ジャン・コクトー「人間の声」を再び翻案、現実と非現実、飛び出す女ジャン・コクトー「人間の声」の翻案ものといえば、アルモドバル監督は、すでに「神経衰弱ギリギリの女たち」で一度試みています。ただ、その映画は翻案というよりも、発想の原点といいますか、触発されたといいますか、ほとんど原作の原型をとどめていませんのであらためて挑戦したということなんでしょう。今度は...
30分で描けるものが100分に伸ばされているあまりに直接的なタイトルですので逆に目を引いた映画、母親は石田えりさん、娘は井上真央さんです。監督は「前作『人の望みの喜びよ』(15)がベルリン国際映画祭ジェネレーション部門でスペシャルメンションを受賞し、人間ドラマを描く手腕が高く評価された杉田真一(公式サイト)」さん、これも見ようと思った理由のひとつです。...
本当の自分を抑え込まなくてはいけない辛さ1995年、アイルランドの田舎町ではまだまだ性的マイノリティーへの差別意識が渦巻いていたという映画です。さらにその差別によって追い詰められる側がティーンエイジャーですので見ていてつらいものがあります。監督、脚本は「CURED キュアード」のデビッド・フレイン監督です。恋人はアンバー...
個の自由が血縁、愛憎を乗り越える名前をみれば必ず劇場に足を運ぶ監督のひとり、ペドロ・アルモドバル監督の最新作です。「オール・アバウト・マイ・マザー」以降はすべて劇場で、それ以前のもので発売されている作品はすべてDVDで見ています。この「パラレル・マザーズ」は、昨年2021年のヴェネツィア国際映画祭のコンペティションに出品され、主演のペネロペ・クル...
「Business Plot」というスキャンダルが元ネタらしいのだが…新型コロナウイルスの影響が今出てきたのか、メジャー系じゃない実写映画の興行成績が振るわない(と感じるけどどうなんでしょう…)せいなのか、そそられる映画が入ってこなくなっているように感じます。以前ならおそらく見ていなかったこの「アムステルダム」です(ペコリ)。...
DVD・親が親として振る舞うべき規範を失った社会、子どもは無防備に放り出されるもう一年前になりますが、「君は永遠にそいつらより若い」を見て、その構成力に驚いた吉野竜平監督のデビュー作「あかぼし」を見てみました。10年前の作品です。あかぼし / 監督:吉野竜平構成力は確かだが、導入は…DVD鑑賞、それもパソコンのディス...
夫ピエールとの愛、ジェンダー不平等社会、科学の功罪、3つの視点なぜノーベル賞ウィーク(発表)にあわせて公開しないのかなあと思いましたら、東京じゃ10月14日が劇場公開日だったようです。ただ、発表はその前の週に終わっていますので、そもそもあまり意識されていないのかもしれません。某地域では今日(書き終えたら昨日になってしまった)が2週間遅れの公開日でした。...
タイトルとメインビジュアルはいいのだが…公式サイトのメインビジュアルや宣伝コピーではかなり期待値は高かったのですが、んー、どうでしょう…。監督、脚本は「福岡を拠点に映像制作を行(公式サイト)」っている萱野孝幸さんという32歳の方です。夜を越える旅 / 監督:萱野孝幸予想はつきます「予測不能」と宣伝されていますが、予想...
静謐というべきか、静止画像のような映画は蝶になれるのか前作「コロンバス」に続くコゴナダ監督の長編第二作です。コゴナダ監督は韓国系アメリカ人で、その名は野田高梧という脚本家に因んだものとのことです。野田高梧(のだこうご)さんは、小津安二郎監督の「晩春」以降の脚本のすべてで小津監督と共作となっている方です。「KOGO NODA」からということでしょう。...
至福の料理をめぐる愛と追憶の物語「俺のブタを返せ。 ニコラス・ケイジが愛するブタを奪還する、慟哭のリベンジスリラー!」なんて、どうせ宣伝文句だけなんだから騙されずにおこう、と思っても、そりゃ、見ますよね(笑)。PIG ピッグ / 監督:マイケル・サルノスキどこへ行くのだ? この映画オレゴンの森に世捨て人の男がいます。...
