構成、編集(モンタージュ)、撮影、音楽が一体となった新しい感覚の映画 プレスリリースのストーリーには「家出をした女性の物語、のようだ」の一行しか書かれておらず、また、マチュー・アマルリック監督自身が「彼女に実際には何が起きたのか、この映画見る前の方々には明らかにはなさらないでください」と語っていると宣伝されている映画です。彼女のい...
コロンビア映画、父親の思い出とファミリーストーリー コロンビアのエクトル・アバド・ゴメスさんという「医師、大学教授、ジャーナリスト、人権活動家。コロンビア国立公衆衛生学校の創設者(ウィキペディア)」を描いた映画です。というよりも、そのファミリーの映画といったほうが正確かもしれません。妻と5人の娘たち、そして父親と同じ名前を持った一人息子エクトル・アバド・フ...
オイディプス変形のミステリー・エンターテインメント ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の2010年の映画「灼熱の魂」のデジタル・リマスター版です。ヴィルヌーヴ監督の映画は「プリズナーズ」「ブレードランナー2049」「DUNE/デューン 砂の惑星」と見ていますが、残念ながらこの「灼熱の魂」は見ておらず、これがいわゆる出世作となりハリウッド進出を果たしたことも知りません...
「血」で始まり「血」で終わることの意味 自由に生きるということは本当に難しい、特に女性にとっては社会的タブーが多すぎます。この映画のブリジットのように生きられればと誰もが思うことでしょう。でも、ブリジットの悩みは尽きない、という映画です。セイント・フランシス / 監督:アレックス・トンプソン脚本:ケリー・オサリヴァ...
日本映画界の失われた30年 松本優作監督、この「ぜんぶ、ボクのせい」が商業デビュー作とのこと、ちょうど30歳くらいの方です。「秋葉原無差別殺傷事件をモチーフにした『Noise ノイズ』(19年)が国内外の映画祭で話題を呼んだ」と紹介されています。んー、これではかなり厳しいと思いますが…。ぜんぶ、ボクのせい / 監督:松本優...
見どころはレア・セドゥのワンシーンのみか… 2017年のベルリン映画祭で金熊賞を受賞した「心と体と」のイルディコー・エニェディ監督最新作です。昨年2021年のカンヌ映画祭のコンペティションに出品されています。受賞はありませんでした。主演はレア・セドゥさん、新境地(私が見ている映画では…)の役柄でこれまでとは違った魅力が爆発していました。[t...
ネグレクトの決断、地上に満天の星を見ようとする話ではないのに… ニューヨークの地下には下水道や地下鉄のトンネル内で暮らす人々がいた(いる?)そうです。その母娘の話です。監督はこれが長編デビューとなるセリーヌ・ヘルドさんとローガン・ジョージさんのふたり、連名です。きっと地上には満天の星 / 監督:セリーヌ・ヘルド&ローガン・ジョージ...
ウォン・カーウァイ プロデュースの青春センチメンタル系なのだが… 「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」のバズ・プーンピリヤ監督の2021年の映画、あのウォン・カーウァイさんが自らプロデューサーを買って出たんだそうです。ウォン・カーウァイさんはもう10年近く映画を撮っていませんので、その名を出せば宣伝効果も高いですし、内容が青春ものとくればなおさらです。...
ヘレン・シャルフベックを演じるラウラ・ビルンの魂のまなざし フィンランドの国民的画家ヘレン・シャルフベックの50歳代の8年間ほどが描かれた映画です。「魂のまなざし」とはまた奇妙なタイトルをつけたものだと思いましたら、2015年に「ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし」として全国4箇所で展覧会が開かれていました。映画としてはそのタイトルは決して間違...
ジャン=マルク・ヴァレ監督追悼、2005年からの1970年代青春回顧 昨年2021年の12月25日に亡くなったジャン=マルク・ヴァレ監督の2005年の映画です。亡くなった時はケベック州の湖畔のコテージにひとりだったそうです。警察発表では「Mr. Vallée’s death was not caused by the intervention of...
