差別、偏見、欺瞞が渦巻く17分、「福田村事件」にはない現実感 「4ヶ月、3週と2日」「汚れなき祈り」「エリザのために」のクリスティアン・ムンジウ監督、2022年の最新作です。ムンジウ監督はこの映画の前にはジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ(ダルデンヌ兄弟)監督やミシェル・フランコ監督とともに「母の聖戦」のプロデューサーに名を連ねています。...
ダルデンヌ兄弟監督がドキュメンタリ作家の原点に帰ったような劇映画 1999年の「ロゼッタ」以降すべて見てきているジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟監督です。このサイト内では新しい方から「その手に触れるまで」「午後8時の訪問者」「サンドラの週末」「少年と自転車」について書いています。という、ほぼすべてのドラマ作品を見てきた中でもこの「トリとロ...
ネタバレレビュー・あらすじ・感想・評価 「オリ・マキの人生で最も幸せな日」のユホ・クオスマネン監督の長編第2作です。その2016年の長編デビュー作はカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で作品賞を受賞しています。そして、この「コンパートメントNo.6」は2021年に同じくカンヌのコンペティション部門でグランプリ受賞です。コンパートメン...
ネタバレレビュー・あらすじ・感想・評価 娘が誘拐された母親を追ったメキシコの映画ですが、監督はルーマニア系ベルギー人(だと思う…)のテオドラ・アナ・ミハイさん、この映画の制作時は40歳くらいの方だと思います。IMDbによりますと、過去にドキュメンタリーの長編1本短編4本を撮っており、ドラマとしてはこの映画がデビュー作になります。なのにプロデューサー陣がすご...
唐田えりかの映画的存在感の凄さとシナリオのうまさ 6年ほど前に「蜃気楼の舟」を見ている竹馬靖具監督の最新作、「蜃気楼の船」ではあまりいいことを書いていませんが、この「の方へ、流れる」はとてもいいです。の方へ、流れる / 監督:竹馬靖具唐田えりかという俳優この映画のよさは唐田えりかさんによるところが大きいです。唐...
アンヌの身体や人生のことはアンヌが決めるべきということ すごい映画です。昨年2021年のヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞受賞作です。今年、ノーベル文学賞を受賞したフランスのアニー・エルノーさんの『事件 L'Événement』という著作をベースにした映画で、内容も内容なんですが、エルノーさんはオートフィクションの作家と言われている方で、著作の多くが...
クリステン・スチュワートのダイアナが自由への物語を生み出す 「クリステン・スチュワートがダイアナ元皇太子妃を演じ(映画.com)」の書き出しを見ただけでもう映画館のチケット予約サイトでポチッとしてしまいました(笑)。ダイアナに興味があるわけではありません。「クリステン・スチュワートがダイアナ?!」ってことです。スペンサー ...
余命何ヶ月ものだがアプローチは終末期医療という新鮮さ いわゆる「余命何ヶ月」ものなんですが、ちょっとアプローチが違った映画でした。監督はエマニュエル・ベルコさん、俳優としては「モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由」など見ていますが、監督作品は初めてです。見る者の集中力を途切れさせないいい映画でした。愛する人に伝える言葉 / 監督:エ...
大人にはおとぎ話にみえる子どもの非現実的現実 「燃ゆる女の肖像」で一躍その名が知られる(日本では)ようになったセリーヌ・シアマ監督の2021年の最新作です。その間にはジャック・オーディアール監督の「パリ13区」の脚本を書いています。また、昨年劇場公開されている「トムボーイ」は2011年の映画です。秘密の森の、その向こう / 監督:...
松井玲奈さんがすばらしい、安川有果監督のセンスがいい 監督の安川有果さんは映画はもちろんのこと名前も初めて目にし、主演の松井玲奈さんも映画で見るのは初めて、原作の島本理生さんも一冊も読んだことがなく、脚本の城定秀夫さんは名前を知る程度、かろうじて中島歩さんの「いとみち」のとてもよい印象に頼って見た「よだかの片想い」、映像センスよし、松井玲奈さんよし、演出よ...
