ジャン・コクトー「人間の声」を再び翻案、現実と非現実、飛び出す女 ジャン・コクトー「人間の声」の翻案ものといえば、アルモドバル監督は、すでに「神経衰弱ギリギリの女たち」で一度試みています。ただ、その映画は翻案というよりも、発想の原点といいますか、触発されたといいますか、ほとんど原作の原型をとどめていませんのであらためて挑戦したということなんでしょう。今度は...
個の自由が血縁、愛憎を乗り越える 名前をみれば必ず劇場に足を運ぶ監督のひとり、ペドロ・アルモドバル監督の最新作です。「オール・アバウト・マイ・マザー」以降はすべて劇場で、それ以前のもので発売されている作品はすべてDVDで見ています。この「パラレル・マザーズ」は、昨年2021年のヴェネツィア国際映画祭のコンペティションに出品され、主演のペネロペ・クル...
至福の料理をめぐる愛と追憶の物語 「俺のブタを返せ。 ニコラス・ケイジが愛するブタを奪還する、慟哭のリベンジスリラー!」なんて、どうせ宣伝文句だけなんだから騙されずにおこう、と思っても、そりゃ、見ますよね(笑)。PIG ピッグ / 監督:マイケル・サルノスキどこへ行くのだ? この映画オレゴンの森に世捨て人の男がいます。...
大人にはおとぎ話にみえる子どもの非現実的現実 「燃ゆる女の肖像」で一躍その名が知られる(日本では)ようになったセリーヌ・シアマ監督の2021年の最新作です。その間にはジャック・オーディアール監督の「パリ13区」の脚本を書いています。また、昨年劇場公開されている「トムボーイ」は2011年の映画です。秘密の森の、その向こう / 監督:...
映画は記憶の深層に到達しておらず… 川村元気さん、東宝のプロデューサーとして、私の見ている実写版の映画だけでも「電車男」「告白」「悪人」「怒り」「何者」「来る」「ラストレター」「キャラクター」などのヒット作(らしい)を担当し、アニメでも「君の名は。」や「天気の子」などに企画・プロデュース(ウィキペディア)として名前があがっています。その川村元気さんの初の長...
ウォン・カーウァイ プロデュースの青春センチメンタル系なのだが… 「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」のバズ・プーンピリヤ監督の2021年の映画、あのウォン・カーウァイさんが自らプロデューサーを買って出たんだそうです。ウォン・カーウァイさんはもう10年近く映画を撮っていませんので、その名を出せば宣伝効果も高いですし、内容が青春ものとくればなおさらです。...
ヌールはここを出ていくと宣言するが… フランスのヨアン・マンカ監督の長編デビュー作、昨年2021年のカンヌ映画祭のある視点部門で上映されています。マンカ監督は1989年生まれの32歳です。母へ捧げる僕たちのアリア / 監督:ヨアン・マンカマンカ監督、シュムラさんに訴えられる?ヨアン・マンカ監督のウィキペディアを見て...
ロシアの新米教師ふたりの1年だが、なぜ退職に解雇ですますのだ?! ロシアの新米教師ふたりがモスクワから地方都市へ赴任した1年間を撮ったドキュメンタリーです。2020年製作ですので、3、4年前に撮られているものと思われます。ヘィ!ティーチャーズ! / 監督:ユリア・ヴィシュネヴェッツ日本でいえば学級崩壊ロシアの義務教育は...
90分全編ワンカットでみるレストランオープントラブルもの 90分ワンカットが売りの映画です。何年かに一度全編ワンカットにとらわれた映画制作者が現れます。映画制作者にはひきつける何かがあるようです。ボイリング・ポイント/沸騰 / 監督:フィリップ・バランティーニ全編ワンカットの魅力とはあらためて言うまでもなく、全編フイル...
近代的自我の葛藤のテーマがぼんやり、それは現代的? 島崎藤村著『破戒』の映画化です。1948年の木下恵介監督作品、1962年の市川崑監督作品に続く3度めです。監督は前田和男さん、初めて見る監督です。破戒 / 監督:前田和男水平社創立100周年記念なぜ今映画化?と思いましたら、水平社創立100周年記念ということで部落...