言葉を排除しながら言葉に頼る矛盾原作は吉本ばなな『N・P』、監督はベルギーを拠点に活動する映像作家リサ・スピリアールト、内容はサイレント映画。どんな映画なんだろうと、期待は膨らんだのですが…。N・P / 監督:リサ・スピリアールト何をやりたかったのだろう…リサ・スピリアールト監督が、吉本ばななさんの原作を原語...
もっと超越した映画を。「月刊「根本宗子」」という本人名を劇団名にしている劇作家、演出家、脚本家、女優の根本宗子さんの舞台作品の映画化です。映画化のシナリオも根本さん本人が書き、監督は山岸聖太さんという方です。もっと超越した所へ。 / 監督:山岸聖太演劇的な、あまりに演劇的ななぜ映画にしようとしたんでしょう、あまりに演...
クリステン・スチュワートのダイアナが自由への物語を生み出す「クリステン・スチュワートがダイアナ元皇太子妃を演じ(映画.com)」の書き出しを見ただけでもう映画館のチケット予約サイトでポチッとしてしまいました(笑)。ダイアナに興味があるわけではありません。「クリステン・スチュワートがダイアナ?!」ってことです。スペンサー ...
余命何ヶ月ものだがアプローチは終末期医療という新鮮さいわゆる「余命何ヶ月」ものなんですが、ちょっとアプローチが違った映画でした。監督はエマニュエル・ベルコさん、俳優としては「モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由」など見ていますが、監督作品は初めてです。見る者の集中力を途切れさせないいい映画でした。愛する人に伝える言葉 / 監督:エ...
つくられすぎた物語を田中裕子さんが救うある日ちょっと出掛けてくると言ったまま消えてしまった夫を待つ二人の妻の物語です。監督は久保田直さんというドキュメンタリーをたくさん手がけている監督さんです。ただ、この映画は2014年の「家路」に続く2本めの劇映画で、脚本家青木研次さんのオリジナルストーリーということです。千夜、一夜 / 監督...
ひりひりする渇きも足りず、偽りの後ろめたさも描かれず俳優のエリック・バナさんがベストセラー小説のジェイン・ハーパー著『渇きと偽り』にほれ込み、主演とともにプロデューサーも買ってで出たというオーストラリア映画です。渇きと偽り / 監督:ロバート・コノリー原作を想像してみると…この映画を見て原作の『The Dry(渇...
バニーキングの正義と社会正義がぶつかる映画でロードムービーじゃないよ…ニュージーランド映画です。監督はゲイソン・サヴァットさん、映画界でのキャリアは30年近くありますが、これが初の長編とのことです。カメラクルーとしてスタートし、2000年代後半に入ってからテレビドラマやCMのディレクターとなり、映画では2009年に短編1本がクレジットされています。そして...
サハラ砂漠のカフェから見る移動しないロードムービーサハラ砂漠のど真ん中でカフェを営むマリカおばさんの日々を撮ったドキュメンタリーです。監督はアルジェリア生まれの現在36歳くらいのハッセン・フェルハーニさんです。この「サハラのカフェのマリカ」で2019年のロカルノ映画祭の最優秀新人監督賞を受賞しています。サハラのカフェのマリカ /...
原作漫画を絵コンテにそのまま撮ったようだ平庫ワカ著『マイ・ブロークン・マリコ』という漫画が原作です。タナダユキ監督、向井康介脚本ということで見てみました。マイ・ブロークン・マリコ / 監督:タナダユキ原作を絵コンテにした映画原作の試し読みがあり、シイノトモヨ(シイちゃん)がマリコの遺骨を盗んで窓から飛び出すところまで...
即興性とドラマ性のバランスの良さギヨーム・ブラック監督の最新作、といっても2020年の映画「みんなのヴァカンス」です。あわせて特集上映ということで過去のほとんどの作品が上映されています。「遭難者 女っ気なし」「やさしい人」「7月の物語 勇者たちの休息」「7月の物語」とこの映画の間にもう一本「宝島」というドキュメンタリーがあるのですが、劇場...