万雷の拍手をどうみるか、感動?疑問?気持ち悪い? 2020年のカンヌ映画祭のオフィシャルセレクションとして上映された映画です。この年は新型コロナウイルス蔓延のために映画祭が中止となり、全56作品がオフィシャルセレクションとして「カンヌレーベル」のくくりで各地の映画祭で上映されています。この映画はコメディ部門の一作としてアングレーム映画祭で上映されています。...
ヌールはここを出ていくと宣言するが… フランスのヨアン・マンカ監督の長編デビュー作、昨年2021年のカンヌ映画祭のある視点部門で上映されています。マンカ監督は1989年生まれの32歳です。母へ捧げる僕たちのアリア / 監督:ヨアン・マンカマンカ監督、シュムラさんに訴えられる?ヨアン・マンカ監督のウィキペディアを見て...
ロシアの新米教師ふたりの1年だが、なぜ退職に解雇ですますのだ?! ロシアの新米教師ふたりがモスクワから地方都市へ赴任した1年間を撮ったドキュメンタリーです。2020年製作ですので、3、4年前に撮られているものと思われます。ヘィ!ティーチャーズ! / 監督:ユリア・ヴィシュネヴェッツ日本でいえば学級崩壊ロシアの義務教育は...
絶滅収容所を生き延びた実在のポーランド人ボクサーの3年間 アウシュヴィッツへ最初に大量輸送された囚人のひとりでありながら戦後まで生き延びたポーランド人ボクサー、タデウシュ・ピエトシコフスキさんの物語です。1991年に74歳で亡くなっています。アウシュヴィッツのチャンピオン / 監督:マチェイ・バルチェフスキタデウシュ・“テ...
プラハの春の時代の宗教物語、あるいは脱宗教か? 1967年製作のチェコスロバキア(現在はチェコ共和国)の映画です。監督はフランチシェク・ヴラーチルさんという方で1999年に75歳(くらい)で亡くなっています。日本初公開とのことですが、なぜ今この映画か、発掘してきた方に聞いてみたいですね。と思ったんですが、IMDbを見ましたら、2000年代に入ってか...
90分全編ワンカットでみるレストランオープントラブルもの 90分ワンカットが売りの映画です。何年かに一度全編ワンカットにとらわれた映画制作者が現れます。映画制作者にはひきつける何かがあるようです。ボイリング・ポイント/沸騰 / 監督:フィリップ・バランティーニ全編ワンカットの魅力とはあらためて言うまでもなく、全編フイル...
戦闘は終わっても戦争は終わらない この映画は、2015年にノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさんの代表作『戦争は女の顔をしていない』に着想を得て生まれたものとのことです。監督は、映画制作当時26、7歳(現在31、2歳)のカンテミール・バラーゴフ監督、戦闘は終わっても決して終わることのない戦争を描いています。2019年のカンヌ...
脚本家渡辺あやの青春は挫折の記憶か?そしてノスタルジー 「ワンダーウォール 劇場版」に出演していた須藤蓮さんの初監督作品です。脚本は渡辺あやさん、「ワンダーウォール」の脚本も渡辺さんですのでその縁のようです。逆光 / 監督:須藤蓮渡辺あや、須藤蓮渡辺あやさんも須藤蓮さんもどんな方かはっきりとは認識できていませんので...
近代的自我の葛藤のテーマがぼんやり、それは現代的? 島崎藤村著『破戒』の映画化です。1948年の木下恵介監督作品、1962年の市川崑監督作品に続く3度めです。監督は前田和男さん、初めて見る監督です。破戒 / 監督:前田和男水平社創立100周年記念なぜ今映画化?と思いましたら、水平社創立100周年記念ということで部落...
小説の映画化は感想を映像にすることではない 『むらさきのスカートの女』で2019年上期に芥川賞を受賞した今村夏子さんのデビュー作『こちらあみ子』の映画化です。原作は2010年の作品ですが、デビュー作にして太宰治賞、三島由紀夫賞を受賞しています。2020年に芦田愛菜主演で映画化された「星の子」も今村夏子さんの原作です。監督の森井勇佑さんは現在37歳、...