイ / 監...
カーワ、覚醒す。乾いた戦争映画のリアル 戦争映画のジャンルに入るんだろうとは思いますが、ちょっと違った感じの映画です。こうした戦争映画で面白いというのもなんですが、とにかくちょっと変わっていて面白い映画です。モスル~ある SWAT 部隊の戦い~ / 監督:マシュー・マイケル・カーナハン映画の背景アメリカ映画だがすべてアラビア語ネタバレあらすじ前半...
吉野竜平監督の構成力と佐久間由衣、奈緒の俳優力が光る 原作の津村記久子著『君は永遠にそいつらより若い』を読んでいなければ見なかったかも知れない映画、見てよかったです。俳優よし、構成よしの映画らしい映画でした。君は永遠にそいつらより若い / 監督:吉野竜平吉野竜平監督の構成力が素晴らしい人物にバックボーンが感じられるネタバレあらすじホリガイさ...
細かすぎて伝わらないと音が加福に言う 濱口竜介監督、私個人としても評価は高く、大いに期待する監督のひとりですので批判という意味ではなく言えば、映画としてはちょっとやり過ぎじゃないかと思います。言い方をかえれば、力が入り過ぎている感じがしますし、映画の特質である(と私が思う)直感的にわかる(伝わる)ことがおろそかになっています。それもまあ、本人がわかっていることなの...
少ない台詞と抑制された演出で静かなるフェミニズム 予想に反してとてもいい映画でした。劇場で本編映画の前に流れる予告編をぼんやり見た印象と邦題「モロッコ、彼女たちの朝」の響きから、それぞれ問題を抱えるふたりの女性が助け合いながら問題を解決していく甘めのハッピーな映画なんだろうと思っていました。違っていました。とんでもなく厳しい映画でした。モロッコ、彼女たち...
瞳に映る世界ではなく女性たちが今現在置かれている世界 原題の「Never Rarely Sometimes Always」の意味がわかるシーンは圧巻です。その一連の質問をオータムにしている女性は俳優ではなく実際の人工妊娠中絶クリニックのカウンセラーとのことです。17歳の瞳に映る世界 / 監督:エリザ・ヒットマン女性たちが置かれている世界 女性を性...
すべてにおいて過不足なく完璧! 横浜聡子監督、2016年の「俳優 亀岡拓次」以来です。長編ではその前が2008年の「ウルトラミラクルラブストーリー」ですから、なかなか撮りたいものの環境が整わないということなのか、もっと撮って欲しい監督のひとりです。で、「いとみち」、完璧でした。あらゆる点において過不足なく完璧でした。いとみち / 監督:横浜聡子駒井...
神は存在する 彼女の名はペトルーニャ、というマケドニア映画 邦題は「ペトルーニャに祝福を」という優しいタイトルになっていますが、英題は「GOD EXISTS, HER NAME IS PETRUNYA」です。マケドニア語の原題も同じ意味らしく、そのまま日本語にすれば「神は存在する 彼女の名はペトルーニャ」です。ギリシャ正教とか東方教会と呼ばれるキリスト教の世界の話...
ウィリアム・ニコルソン監督自身の両親追憶映画 すごい映画ですし、面白いです。老年夫婦の離婚話ですが、その離婚話自体が類似の映画とは随分かけ離れていますし、台詞だけではなく頻繁に語られる詩などの言葉にいろいろ意味が込められているようです。とにかくいろんな見方ができる映画で、ウィリアム・ニコルソン監督(脚本も)は一体どこへ持っていこうとしているのか考えさせられてしまい...
映画から10年の今、老犬はいまだ死なず…を願う 今年の2月に見た「羊飼いと風船」のペマ・ツェテン監督、2011年の作品です。その年の東京フィルメックスでグランプリを受賞しています。オールド・ドッグ / 監督:ペマ・ツェテンラストシーンで一気にたちのぼる物語性馬、バイク、走り抜けるトラック息子夫婦の不妊 テレビ放送、チベット人の警官、教師ネ...
昭和のドラマ、平成の価値観、令和の女性観 ボクシング映画というよりもボクシングジム映画というべき、リング上の格闘よりもそこにいたるまでの(やや年齢のいった)若者たちの「心の格闘」を描いた映画でした。俳優によってドラマが生まれるいい映画です。BLUE/ブルー / 監督:?田恵輔俳優がドラマをつくる昭和のドラマのベタさを排して…ネタバレあらすじとち...
ソ連全体主義再現プロジェクト この映画を一般的な面白い面白くないという範疇で語ってもあまり意味がないかもしれません。なにせ「DAU」というのは壮大なプロジェクトであり、この映画は、13本の映画と6本のTVシリーズ(14本の映画と3本のTVシリーズかも)のうちの1本ということです。また、プロジェクトの基本的なテーマが全体主義の再現ということであれば、あるいは「静かな...
センスもよく、遊び心もあり、美しい 楽しい映画でした。そしていい映画でした。このところ押し付けがましいドラマばかり、特に日本映画なんですが、物語を説明的に語る映画を見ることが多く、それらに比べてこの映画はとても新鮮で、あれこれ考えながら見られるとても楽しい映画でした。わたしの叔父さん / 監督:フラレ・ピーダセンドラマは見る者の心の中に生まれる酪...
映画のつくりやカメラワークが洗練されている 映画らしい映画です。プロの技みたいなものも感じます。ペマ・ツェテン監督、初めて見ました。フィルメックスでは過去の作品も何本か上映され、この「羊飼いと風船」を含め3度の最優秀作品賞を受賞しているようです。また、今年の3月には岩波ホールで「チベット映画特集」があり、ペマ・ツェテン監督の作品も「オールド・ドッグ」と「タルロ」...
ホロコースト サバイバーの医師と少女、そして男と女 昨年2020年のアカデミー賞国際長編映画賞のショートリストに選出されたハンガリー映画です。結局ノミネートされなかったということで残念ですが、逆に言えばアカデミー好みじゃないいい映画ということでしょう(笑)。この世界に残されて / 監督:バルナバーシュ・トートアカデミー賞国際長編映画賞のショートリスト...
フェミニズム、PTSD、そしてヒッチコック すごいですね、この映画、まったく先が読めません。で、終わってみれば、主人公ハンター(画像の女性)が「家」や「家族」という個人を抑圧する環境から自己を開放する物語でした。タイトルの Swallow はこの映画ではツバメではありません。「飲み込む」「侮辱などに耐える」「受け入れる」などの意味です。スラングでも使われているよ...