疑似家族誕生ロードムービーだが、シナリオが薄っぺらい 是枝裕和監督作品です。今年2022年のカンヌ映画祭コンペティションに出品され、ソン・ガンホさんが男優賞を受賞しています。また、作品としてはキリスト教団体が選ぶエキュメニカル審査員賞も受賞しています。俳優はもちろんのこと、スタッフも全員(かな?)韓国のようです。ベイビー・ブローカ...
日本じゃ安楽死も集団で…という近未来ディストピア 今年2022年のカンヌ映画祭「ある視点」部門でカメラドールのスペシャルメンションに選ばれた作品です。カメラドール受賞を争ったという意味でしょう。早川千絵監督の長編デビュー作で、2018年のオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」の一編をあらためて長編として制作したものとのことです。その...
なんでもなさを映画にするミア・ハンセン=ラブ監督 ミア・ハンセン=ラブ監督の映画は一般公開されたものはすべて見ていますが、イングマール・ベルイマン好きだとは知りませんでした。随分映画の傾向が違いますのでなにがあるんだろうとインタビュー記事を読んでみましたら10年くらい前からだそうです。ハンセン=ラブ監督の映画が変わっていく兆しかもしれません。[to...
セックスというコミュニケーション ジャック・オーディアール監督は割と硬派な映画を撮る監督との印象を持っていましたので、結末にはちょっと驚きました。終わってみれば、え?今どきの日本映画じゃないの?!と思ったということです。パリ13区 / 監督:ジャック・オーディアール日本映画で言えば恋バナ映画4人の男女の恋愛話です。...
サスペンスタッチで描かれる高齢レズビアンの恋愛 2021年のセザール賞で新人監督賞受賞の映画です。監督のフィリッポ・メネゲッティさんは1980年生まれですので40歳くらいでの作品になります。公式サイトのプロフィールによりますと、主にイタリアで活動していたようですが2018年からフランスに拠点を移し、この「ふたつの部屋、ふたりの暮らし(DEUX)」が長編ビュ...
母と娘のクリーチャーホラー フィンランドのクリーチャー系ホラーです。クリーチャーものを好んで見ることはありませんが、フィンランド映画ということで挑戦してみました。フィンランドということに特に意味があるわけではなく、このところ劇場公開される海外の映画の製作国が英米仏あたりに偏っている気がしますので、そうじゃない映画を見ようと思ったということです。中南...
暗殺者は身近な者の顔でやってくる 他人の体を乗っ取って殺人を犯す殺し屋の話です。監督はブランドン・クローネンバーグさん、その名前から想像できるとおり、デヴィッド・クローネンバーグ監督の息子さんです。1980年生まれですから42歳くらいということになります。私は見ていませんが、2013年に「アンチヴァイラル」という映画で長編デビューしています。この映...
ケネス・ブラナー、郷愁のファミリーストーリー ケネス・ブラナー監督の自伝的な映画と言われています。同じ意味合いの映画ではアルフォンソ・キュアロン監督の「ROMA/ローマ」が思い出されますが、どちらもモノクロ映像です。やはりノスタルジーという感覚から考えれば当然の選択ということでしょうか。その「ROMA/ローマ」はかなり感傷的な映画でしたが、この「ベ...
翻訳家の男の存在感が足りません。ミスキャストでしょう。 もう2年前になりますが、この映画の監督の前作「黒四角」をDVDで見て、こういう映画をきっちり撮れる監督が日本にもいるんだ(劇場公開される映画でという意味)と興味を持ち、さらにさかのぼって宮﨑あおいさんとARATA(当時)さんの「青い車」まで見てしまったという奥原浩志監督の最新作です。2年前とい...
正統派伝記映画にすべきだった 映画の邦題というのはどんなタイトルをつけてもあれこれ言われるものだとは思いますが、それにしても、この「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」はもう少し考えないと長すぎて肝心の「ビリー・ホリデイ」が三点リーダーに省略されてしまいます。「奇妙な果実」とかにすればよかったんじゃないでしょうか。ビリー・ホリデイの代...