黒人差別、ジェンダー意識が見え隠れするセンスのいい映画 ツイッターへの投稿から生まれた映画です。2015年に Aziah "Zola" King のアカウント名で投稿された148ツイートとローリングストーン誌の本人へのインタビュー記事がベースになっています。内容はストリップ・ポールダンサーが意に反して売春行為に巻き込まれる話ですが、コメディタッチで...
戦闘は終わっても戦争は終わらない この映画は、2015年にノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさんの代表作『戦争は女の顔をしていない』に着想を得て生まれたものとのことです。監督は、映画制作当時26、7歳(現在31、2歳)のカンテミール・バラーゴフ監督、戦闘は終わっても決して終わることのない戦争を描いています。2019年のカンヌ...
わけがわからなくても見ておくべき映画(だと思うけど…) この監督、天才だわ、と思った映画です。「LETO レト」を見ていますので、この映画の紹介文にそのタイトルを見て何の事前情報も入れずに見に行きましたら、ひっくり返りました(笑)。約2時間半の映画ですが、1時間ほどは、いやもっとかなあ、とにかくまったくついていけず、何をやっているのかさっぱりでした...
なんでもなさを映画にするミア・ハンセン=ラブ監督 ミア・ハンセン=ラブ監督の映画は一般公開されたものはすべて見ていますが、イングマール・ベルイマン好きだとは知りませんでした。随分映画の傾向が違いますのでなにがあるんだろうとインタビュー記事を読んでみましたら10年くらい前からだそうです。ハンセン=ラブ監督の映画が変わっていく兆しかもしれません。[to...
セックスというコミュニケーション ジャック・オーディアール監督は割と硬派な映画を撮る監督との印象を持っていましたので、結末にはちょっと驚きました。終わってみれば、え?今どきの日本映画じゃないの?!と思ったということです。パリ13区 / 監督:ジャック・オーディアール日本映画で言えば恋バナ映画4人の男女の恋愛話です。...
あまりにも美しい、物語と、画と。そこから見えるもの 中川龍太郎監督は「演じる俳優」を撮るのが本当にうまいですね。この映画では岸井ゆきのさん、過去の映画では「四月の永い夢」の朝倉あきさん、「わたしは光をにぎっている」の松本穂香さん、前作の「静かな雨」は仲野太賀さんと衛藤美彩さん、どちらかといいますと女性の俳優さんがその物語の中の人物を演じているその姿を魅力的...
深層なき愛憎うずまく青春音楽物語かな 塩田明彦監督の映画を初めて見ました。すごいですね。先が読めないですし、その先はと言えばとんでもないことのほうが多いのですが、ああ、こういうこともあるかもしれないなあと妙に納得がいきます。青春音楽映画のようにもみえますが、「青春」にも「音楽」にも甘えていないところがいいです。麻希のいる世界 / ...
面白い!沖縄コザ舞台のタイムスリップ&入れ替わり映画 これ、むちゃくちゃ面白いですし、泣けますし、感じますし、つくりもうまいです(多分、結果として)。脚本、監督の平一紘さんって誰?ミラクルシティコザ / 監督:平一紘沖縄の沖縄による、日本全国のための映画この映画は、第3回未完成映画予告編大賞でグランプリを受賞した作...
ファンタジーだが、新鮮な感覚を感じる 身体的性と性自認が一致している女性ユイとFtMトランスジェンダーの真也の10年にわたる恋愛を描いた映画です。いやあ、面白かったです。社会からの偏見や差別という視点ではなく、それこそユイと真也の「フタリノセカイ」に絞って描いていますのでとても新鮮な感じを受けました。フタリノセカイ / 監...
カーワ、覚醒す。乾いた戦争映画のリアル 戦争映画のジャンルに入るんだろうとは思いますが、ちょっと違った感じの映画です。こうした戦争映画で面白いというのもなんですが、とにかくちょっと変わっていて面白い映画です。モスル~ある SWAT 部隊の戦い~ / 監督:マシュー・マイケル・カーナハン映画の背景アメリカ映画だがすべてアラビア語ネタバレあらすじ前半...